冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

三日月深和

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彼女の好きなこと

新しい友人(1)

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 後日、リリーナはアンムートと契約を結べたことをファリカに報告した。その後ディアナに本格的に香水店の出店へ向けて動き出すことを伝え、ディアナの言っていた商売の権利やその他書類を揃え判をもらい、ことは本格的に動き出す。

 権利他書類は揃ったので次はテナント探し。販売店と工房を両立できるだけのスペースが必要なのだが。

「はぁ~、疲れた~!」
「ファリカさん、淑女が外出時にでありながらそのように気を抜くものではありませんわ」

 脚を伸ばして椅子の背もたれに体重を預けていたファリカは、リリーナに嗜まれ渋々姿勢を正す。

「いいじゃない、ここは個室なんだもの。誰も見てないわよ」
「誰が見ているか、ではありません。己は見ているのです」

 二人、いや護衛であるミソラを含めた三人は個室の設けられた喫茶店にてテナント探しから離脱している。リリーナに気を使われ用意された個室に本人たち以外誰もいないのは、単純にリリーナが人払いをしたからだ。

「私からすればリリーナ様とミソラさんがいつも姿勢正しい方が驚きだよ」
「体力の配分と基礎量が違うのです」
「私は格闘術を嗜んでおりますので」

 姿勢の正しさはどちらかというと筋力の問題に類するように思うが、ミソラがそれを指摘することはない。あながち間違ってるとも言い切れないが、それでも今はまだ…。

 後でわざといじるためである。

「私、二人について行くのは思ったよりハードル高かったりする?」
「どうでしょう。ファリカさんにも素質はありますわ」
「そうかなぁ。一日中気を張って過ごしたことなんてないよ」
「何も一日中ではありません。気を抜いていい場所を選べばいい、というだけですから」

 リリーナの言葉にファリカはやや理解が追いついていないような表情で返した。

「たとえばよくある話ですと、侍女は主人の部屋を自室のように使っていい、と言いますし」
「確かに、よく聴くわ」
「ミソラがたまたまそういった侍女でなかったというだけで、私が制限することはありません。公私の使い分けが重要ですわ」
「なるほどね…じゃあ頑張ろうかな」
「その意気です。期待していますわ」

 リリーナはにこりと微笑む。
 気合の入っているファリカに期待する気持ちが出たようだ。

「そういえばさ」

 ふと、ファリカは切り出す。

「テナント、結構即決な感じだったけどあそこで良かったの?」

 そう、リリーナのテナント探しは本人も思いがけず三件程度の内覧で決まってしまったのである。

 いくらファリカが父親の抱える商会の伝手を使って場所を絞ったと言っても、存外あっさりと決まってしまった、と言っていい。
 テナントそのものは丸ごと買取となり、リリーナはディアナに言われた通り城宛で小切手を切った。

「直感が重要と言いたいところですが…実際そういう側面もありますが、狙った通りの良物件が見つかってしまった、と言う方がいいでしょう」
「運がいい、ってこと?」
「そうです。店舗そのものを大きくするつもりもありませんでしたので…それこそ“丁度いい”かと」

 リリーナの選んだテナントはそこまで大きくはない。ある洋裁店の入っている建物の二階部分で、随分と空き物件になっていたような場所である。
 販売スペースと工房を両立させてしまうと、販売スペースには大人が十人ほどしか入らないだろう。

「良かったの? あんなに小さくて…王室に関わる人間がやるって触れ込みでやるとなると規模が見合ってないような…」
「何事も最初から大きければいいというものでもありません。香水はあくまでファッションを飾るアクセサリーのようなものですから」

 ファリカはその言葉に感心を得たのか「へぇ~」と明るい声を出した。

「すごい。やりたいことと堅実なやり方の計算がきちんとできてるのね。身の丈がわかってるっていうか…。貴族ってなんでも派手にしたがるから失敗しやすいんだけど」
「堅実さは確実なメリットを産みますわ。それに『あの』立地は十分派手です」

 そう言ってリリーナは一口紅茶を飲み下す。
 彼女が買い取ったテナントがあるのは、マチルダの所属する洋裁店の建物の二階部分なのだ。

 王室御用達、とまで言われる洋裁店のすぐ上にある香水店、というのはそれだけで目を引く上、洋服を仕立てた客が同時にアクセサリーを見に行く感覚で来店する可能性が期待ができる。

 さらに言えば、“二階を買い取りたい”と話をした時に快諾してくれた店のオーナーも含めやはり運がいい。

「リリーナ様とあのマチルダが知り合いだなんて知らなかったよ。あのお店はいつも予約でいっぱいで、私も憧れなのに」
「えぇ…それは…少しご縁がありまして…」

 何も知らないファリカに対してリリーナは苦笑いで返すことしかできなかった。
 確かにマチルダはあの洋裁店でも随一の腕を持つ職人ではあるのだが、まさか関わったきっかけが恋人に監禁生活を強いられていた流れで、とは言いづらい。

「でもこれで約束は一つ、果たせたよね」
「えぇ、ありがとうございました」

 ファリカがリリーナの侍女になることと引き換えに提示してきた条件は二つだ。

 一つは、リリーナが出す香水店のテナントの場所を優遇すること。
 もう一つは、ヒルドとリリーナの縁を繋ぐことである。

「あとはヒルド様とのお茶会か…いつ頃がいいとかある?」
「ヒルド様にもご準備があるでしょうから…来週の中頃はどうでしょう?」

 今から来週の中頃、となるとちょうど一週間後といったところ。

「わかった。じゃあその辺りにお誘いができるように帰ったらすぐ手紙を出すね」
「ありがとうございます」
「何かあればすぐ連絡するから」
「はい。待っていますわ」

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