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一章:教育されてます!
再会は最悪の始まり 03
しおりを挟む羽李の隣まで気配もなく移動して、目の前に茶碗を置きながら、神流は呆れたとばかりの顔で羽李を見遣る。
「なっ、何でお前、そんなこと知ってんの!? 大体なんだよ、言葉遣いって! オレのが先輩だろ」
驚きに目を見張る羽李を、感情の読めない無表情で眺める神流に、羽李は感情的に怒鳴った。
「僕が、頼みました。夏木 羽李を担当にして下さいって。先輩後輩の仲だと言ったら、あっさりOKしてくれましたよ。僕は、貴方を先輩だと思ったことは、ありません。取り敢えず、立場ぐらいは弁えて下さい。いくら馬鹿でも、そのぐらい出来るでしょう? それとも、其処から教育が必要ですか?」
茶碗を置き終わった神流の手が、羽李の頬に触れる。
目を細めて愉しそうに微笑を湛える神流に、羽李は恐怖を感じて身を後ろにずらそうとするも、その動きは神流の片手に塞がれてしまう。
片手は頬を、もう片手は背中に回っていた。
「ふ、ふざけんなよ。教育って、何考え」
「ほら、その言葉遣いは汚い。お仕置き、好きですか?」
頬にあった手が、いつの間にか首に移っていた。
気付けば、背中に回されていた手も、首にあった。
おもむろに指が這わされる。
力は籠められていないが、恐怖で一杯になる。
「お、お仕置きって。お前、おかしいぞ」
不様にも声が震えた。
怖くて仕方がない。
くっくっく、と喉奥で鳴らすような笑い声が聞こえた。
神流は、嬉しくて愉しくて堪らないといった顔だ。
恍惚とはこういう表情のことを言うのかもしれない。
「躾は最初が肝心、ですから。羽李さん。ちゃんと神流先生って、呼んで下さい。ちゃんと出来たら、特別に優しいお仕置きにしてあげます」
「や、だから、お仕置きって何なんだよ! いい加減に」
しろ、と言いたかった。
だが、語尾は言葉にならなかった。
ギリギリ、と神流の手に力が籠められる。
空気が、酸素や窒素と言った生きるために必要な物質が、遮断された。
苦しい、なんて言葉では表せない。
絞められているところがギシギシと痛む。
酸素を求める喉が熱い。
必死で神流の手を剥がそうとするが、酸素不足で力が入らない。
もうダメだ、と意識を手放そうとした時だった。
急に空気が流れ込んでくる。
神流の手が離されたのだ。
いきなりのことに、げほっごほっ、と噎せ返ってしまう。
まだ苦しい。
死ぬかと思ったのだ。
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