性教育はコッソリと

Neu(ノイ)

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一章:教育されてます!

理由と想いと許容 03

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先程、覚え込まされた快感を思い出して、羽李の体は小さく震えた。

「あ、やあ、かんな」
「ほら、もう尖って硬くしてますね。羽李さん、頭はともかく、体は覚えが良いですね」

指先で潰せば、柔らかかった其処は、指を押し上げるようにして、ぷくんと硬くなった。
其れだけで目尻を潤ませる羽李は、自然と出てしまう喘ぎを止めようと口を両手で押さえる。

「……むっん、ふっ、んんぅっ! ひうっぅ」

出来れば神流に言い返したい羽李だが、それは不可能に近かった。
手を外せば、恥ずかしい声が出てしまう。

「我慢しなくて良いんですよ? 隠しても貴方がイヤらしいことは知っていますから」

くすりと笑う神流を睨み付け、羽李は唇を噛み締める。
悔しい思いが羽李を支配していた。


 男に触られて感じるなど、到底受け入れがたい現実だ。
それでも、神流に弄られると、電流が走るかのように、身体中を快感が駆け巡る。
好きだとか嫌いだとか、そういった感情の届かない場所で、体は勝手に反応するのだ。
そんなのは嫌だと、羽李は思う。
愛もなく体だけが繋がっていくのは、間違っている。
本来、愛などというものは、生殖行動を行い、子孫を残すために必要な錯覚なのだろう。
愛がなくとも子供は作れるのだし、生きてもいける。
それでも、動物は愛を求めるのだ。
母親からの愛を欲し、家族からの愛を求め、時には異性から愛して欲しいと熱望する。
場合によっては、肉体を激しく求めることもある。
満たして欲しくて堪らなくなる。
愛は、幾らあっても足らない。
もっともっと、と深く埋めて欲しくなるのだ。
這い上がれなくなる程に深いところまで溺れてしまいたい。
愛に包まれているのは、とても心地いい。


 抗いがたい快感は、それに近い。
愛されているような錯覚に陥る。
けれど、本当にそこに愛があるのか、そんなことは解らないのだ。
結局、真意など他人には知る由もない。


 神流とて、どこまで羽李を好きなのか、羽李には信じられる筈もなかった。
当然であろう。
嫌われていると思っていたのだ。
都合良く使われているだけなのだと、頭の片隅にいる自分が囁いた。


 嗚呼、変だ。
羽李はぼんやりとそんなことを考える。
自然と視界が歪んでいた。
胸が重くて、つっかえるものを出してしまいたいのに、何も出ていかない。
あんなに感じていた体も、刺激に反応しなくなった。
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