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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
極道は政治家秘書に扮する 02
しおりを挟むまさか自分がなるとも思っていなかった職業だ。
刀次郎はスマホを仕舞いながら溜息を吐き出す。
新幹線を降りた駅のホームは、東京とは違いこじんまりとしている。
刀次郎が静岡市に出張することになったのは、所属する組の跡取り息子で、現在は組長補佐の若頭候補である倉本 純(クラモト ジュン)の我儘故だった。
純の我儘は今に始まったことではない。
彼は『家族』に並々ならぬ執着を抱いている。
一緒に住まう家族や構成員は勿論のこと、離れて暮らす異母弟にも異常な家族愛を示しているのだ。
だが、倉本家当主の次男、笹垣 司破(ササガキ シバ)も、純に負けず劣らずの奇人と言えた。
何をされても顔色一つ変えずにのらりくらりと逃げてしまう。
ある意味では似た者同士な二人だ。
誰とも馴れ合おうとしない司破が、学校の生徒とSNSを交換したと聞き、純のストーカースイッチがオンになった。
しかも、相手は事情を抱えている様子で、懇意にしている探偵と言う名の情報屋、森(モリ)も手を焼いているとのことである。
森からの要請と純からの命令を受け、刀次郎の出番となった。
様々な資格を取得している刀次郎は、時折、こうして潜入捜査を命じられたりする。
今回の刀次郎の仕事は、神沼 明紫亜(カミヌマ メシア)の出生調査だった。
どういう経緯で産まれたのかを探る重要な役目である。
最初に森が調べてきた報告書によれば、さる界隈で噂されている出来事と、明紫亜の出生が絡んでいるかもしれない、とのことだった。
とある議員が婦女暴行及び監禁を行ったと裏社会でまことしやかに流されている噂の時期と、明紫亜の母、神沼 温子(カミヌマ アツコ)が子供を産んだ時期を照らし合わせると、合致するのだと言う。
噂されている議員の事務所に秘書として雇って貰えるよう事前に手は打ってあり、偽の証明書や経歴も用意してあった。
調べられても問題はない。
暫くホテル暮らしになるのが億劫ではあるものの、仕事がてらの休暇だと思えば楽しいものか、と気分を切り替える。
静岡はとてもゆったりとしており、他の県に比べると時間の流れを遅く感じる程だ。
バカンスに訪れるにはもってこいかもしれない。
刀次郎が政治家秘書として働き始めてから一週間以上が経ち、中々に裏を取れない状況が続いていた。
そもそも、潜入捜査とは根気が必要である。
そう簡単に欲しい情報は入らない。
この日の就業を終えた刀次郎は、息抜きに雪代の家に向かうことにした。
期待はしていないが、明紫亜の従弟、雪代 蒼真(ユキシロ ソウマ)を一目見てみたかった。
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