冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

三日月深和

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帰省と誕生日

サプライズパーティ(2)

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 ***
 
 時はリリーナが実家であるルーベンシュタイン邸に帰る前まで遡る。

「とりあえず話してみて」

 自室にファリカとミソラを迎えたディードリヒは言う。彼の言葉に対して最初に口を開いたのはファリカだった。

「実は、身内でもリリーナ様の誕生日パーティをやりたいと思ってまして」
「また急だね」
「ミソラさんと話している時に、リリーナ様の誕生日を去年は祝えなかったって聞いて。城で大きいものはやるかもしれないですけど、二年分身内でお祝いできなかなぁって」
「ふむ…」

 話の内容には納得しつつ、ディードリヒは少し考える仕草をとる。それを見たミソラもまた口を開いた。

「昨年はリリーナ様の脱走が重なり結果的に何もできなかった…と使用人たちも嘆いておりましたので、あの屋敷にてと思い立ちお借りできればと」
「まぁ、それはいいんだけど…」
「「?」」

 話に同意した言葉を使う割に、態度は渋っている。その反応に侍女二人が疑問符を頭に浮かべていると、彼は淡々と結論を述べた。

「正直に言うと、そんな時間はないと思うよ」
「どうしてですか?」
「急にリリーナの実家に行くことになったでしょ? パンドラまではどうしても時間がかかるし…リリーナの誕生日パーティは多分僕のと合同になるだろうから、どちらにせよなにかしてる余裕もないと思う。その後二週間もしたら生誕祭もあるわけだから…」
「あー…」

 納得と後悔が同時に押し寄せてくるファリカ。リリーナの誕生日を二年分祝ってあげたい、という感情ありきで動き始めてしまったので、細かい予定までは考えていなかった。

「でもミソラまでこの話に乗ってくるとはちょっと意外な感じするけど。年間行事なんだから頭に入ってるだろうに」
「はい。ですので私は『あの屋敷をお借りしたく』としか申し上げておりません」
「ミソラさん、どういうことですか?」

 今日も表情に変動の薄いミソラを見るファリカは、いまいち状況が掴めていない。そんな彼女を見ながらミソラは質問に答えた。

「リリーナ様とファリカさんには申し訳ありませんが、生誕祭当日に行うより他はないかと」
「そう言うと思ったよ」

 言いながら、ディードリヒは“そんな気がしていた”と一つため息をつく。
 当然思うところはたくさんあるが、生誕祭が終わってしまったら地方にある別荘に親戚一同集まるのが恒例行事だ。自分やリリーナもそれは避けられないと思うと、ここしかタイミングはない。

「まぁでも、いいよ。屋敷を使っても」
「本当ですか!?」
「本当はリリーナと二人で過ごしたいけど…二人もあの屋敷の使用人たちもリリーナによく気を配ってくれてることはわかってるから。今回は譲るよ」
「ありがとうございます…!」

 感謝の言葉を返すファリカはとても嬉しそうだ。そして無表情を装ったミソラも心なしか嬉しそうに見える。

「じゃあ屋敷には僕から連絡しとく。ミソラも屋敷とは連絡が取れるし、後は二人に任せるよ」
「殿下は準備に参加しないんですか?」
「僕には“リリーナをエスコートする”っていう大事な役目があるから」

 こういった行事に率先して口を出しそうな印象のディードリヒが自分たちに「任せる」と発言するのは珍しい、と感じたファリカはそのまま疑問を口に出す。
 するとディードリヒは、言葉と共ににこりと愛想笑いを返した。ただその笑顔には“エスコートだけは譲らない”という頑なな意思が含まれている。

「何を偉そうに。繁忙期で横目を向いている余裕がないだけでしょう」
「そんなことはない。時間は作れるけど二人にいいところを譲ろうって言ってるんじゃないか」
「昨日もへろへろになりながら写真を現像していた方に言われたくはありませんね」
「あの時間がないと僕は死ぬんだ。譲らないからな」
「そういう問題ではありません。リリーナ様にご心配をかけないでくださいと言っているんです。リリーナ様にとやかく言う前に貴方も大概働きすぎなのだとご自覚なさったら如何ですか?」

 いつも冷静なミソラではあるが、ディードリヒを相手にする時とリリーナを揶揄う時だけは明らかに感情が現れるな…と彼女を見ていたファリカは思った。
 ディードリヒと言い合いを始めた瞬間から彼女は腕を組み相手を明らかに睨みつけている。誰から見たところで、一国の王太子にこの態度をとれる目下の人間は早々いないだろう。

 当のミソラから見れば、ディードリヒが言っていることなど言い訳に過ぎない。夜な夜な盗撮写真を現像してはニヤついてるような人間であろうと、朝から晩まで働き詰めなのに変わりはないのだ。

「そうですよ殿下、リリーナ様ほど動き回ってるわけじゃないだけじゃないですか。執務室とリリーナ様の部屋を行き来してるのしか見てないって、最近もっぱらの噂でリリーナ様が心配してますよ」
「えっそれ本当? もっと頑張る」

 ミソラに助け舟を出そうとしたファリカの一言は、ディードリヒの過労を後押しすることになりかけている。まさかの発言に驚くファリカの横で、ミソラがさらに眉間の皺を深めた。

「馬鹿ですか貴方は。リリーナ様に無駄なご心労をかけないでください」
「リリーナが僕のことを考えてるのに?」
「そういう細かい感情を手繰り寄せてるの本当に気持ち悪いですよ殿下」
「お前ら僕を敬う気ないだろ」

 自分の言葉に対してあさっての方向に返事をしてきたディードリヒに驚きはするものの、この粘着した気持ち悪さにはファリカも慣れつつある。

 ただこの男の何が良くてリリーナは彼を選んだのかは想像もつかないし、自分から見て彼は顔がいいだけの男だ。

 そしてついでと言わんばかりにファリカもまた、本人に自覚のないところでディードリヒに対する発言に遠慮というものがなくなってきている。少なくとも何も知らなかった頃には戻れないだろう。

「まぁそれは置いといて」
「脇に置くなよ」
「それは置いといて、せっかくなのでリリーナ様をびっくりさせたいんですよ!」
「…」
「リリーナ様がお喜びになりそうですね」
「なら尚更、当日まで伏せておきません? それから料理はリリーナ様の好きなものを用意してもらって…」

 ファリカの中でサプライズパーティの構想は雲のように膨らんでいるようだ。あれやこれやと案を出し、ミソラがそれに意見を出して内容を決めていく。
 ディードリヒは話題ごと置いて行かれたまま、楽しいパーティの話し合いは始まっていた。
 
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