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一章:責任取ってね?
神沼が大変です 12
しおりを挟むえへへ、と頭を掻いている明紫亜の照れ笑いに、心臓がギュンと掴まれた。
これが萌えなのか、と戸惑う義一郎を他所に、明紫亜によって真っ赤なトマトがやって来る。
義一郎のテリトリーに齎されたトマト二個は、瑞々しいレタスの上に転がり、食べられるのを待っていた。
「誰にでも苦手なものはあるもんだよね。僕は茄子が食べられなくて、よくお祖父様に叱られるんだ。でもどうしても、あのグニッて感触とか色とか無理なんだよな」
銀色に光る三又の槍で一思いに突き刺したトマトを口に入れる。
噛み締めると、ぷしゅり、と汁が溢れ、口内が甘さと酸味が程良く混ざった味覚に侵されていく。
「あー、わかる! 茄子も苦手。夏野菜が苦手なんだよなあ」
うんうん、と頷く明紫亜は昨日のことなど無かったかのように明るい。
聞きたいことは沢山あった。
明紫亜のことが知りたい。
それでも、明紫亜が元気ならばそれでいい。
わざわざ蒸し返してまで知ることではないのだ。
彼が自分から知って欲しいと、そう思った時に友人として話を聞けたなら、それが一番いいことだと思う。
「神沼。ほっぺにパン屑付いてるよ」
ふんへ、と声を上げ、ぺたぺた、と両手で頬を探る仕草が小動物のようで義一郎は身悶えしたい衝動と闘う。
取ってあげたいが、触れることは出来ない。
「こっち。ここだよ」
自分の口元を示して教えてあげれば、パン屑は指先で綺麗に取り除かれ、明紫亜の口にと消えていく。
ぺろり、と舌先に攫われていったパン屑に目を奪われていた。
何てことのない動作が、ヤケに色っぽく見えてしまい義一郎の胸中は戸惑いで一杯だ。
「ありがと、委員長!」
にかり、と元気な笑顔を浮かべる明紫亜からは既に艶やかさは消えている。
コロコロと色の変わる彼の表情に心を奪われてしまう。
俯いて小さく「うん」と答えることしか出来なかった。
朝食を終え、生徒達はロビーに集まり学年主任の話を聞いていた。
教師の話が終われば解散となり、バスで学校まで戻ることになっている。
明紫亜はバスではなく、行き同様に家の人に送って貰うのだと言う。
迎えに来た男性は玄関で待っていた。
腕を組んで立っている様は仁王像のようでもある。
屈強な体付きで、容姿も体格も何もかもが明紫亜とは似ていない。
どういう関係なのか気になる義一郎ではあったが、明紫亜に問うことも出来ず解散となった。
玄関で明紫亜が男性に荷物を持って貰っている場面を遠目で窺う。
男と明紫亜が普通に触れ合っているのを確認し、彼が明紫亜にとって大事な存在であるのだと察する義一郎だった。
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