鬼畜極道と似非王子

Neu(ノイ)

文字の大きさ
21 / 25
一章:鬼畜極道は似非王子を騙す

極道は政治家秘書に扮する 03

しおりを挟む


蒼真が明紫亜の出生について知っていることはないだろうと推察されはするものの、蒼真の母で明紫亜の叔母の雪代 涼子(ユキシロ スズコ)は何かしらを知っているのではないか、と刀次郎は踏んでいる。
些細な手掛かりでも手に入れば、という思いも少しはあった。
だが、一番はただ蒼真の顔を拝んで見たかったのだ。
報告書で見た顔写真は、とても好みの綺麗な面立ちだった。
森情報では「王子様」と女子からもチヤホヤされているらしい。
正直な話、綺麗なだけでは刀次郎の心が動くことはない。
純も、純の母も、美形であり、常日頃から綺麗な顔には見慣れていた。
今までの人生で、刀次郎の胸がときめいたことなど一度もなかった。
性欲の発散道具としてしか人間を見たことがないのだ。
未だに恋を知らないが、性欲を抱くのは男に対してのみで、同性愛者なのだと自覚していた。
そんな刀次郎が蒼真に興味を持つのも仕方がないことだろう。
最初は、ただの興味本位だったのだ。


* * * * * *


 困ったことに家の前で鉢合わせた蒼真と、もっと話をしてみたくなってしまった。
明紫亜をダシに寝泊まりしているホテルの一室に連れ込んでしまった己の浅はかさに溜息を吐き出したくなる。
やる気のなさそうな表情が、明紫亜の名を出した途端に必死なものになったのが面白かった。
単なる従兄に対する反応ではない。
蒼真は明紫亜に恋心を寄せているのだろう。
そう思うと、刀次郎の胸に奪いたい衝動が込み上げてくる。
少年の青臭い恋慕を踏み躙り、自分に目を向けてみたかった。


 体内を巡る意地悪な欲求を呑み込み、蒼真を窓際のソファーに誘導し座らせる。
恐怖心と警戒心と懐疑心を丸出しにして、気の立った猫のような表情で部屋を進み、それでも言われるがままにソファーにと腰を降ろす少年は、危ないと察するだけの賢さを持っていながら、危険に自ずから身を投じる愚かさも持ち合わせ、何よりも美麗な顔が恐怖に歪むのが、堪らずに刀次郎の性癖に、とすん、と刺さる。
家族を思ってこそ危険だと解っている状況にも飛び込むところも可愛らしく思えた。
綺麗な顔は見慣れているが、倉本の家の美形二人は怯えることなどなく、寧ろまともな感情を表すことすらない。


 恐怖と緊張感からか、蒼真の唇は震えている。
止めようとして噛み締められた口唇が痛々しく、だからこそ刀次郎の胸を熱くさせた。

「吉良さん」

ソファーに座り腿の上で拳を握る少年が口を開く。
一瞬、誰のことかと固まるが、すぐに偽名だと思い出した。

「何でしょう、蒼真さん。お飲み物をお持ちしますね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...