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第六章 首輪の在り処
三十一話 華の策略 2
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◆
城門前に陣取った玉蓮は、策通りに城主の息子の首に剣を添えた。城壁の上には、動揺する城主と兵たちの姿が見える。
「開門を! 降伏せねば、貴殿の息子の首、即座に切り落とす!」
玉蓮の声が、戦場に響き渡る。城主が悲鳴のような声を上げた。
「待て! 息子には手を出すな!」
戦況はすでに決していた。各所で赫燕軍が圧倒的な勝利を収め、敵軍は次々と瓦解。残るはこの城のみ。城内に残された選択肢は、もはや二つに一つ。無謀な抵抗を続け、全滅の憂き目を見るか、それとも今この場で剣を捨て、命乞いをするかだ。
「赫燕軍! そなたらに降伏したとて、無事では済まぬ! 虐殺されるのが落ちよ!」
敵将の一人が、城壁の胸壁から身を乗り出して、絶叫した。その声には、敗北の恐怖と、赫燕軍の苛烈な戦いぶりに対する怯えが滲んでいる。彼らの間では、赫燕軍はただの軍隊ではなく、災厄の使者のように囁かれていたのだ。
玉蓮は、その叫びに対し、一歩前に進み出た。
「白楊国・公主、玉蓮の名にかけて、今すぐに降伏すれば、城内での虐殺は行わぬ! 兵士たちには武器を捨てさせ、正規の捕虜として扱うことを誓う!」
「信じられるものか!」
「降伏勧告は一度だけだ! これより先は交渉の余地はない!」
玉蓮はそう言い放つと、剣を握る手に僅かに力を込めた。城主の息子の喉元から、微かな血が滲み出る。
「グッ……ち、父上! 降伏などしてはなりませぬ! この城を……この地を、赫燕のような賊軍に明け渡すなど!」
恐怖と意地が混ざり合った、甲高い悲鳴のような叫び。玉蓮は眉一つ動かさず、叫び出した男の顔を、持っていた剣の柄で容赦なく殴りつけた。
ゴッ、と鈍い音が響き、男は呻き声を上げて地に倒れ込む。
「……じ、時間を! 時間をくれ!」
「否! 直ちに降伏だ!」
城壁の上、城主らしき人物が、配下の者と激しく言い争っている様子が垣間見えた。迷っている。ならば、あと一押し。
「では、右の指を」
「なっ——! ふ、ふざけるな! 殺せ! いっそのこと! 指を落として、父上に降伏を迫るなど……人の道に外れている!」
「貴殿に選ぶ権利はない。生かすも殺すも、切り刻むも、全てはこちらが決める。口輪をはめろ。叫び声がうるさくなる」
玉蓮はキッパリと告げる。彼女の周りに控えていた屈強な配下の兵が、即座に動いた。抵抗する男の口に、厚手の布が乱暴にねじ込まれていく。
「んぐっ! んーッ!」
男が目を見開き、もがく。城壁から悲鳴が上がる。後方に控えていた味方の兵たちからも、どよめきが起こった。
「お、おい……玉蓮は本気か?」
「……朱飛さん、玉蓮のやつ……わかってないんじゃ」
「そうですよ。慈悲のつもりで生かそうとしてんじゃ。だけど、少しずつ切り落とす方がよっぽど……」
「馬鹿を言え。慈悲などあると思うか……玉蓮は、わかってやっている」
背後のざわめきを無視し、玉蓮は氷のような声で命じた。
「——落とせ」
玉蓮の合図とともに、横にいた兵士が剣を振り下ろす。口輪を噛ませられた男が「んぐぅぅぅーーッ!!」と絶叫する。恐怖で。
——ドスッ!
肉を断つ鈍い音。玉蓮は、地面に転がった血まみれの指を拾い上げる。そこに光っているのは、あの翡翠の指輪。玉蓮は、その指を布とともに矢にくくりつけ、弓兵に渡した。
「射て」
城門前に陣取った玉蓮は、策通りに城主の息子の首に剣を添えた。城壁の上には、動揺する城主と兵たちの姿が見える。
「開門を! 降伏せねば、貴殿の息子の首、即座に切り落とす!」
玉蓮の声が、戦場に響き渡る。城主が悲鳴のような声を上げた。
「待て! 息子には手を出すな!」
戦況はすでに決していた。各所で赫燕軍が圧倒的な勝利を収め、敵軍は次々と瓦解。残るはこの城のみ。城内に残された選択肢は、もはや二つに一つ。無謀な抵抗を続け、全滅の憂き目を見るか、それとも今この場で剣を捨て、命乞いをするかだ。
「赫燕軍! そなたらに降伏したとて、無事では済まぬ! 虐殺されるのが落ちよ!」
敵将の一人が、城壁の胸壁から身を乗り出して、絶叫した。その声には、敗北の恐怖と、赫燕軍の苛烈な戦いぶりに対する怯えが滲んでいる。彼らの間では、赫燕軍はただの軍隊ではなく、災厄の使者のように囁かれていたのだ。
玉蓮は、その叫びに対し、一歩前に進み出た。
「白楊国・公主、玉蓮の名にかけて、今すぐに降伏すれば、城内での虐殺は行わぬ! 兵士たちには武器を捨てさせ、正規の捕虜として扱うことを誓う!」
「信じられるものか!」
「降伏勧告は一度だけだ! これより先は交渉の余地はない!」
玉蓮はそう言い放つと、剣を握る手に僅かに力を込めた。城主の息子の喉元から、微かな血が滲み出る。
「グッ……ち、父上! 降伏などしてはなりませぬ! この城を……この地を、赫燕のような賊軍に明け渡すなど!」
恐怖と意地が混ざり合った、甲高い悲鳴のような叫び。玉蓮は眉一つ動かさず、叫び出した男の顔を、持っていた剣の柄で容赦なく殴りつけた。
ゴッ、と鈍い音が響き、男は呻き声を上げて地に倒れ込む。
「……じ、時間を! 時間をくれ!」
「否! 直ちに降伏だ!」
城壁の上、城主らしき人物が、配下の者と激しく言い争っている様子が垣間見えた。迷っている。ならば、あと一押し。
「では、右の指を」
「なっ——! ふ、ふざけるな! 殺せ! いっそのこと! 指を落として、父上に降伏を迫るなど……人の道に外れている!」
「貴殿に選ぶ権利はない。生かすも殺すも、切り刻むも、全てはこちらが決める。口輪をはめろ。叫び声がうるさくなる」
玉蓮はキッパリと告げる。彼女の周りに控えていた屈強な配下の兵が、即座に動いた。抵抗する男の口に、厚手の布が乱暴にねじ込まれていく。
「んぐっ! んーッ!」
男が目を見開き、もがく。城壁から悲鳴が上がる。後方に控えていた味方の兵たちからも、どよめきが起こった。
「お、おい……玉蓮は本気か?」
「……朱飛さん、玉蓮のやつ……わかってないんじゃ」
「そうですよ。慈悲のつもりで生かそうとしてんじゃ。だけど、少しずつ切り落とす方がよっぽど……」
「馬鹿を言え。慈悲などあると思うか……玉蓮は、わかってやっている」
背後のざわめきを無視し、玉蓮は氷のような声で命じた。
「——落とせ」
玉蓮の合図とともに、横にいた兵士が剣を振り下ろす。口輪を噛ませられた男が「んぐぅぅぅーーッ!!」と絶叫する。恐怖で。
——ドスッ!
肉を断つ鈍い音。玉蓮は、地面に転がった血まみれの指を拾い上げる。そこに光っているのは、あの翡翠の指輪。玉蓮は、その指を布とともに矢にくくりつけ、弓兵に渡した。
「射て」
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