10 / 17
一章:責任取ってね?
神沼が大変です 08
しおりを挟む義一郎も後に続いて隣合った椅子に座り、シャワーかろお湯を出した。
「あれ、神沼。髪の毛濡れると印象変わるね。癖が、落ち着くのかな?」
髪の毛を濡らした明紫亜の普段のマッシュルームヘアーが、ペタン、とストレートになり毛先が肩先まで伸びている。
パっと見ただけでは、まるで少女のようにも見えるシルエットだ。
「え、ああ。乾くと、くるんってするんだよ。美容院いらずで重宝してるんだー」
自慢する明紫亜は自分の奇抜にも思える髪を気に入っているのだろう。
誇らし気に、むふむふ、と独特な笑い声を漏らしているのが可愛くて義一郎も自然と微笑んでしまう。
「その髪、気に入ってるんだね。神沼、前向きで羨ましいよ」
あはは、と笑うと、明紫亜が両目を瞬かせ、へあう、と変な声を出す。
彼から齎される独特な擬音は聞いていて面白い。
胸の奥がほくほくと温まるのを感じていた。
だが、そんな柔い雰囲気を壊すように声が降り掛かる。
明紫亜の後ろに立っている男は、先程明紫亜を見ていた生徒だった。
「お前、神沼だろ? クラス一緒になったことないから解らないかもしれないけどさ、俺、同じ小学校通ってたんだぜ。神沼、有名だったから、すぐピンときたわ」
腰を捻り声の主を見上げている明紫亜の口唇からか細く「同じ小学校」と漏れ、今にも泣き出してしまいそうな顔を晒している。
「お前、今もまだ治ってねぇの? ゲーム休んでたよな。そうやって、ずっと特別だったもんなあ、小学校の時も」
何やら訳ありだと解る台詞が続き、明紫亜は俯いてしまう。
何も言い返さない彼の肩は震えていた。
事情を知らない義一郎は、ただ息を呑んで見ていることしか出来ない。
悔しかった。
何も出来ない己の無力さに拳を握る。
「触られると、吐くんだろ? 本当か?」
明紫亜を追い詰める言葉は止まることがない。
義一郎はどうしたらいいのか解らなくなり、両手を上下に振っていた。
この場を収める方法を考えようとしては、男の台詞が頭を埋め尽くしている。
明紫亜がバスで来なかった本当の理由は、それなのかと合点がいった。
「本当、だよ」
一言だけ発した明紫亜の口からは重々しい吐息が漏れ、握られた拳は震えている。
義一郎は見ていられなくなり目線をタイル地の床に落とした。
「へえ、信じらんねぇな」
「っ、や、っ、だ!」
明紫亜に向かい男子生徒の腕が伸びていく。
ひっ、と明紫亜の口から漏れた息は恐怖を示していた。
がたっ、と椅子が音を鳴らして後退し、明紫亜の体は逃げて行くが、追い掛けるように腕は伸ばされる。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる