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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
極道は政治家秘書に扮する 04
しおりを挟む普段の自分からは想像もつかない丁寧な口調に爽やかな笑みを浮かべ、机の下の冷蔵庫を開ける。
「や、お構い無く。ど、うして、ホテル、なんですか?」
室内を見渡す少年はドギマギしている。
チラチラとベッドを見ていることに気付けば、刀次郎の笑みは深くなる。
「生憎とまだ住居を決めていないのです。暫くはホテル住まいになりそうで。安心して下さい。蒼真さんの嫌がることは致しません」
例えば、女性とホテルの一室に入ったのならば、性的な展開も頭に浮かぶかもしれない。
しかしながら、相手が男の場合、ノンケであれば、大体は想像もしないものである。
それを彼は可能性として危惧しつつ、好奇心も垣間見える、何とも複雑な表情で刀次郎を見ていた。
ペットボトルのお茶を一本掴んで窓際までの数歩をゆっくりと進む。
蒼真の向かいに腰掛け、テーブルの上に伏せて置かれているグラス二つにと液体を注いでいく。
「嫌がることって。……僕は男だし、別にその。は、話をするだけ、ですよね?」
彼の前にグラスを差し出せば、面白いぐらいに肩が跳ねた。
恐怖とも警戒とも取れる固い顔でしどろもどろになる少年に微笑を向ける。
慌てて視線を下げグラスに手を伸ばす蒼真の手を掴み掌で包み込んでしまう。
潤んだ真っ黒な瞳に、ぞくり、と背筋が粟立った。
イジメて泣かせてしまいたい欲求と、優しく甘やかして自分に依存させてみたい欲求とが、同時に湧いては刀次郎を戸惑わせる。
「他に何かして欲しいことでもあるのですか?」
指先で蒼真の手の甲を撫でながら意味深に問えば、目を瞬かせた後で少年は唇を噛み締め俯いていく。
「なっ、何も、ない! 放せよ!」
抵抗をみせる蒼真から手を離し、彼の向かいにと移動する。
ソファーに腰を降ろし自分の分のグラスを掴み、ぐい、と呷った。
「それで明紫亜さんのことなんですが」
話を変えた刀次郎にあからさまに安堵の表情を滲ませる蒼真が可笑しくて笑わないようにするのに苦労する。
「そうだよ。政治家秘書がメシアに何の用?」
キッ、と睨みつけてくる少年は威嚇しているつもりなのだろう。
裏社会に生きる刀次郎からすれば、可愛らしく映るだけなのだが、彼はそれを解っていない。
「実は。ある方からの依頼で明紫亜さんの父親を探しています。内密にして欲しいのですが、この仕事も調査の一環でして」
にこやかな顔を心掛けると普段使わない表情筋が酷使されるのか、ヤケに顔中が気持ち悪い。
筋肉痛にでもなりそうな気分だった。
下手な嘘を吐くよりも味方に引き入れてしまう方が手っ取り早い気がした。
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