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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
極道は政治家秘書に扮する 05
しおりを挟む蒼真とて愛しい明紫亜の父親のことは知りたいと思っているだろうと推察し、敢えて潜入捜査を仄めかす。
「ああ、ちゃんと資格は持っていますので、非合法なことはしていませんよ」
無言で刀次郎を睨んだままの蒼真に補足し、彼にと手が伸びていく。
実際には、潜入するにあたり非合法なこともしてはいるのだが、キッパリと言い切ってしまう。
真っ黒な、さらり、とした綺麗な髪を撫でた。
指を通る髪質は気持ちが良い。
「ぼ、僕は。僕も、メシアの父親のことは知りたいけど。何も知らないんだ。吉良さんの役には立てない。……あんた、探偵なのか?」
びくり、と体躯を震わせ怯えた眼を向けてくる蒼真の首が横に振られる。
そっ、と伏せられる瞼に得も知れぬ高揚感を抱く。
手を振り解こうか悩んでいるのか、腕を持ち上げたり下げたりしている少年の手を握り締めた。
「……涼子さん。君の母親なら何か知っているのではないですか?」
最後の問いには答えず、探りを入れる。
ジッと見詰められ、刀次郎は微笑みを向けた。
蒼真の口唇が開閉し、握った手の中で指が不規則に動いている。
「母さんは知らないって言ってる。そ、の。吉良さんを雇っている政治家とメシアに、何か関係があるんですか?」
真剣な眼差しを向けてくる少年に柔く首を振り口角を持ち上げる。
答えられないと示して蒼真の手を解放した。
「蒼真さんは、杉木議員をご存知ですか?」
「吉良さんが働いている事務所の議員。あの、髪の毛がキノコみたいなおじいちゃん。そのぐらいしか知らない。政治家に興味ないし」
あっさりとした返答に刀次郎は「そうですか」と頷く。
蒼真の手がテーブルに置かれているグラスを掴み、中のお茶を飲み干していく。
ごくごく、と上下する喉仏に色気を感じてしまう。
「守秘義務ってやつ? あると思うし答えられないんだろうけど。メシアの父親を知りたがっているのって誰ですか?」
少年の中で刀次郎は「探偵」のポジションに落ち着いたようだった。
答えを返さないことに対して「守秘義務」があるためだと勝手に解釈してくれているようで、面倒がなくていいか、と勘違いさせたままで話を進めていく。
刀次郎よりもその上の人間を警戒し、明紫亜に危害がないか気にしているのか、蒼真の艷やかな唇が尖っている。
「そうですね。私の口からはお話できないことの方が多いので何とも。ところで、最近明紫亜さんから恋愛相談など受けたりはしませんでしたか?」
その唇を突付いてみたくなり、くすり、と無意識に笑っていた。
続けた質問に蒼真の瞳が泣き出しそうに揺れる。
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