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第六章 首輪の在り処
三十話 綻ぶ笑み 4
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刹は、一度、天幕の中に視線をぐるりと巡らせて、頭の後ろを手で何度かかき、その金色の髪を揺らす。
「刹……」
「ほらよ」
ガシャンという耳をつんざく金属音と共に、一振りの曲剣が玉蓮の足元に転がった。鞘に収まっていても分かる、吸い込まれるような美しい佇まい。柄には、使い込まれた革が丁寧に巻かれている。
「なまくらな剣じゃ、自分の首も守れないだろ。これでも使え」
子睿が、待ってましたとばかりに口を挟む。
「おや、刹さん。お優しいですね」
「うるせえ、俺はまだ認めてないんだからな!」
刹は顔を赤くして怒鳴り返すが、すぐに玉蓮の方を向き直る。
「……こないだの戦で、お前の剣、刃こぼれしてんのが見えたんだよ。気になって仕方ないじゃん」
口元を歪めながらも、その視線は、どこか居心地悪そうに玉蓮とその足元の剣の間を行き来する。
「いいか、よわっちい戦い方しやっがたら承知しねえからな」
「がっはっは! 刹、いつからそんなに優しくなったんだよ!」
牙門の豪快な笑い声に、「うるせえな!」と刹がまた言い返している。玉蓮は足元の剣を拾い上げ、そのずしりとした鉄の感触を確かめた。
それは、戦場で生きるための無機質な道具のはずなのに、なぜか、手のひらに確かな熱が宿っていくようだった。その熱が、赫燕に向けていた意識を、今、目の前にいる仲間たちへと引き戻す。気づけば、彼女の唇から、ふふ、と朗らかな笑い声が漏れていた。
「ありがとうございます、大切にします!」
牙門が、ぶはっと吹き出した。
「なんだよ、姫さん、笑えんじゃねえか!」
張り詰めていた肩から力が抜ける。
ふと視線を動かすと、豪奢な椅子に座る赫燕の口元が、ほんのわずかに緩んでいるのが見えた。それは嘲笑か、それとも——。一瞬だけ垣間見えた、毒の抜けたようなその表情に、玉蓮は目を離せずにいた。
「——ご報告!」
静寂を切り裂いて、伝令が天幕に転がり込んできた。
「先ほど、城主の息子を捕縛しました! 現在、こちらへ連行中です!」
瞬間、天幕の空気が凍りついた。牙門の笑い声も、刹の照れ臭そうな顔も、すべてが遠のく。
赫燕が、ゆっくりと立ち上がった。その顔にはもう、毒のない笑みなど欠片もない。あるのは、獲物を前にした獣の愉悦だけ。
「……聞こえたか、玉蓮」
低く、地を這うような声。
「お前の策だ。お前の手で、最後まで見届けろ」
「……行ってまいります」
剣を持ち、手を合わせて頭を下げる。渡されたばかりの刹の剣が、ずしりと重く、冷たく感じられた。
「刹……」
「ほらよ」
ガシャンという耳をつんざく金属音と共に、一振りの曲剣が玉蓮の足元に転がった。鞘に収まっていても分かる、吸い込まれるような美しい佇まい。柄には、使い込まれた革が丁寧に巻かれている。
「なまくらな剣じゃ、自分の首も守れないだろ。これでも使え」
子睿が、待ってましたとばかりに口を挟む。
「おや、刹さん。お優しいですね」
「うるせえ、俺はまだ認めてないんだからな!」
刹は顔を赤くして怒鳴り返すが、すぐに玉蓮の方を向き直る。
「……こないだの戦で、お前の剣、刃こぼれしてんのが見えたんだよ。気になって仕方ないじゃん」
口元を歪めながらも、その視線は、どこか居心地悪そうに玉蓮とその足元の剣の間を行き来する。
「いいか、よわっちい戦い方しやっがたら承知しねえからな」
「がっはっは! 刹、いつからそんなに優しくなったんだよ!」
牙門の豪快な笑い声に、「うるせえな!」と刹がまた言い返している。玉蓮は足元の剣を拾い上げ、そのずしりとした鉄の感触を確かめた。
それは、戦場で生きるための無機質な道具のはずなのに、なぜか、手のひらに確かな熱が宿っていくようだった。その熱が、赫燕に向けていた意識を、今、目の前にいる仲間たちへと引き戻す。気づけば、彼女の唇から、ふふ、と朗らかな笑い声が漏れていた。
「ありがとうございます、大切にします!」
牙門が、ぶはっと吹き出した。
「なんだよ、姫さん、笑えんじゃねえか!」
張り詰めていた肩から力が抜ける。
ふと視線を動かすと、豪奢な椅子に座る赫燕の口元が、ほんのわずかに緩んでいるのが見えた。それは嘲笑か、それとも——。一瞬だけ垣間見えた、毒の抜けたようなその表情に、玉蓮は目を離せずにいた。
「——ご報告!」
静寂を切り裂いて、伝令が天幕に転がり込んできた。
「先ほど、城主の息子を捕縛しました! 現在、こちらへ連行中です!」
瞬間、天幕の空気が凍りついた。牙門の笑い声も、刹の照れ臭そうな顔も、すべてが遠のく。
赫燕が、ゆっくりと立ち上がった。その顔にはもう、毒のない笑みなど欠片もない。あるのは、獲物を前にした獣の愉悦だけ。
「……聞こえたか、玉蓮」
低く、地を這うような声。
「お前の策だ。お前の手で、最後まで見届けろ」
「……行ってまいります」
剣を持ち、手を合わせて頭を下げる。渡されたばかりの刹の剣が、ずしりと重く、冷たく感じられた。
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