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一章:編集長は快楽に流されました
快楽に勝てる人間など、いないに等しい 02
しおりを挟む「でも、連れ戻されればまたやらされるのでしょうね。乃々子さんの代わりでしかない癖に、抱いてくれ、抱かせてくれ、そんな変態ばかりだ。ああ、勿論抱いてくれと言う女性もいますけど。母を忘れられない男達が多い。全く反吐が出る話でしょ? 編集長も寝たんですか、乃々子さんと」
寧の肩がピクリと跳ねて隠れていた顔が上がった。
その顔は真っ青で唇は震えている。
瞬いた瞳から、またひと粒涙が溢れていった。
伏せられた瞼が震え、睫毛も一緒になって振動している。
怖い顔が、ぐしゃり、と歪み、嗚咽が聞こえてきた。
背中に回されている寧の手が、震えながら楼の服を掴む。
「の、の、こ……さん、は。枕接待を、させられていたのか? それであの日、兄さんのところに来たのか? 逃げて、来たのか?」
胸が押し潰されそうに痛んで、寧は縋るように腕に力を込め楼を抱き締めていた。
震える声で自問自答する強面は、首を左右に揺すり本格的に泣き出してしまう。
顔を楼の肩に埋め体躯を震わせている男を、楼はどうすることも出来なかった。
されるが儘に抱き締めてくる腕に囲われて、首筋に当たる熱い息と、肩を濡らす水滴を、ただ享受している。
頭の中では寧の言葉がリフレインしていた。
「乃々子さんは。死ぬ前に、編集長のお兄さんに会っていたのですか?」
静かに問い掛けると、可哀想に思える程に体躯を震わせて寧は頭(かぶり)を振る。
「……さか、つ。許してくれ。ごめん、ごめんな」
何度も何度も謝罪の言葉を吐き出し泣きじゃくる男に、楼は気持ちが萎えていくのを自覚した。
欲しいのは謝罪ではないのだ。
「編集長。説明してくれないと何も解りませんよ」
「言えないんだ。すまない。何も教えてやれない」
涙を拭おうともせずに泣くだけの寧の肩を掴み引き剥がし、彼の顔を覗き込むも、視線を外される。
苦しそうに言葉を吐き出した寧の首が左右に揺れた。
噛み締められた寧の唇が痛々しく見えて楼は眉を顰める。
「編集長。知っていることだけでいいんです。教えて下さい。知る権利が、僕にはあるでしょう?」
あくまでも優しい口調で宥めても、寧の首が縦に動くことはない。
「確かに、お前に教えるべきことだと思う。それでも、口外しない約束を俺の一存で破ることは出来ない。どうしても知りたいなら、親父さんに聞いてくれ。俺にどうこうする力なんてないんだ」
諦観の色を浮かべる寧の眼が恐る恐る楼を捉える。
寧は震えていた。
「誰と何の約束をしてるって言うんです? 親族の僕より優先される人間との約束なんですか?」
びくり、と寧の肩が跳ねる。
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