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一章:教育されてます!
再会は最悪の始まり 04
しおりを挟む殺されるかと思った。
目尻に浮かんだ涙をそのままに神流を睨んだ。
「先輩は、痛いのが好きなんですか? 折角、優しくしてあげるって言ったのに」
自業自得ですよ、と笑い混じりに宣う神流に殺意を覚える。
殺され掛けた理由が、全くと言って良い程に理解出来ない。
未だに熱を持ち痛む喉を押さえる。
食事などしている場合ではない。
早く此処から立ち去らなくては、と理性が警鐘を鳴らす。
羽李は立ち上がろうとして、下半身に力が入らないことに気付く。
腰が抜けてしまったようだ。
何とも情けないが、お花畑を見た気がする。
腰が抜けても仕方がないだろう。
「腰、抜けちゃいました? 汚い言葉を使うからですよ。今度は、もっと愉しいお仕置きを用意しておきますね。ちゃんと、作家には敬意を籠めて下さい」
解りましたか、と普段は出さないだろう低音で問われる。
これ以上逆らう気力もなく、羽李はただ事務的に頷いた。
其れを見て、神流は満足そうに笑った。
綺麗な笑みだ。
別に容姿が特別良い訳でもない。
普通だと思う。
ただ、神流は雰囲気が綺麗なのだ。
彼の持つ凛とした空気が、そう感じさせるのだろう。
綺麗だからこそ、羽李には畏怖の対象となった。
表情一つ崩さずに、人を殺せそうな神流が、異様に恐ろしい。
体が震える。
自分で自分の体を抱き締めた。
下を向いてぎゅっと目を瞑る。
「イイコにしていて下されば、何もしませんよ。もう、怖いのも苦しいのも、嫌でしょう?」
ふと気が付けば、神流の手が、羽李の顔を包み込んでいた。
目を開ければ、優しい笑みを向けられる。
神流の言葉が脳を侵食していく。
考える前に、首が肯定を示していた。
神流の手は、頬から頭に移り、緩慢な動作で羽李の髪を流す。
ひどく穏やかだった。
頭の中では、煩いぐらいに、騙されるな、と警告音が響いていた。
其れでも、痛くされた後の優しさは、酷く胸に沁みるのだ。
もうあの苦しみを味わいたくないという気持ちが、警鐘を上回り、羽李はされるがままになる。
動けないという理由もあるが、優しくされることが心地好く、快感だったのだ。
普段ならば抵抗してしまうことも、首を絞められるという異常の後では、全てが気持ち良く認識されるのだろう。
この時の羽李は、いつもよりも素直だった。
心に受けたショックを和らげるかの如く、快感を抵抗無しに受け入れていたのである。
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