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一章:責任取ってね?
神沼が大変です 10
しおりを挟むしどろもどろになりつつも説明をすると笹垣の表情が厳しいものへと変わっていくのが解った。
無機質だと思っていた笹垣も、生徒のことには感情を動かされるのだな、と彼への恐怖が少しだけ薄れていくのを感じる。
「大浴場だな? 急ぎましょう」
「ええ、そうですね。水保君は部屋で待ってていいよ?」
険しい顔で今にも駆け出しそうな笹垣に頷き、倫成は義一郎に微笑みを向けた。
ふるふる、と首を左右させ、義一郎は拳を握る。
「ぼ、僕も、っ、行きます。神沼、きっと辛い想いしてるから。何も出来なくても傍にいたいんです」
必死で訴えると倫成は頷いてくれる。
義一郎は笹垣と倫成の背中を追うようにして大浴場まで向かった。
* * * * * *
脱衣所から浴室に繋がる扉を開けて中に突入した笹垣に引戸を閉められ、中の様子は解らなかった。
倫成も続けて入ろうとはせず、扉の前で立ち止まると思案気に小首を傾げ義一郎を窺ってくる。
その何てことのない仕草に洗練された美しさを感じ、こんな状況でも彼から目を離せなくなってしまう。
「水保君。神沼君、結構激しく嘔吐してた感じかな?」
唐突に尋ねられ、ふんえっ、と変な声が出てしまった。
見惚れていた気恥ずかしさもあり義一郎の顔は俯いていく。
「あ、の。はい、何度も嘔吐してました」
何とか答えると倫成はゴソゴソとポケットを探り出す。
そして徐に「手出して」と言われ、反射的に掌を差し出すと、ことん、と100円玉と50円玉が一枚づつ転がってきた。
「自販機あったよね? 水かスポドリみたいなのがあれば買ってきて欲しいんだけど。頼めるかな?」
言われて水分補給の為だと思い至り、何度も首肯し二枚の硬貨を握り締める。
「行ってきますっ!」
「うん、お願いね」
深々と頭(こうべ)を垂れ、柔く微笑む倫成に見送られ勢い良く脱衣所を後にした。
自販機から戻ると、バスタオルを羽織った明紫亜が脱衣所にいて、義一郎はバタバタと小走りで三人に近付いていく。
「瀬名先生、買ってきました!」
倫成にペットボトルを渡し、荒い息の中で明紫亜を見詰めた。
感極まり目頭が熱い。
「良かった、神沼! 無事だったんだね!」
「委員長が、先生呼んでくれたんだね。ありがと」
明紫亜のすぐ傍まで移動し肩を掴もうとして、駄目だ、と寸でのところで動きを止める。
「触ると、ダメ、なんだよな?」
宙に浮いた手を下に降ろし明紫亜を見遣れば、彼は切なそうに微笑んでいた。
くたり、と傾く首に合わせて、まだ濡れている髪が、さらり、と流れる。
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