冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

三日月深和

文字の大きさ
49 / 159
彼女の好きなこと

再びの視線

しおりを挟む
 
 
 ********
 
 
 ディアナとのお茶会から一日経って、リリーナは図書館にて本を探している。

 書棚の区分けを示すプレートには“法律”と書かれていた。リリーナはこの国において新しい店舗を出す際の資格や法律についての書籍を探している。

 それに付き従うミソラは内心で大きなため息をついた。本来リリーナ自身がこんなことを勉強しなくても専門家を雇えば済む話ではある、ということもそうだが、何よりリリーナがまた余計なプレッシャーを抱えることになった現状を嘆いている。

 確かに好きなことをやるのはいいことだろう。本人の息抜きになるのは確かだ。
 しかしディアナが期待をかけてしまったせいでリリーナの“結果を出そう”という精神にスイッチが入ってしまっている。これでは意味がない。

 しかしこのまま声をかけたところでリリーナは聞く耳を持たないだろう。なぜなら期待をかけてきた相手がディアナ…ディードリヒの母親と来ている。なんとしてもリリーナは結果を残し、期待に応えようとするだろう。

 目的の本を見つけたのかいくつか手に取ってミソラに渡し、座れる席を探すリリーナについていきながら、この現状をどう変えたものかとミソラは考えている。

 そこでふと視界に入って人物に目を移すと、どこかで見た顔がこちらを不思議そうに見ていた。

 その正体はファリカ。何か用があったのか彼女もまたなにやら本を持って立っているのだが、視線が明らかにこちらに向いている。

 ミソラがそちらに視線をやるとファリカは何事もなかったかのように去っていったが、あのようにあからさまな視線を向けるのはやや気がかりだ。

 しかしこのままリリーナを置いて追いかけるわけにもいかず、仕方ないので追いかけずにリリーナの傍につく。
 
 ***
 
「ごきげんよう、ルーベンシュタイン様」

 急にかけられた声に反応したリリーナが見ていた本から頭を上げると、そこにはファリカの姿があった。

「ごきげんよう、アンベル伯爵令嬢」

 急に何事かと思いつつ挨拶を返すとまたファリカはじっとこちらを見ている。

「何をお調べになっているのですか?」

 そう訊かれて簡単に事情を説明すると、ファリカは「ここに腰掛けても?」と問い、それに肯定すると机を挟んだ向かい側の椅子に腰掛けた。

「私でよければなにか役に立てるかもしれません」
「そうなんですの?」
「うちは元々商人上がりの家系なので、未だにこういう法律や何かは習わされますから」

 ファリカはリリーナが開いていた本を預かると、少し間を置いてリリーナに向け直してから二人の間に置く。それから持っていた紙とペンを持ち出すと本に書いてあることを解説し始めた。

 そのままリリーナもファリカの話を聴き始め、自分の紙とペンも動かし始める。
 一通り話が終わる頃には夕方になっていた。

「ありがとうございました。とてもわかりやすかったですわ、教えるのがお上手ですのね」

 礼を述べるリリーナに、ファリカはややばつの悪そうな苦笑いで応える。

「私、貴女のことを勘違いしていたようです」
「?」
「ずっと外国から来る貴女のことが気になって見ていたのだけど、ここ数日でとても真面目で勤勉な人だって気付きました」
「いえ、そんなことは…」

 謙遜するリリーナだが、ミソラは内心で同意した。少し彼女の内面に触れればわかることだが、リリーナは真面目“すぎる”ほどである。

「城の中では色々と噂も飛び交っていたので、踊らされていたみたい。お詫びをさせていただけませんか?」
「お詫びだなんてそんな、お気になさらないで」
「今度お茶会をするのは如何かしら? もしルーベンシュタイン様がよろしければ二人きりで」
「構いませんが…」
「ではそうしましょう。お詫びになるかわかりませんが、とびきりの茶葉をご用意します」

 そう言って一つ頭を下げるとファリカは去っていった。同時に彼女は「予定はまた追って連絡します」と言っていたのでそれを待つしかないだろう。

 一先ず持ってきていた本を書棚に返して、後で復習をしようと紙を丸めてから図書館を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...