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第017話 はじめてのおつかい
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「ほぉぉ……へぇぇ……」
ちょっとした刃物など細々としたモノも必要だろうという事で、鍛冶屋と併設された雑貨店にお邪魔したのだが。
ここで初めて鏡を見た。
自分の顔なんてそんなに興味は無かったのだが。
ちょっと猫毛で細いクリームに近い金髪に、碧い瞳。
細マッチョっぽい体格と合わせて、ちょっと中性的な容貌に驚いた。
あら、美人さん。
創造神、ぐっじょぶ。
「あら、こちら品質もよくて……」
感心していたのを珍しいモノを見たのと勘違いしたのか、店員さんが鏡をすすめてくるが、そちらは丁重にお断りして。
ちょっとした小鍋とか、カップ、皿など、移動の休憩に使いそうなものや、下着の予備などトラベルセットをまとめて買い込む。
「本当にカバンは大きいのだけで良いんですか?」
「はい。『収納』があるので」
女性だけに買い物は好きなのか、俺の買い出しが主だというのに、上機嫌でアイシャさんが手伝ってくれる。
ちょっとした調味料や保存食を買い込んで買い物は終了したのだが。
貰ったお駄賃の半分にも満たなかった。
買い物をしてやっと物価と貨幣が分かったのだが、薬草の類いというのは結構な価値があるようで。
ありがたや、ありがたやと。
用意も完了したので明日は出発という事で、行程の説明を受けて就寝へ。
ちなみに、町までは馬車で一日弱で着くそうなので。
途中に村が一か所あるけれど、そちらに寄っても十分当日圏内だそうだ。
はじめてのおつかいレベルだなと思いつつ、ぱたんきゅーした。
明けて、朝食と用意を済ませて、出発前の一服。
『一坪の世界』の様子を確認すると……。
後で生まれたノーマルなスライムさんの一匹が目前でふるふると踊っている。
何をしているのかなと思っていると、どうも参拝しているようで。
神かよ、って突っ込もうとして神だったとセルフツッコミをしてしまった。
スライムさん的に十年に一回程度しか現れなかったのが、ちょこちょこ現れるようになって感極まったようで。
確認するとアコライトスライムになっていた。
別に祈る以外は特筆するものは無いのだけど。
ぴとっとくっついてぷるぷるしているさまは可愛かった。
でも、祈るなんて高尚な思考を出来るなんて、スライムさん達は侮れないななんて。
さてさて、出発しますかと外に出ると。
『宗教の発生を確認しました。一坪の世界を拡張します』
そうか……宗教なのか……。
いや、神だけど、神だけど……。
日本人的な常識との折り合いに、うーんと若干悩みつつも、まぁ良いかなと。
切りの良い、十坪二十畳の空間になった事にも満足。
ちなみに、面積はさておき、空は大分高くなった。
もう少し、地層を入れて地面を複雑にしても環境が面白いのかなとアクアリウム的に考えつつ、アイシャさんのもとに向かった。
馬車に関しては村で共用のモノを複数台用意しているそうで。
そちらから整備済みのモノを一台借りる。
馬も農耕などと併用しつつ管理しているそうだ。
ちょっとした手続きを経て、アイシャさんと二人馬上の人となった。
ぽっこぽっことリズミカルな足音を鳴らしながら、荷車は進む。
七時間ほどの旅だそうなのだが、それでもアイシャさんと二人で送り出してもらえたのにはそれなりに訳がある。
まぁ、俺が送りオオカミにならないという信用があるという前提で。
この手の旅に訪れる災難というのは大きく分けて二つ。
一つは盗賊などに襲われること。
これに関しては、辺境のどん詰まりに位置している村の経路ということが妨げになっている。
そもそも高価なモノを運ぶことも無ければ、唸るような金を積んで移動することもない。
それだけでも襲うにはかなりの心理障壁となるのだが、加えて領主が衛兵のパトロールの経路に含んでくれているのだ。
これに関しては伝達役と訓練兵の意味合いも持っており、辺境の果てで問題が起こった時に迅速に連絡をするためなのと、そういう場所に出てくる魔物の処理で訓練を行うのだ。
二つ目は先程も出した通り、魔物という存在がおり、それが襲ってくるということ。
魔物とはなんぞいというと、きちんと区分けがあって。
ちょっと説明は長くなるが、俺達の体の心臓の裏側には魔力袋と呼ばれる器官が物理的に存在する。
袋状になった臓器の中に脳みそみたいな塊が入っているのだ。
生き物に関しては例外なく存在しており、スライムさんの中にもぷかぷか浮いている。
これの機能に関してはまたの機会に。
この脳みそ部分が硬化して石のようになった存在が魔物と呼ばれる。
非常に残忍かつ獰猛な存在で、明確に害獣として扱われるのが一般だ。
で、この魔物は森の中にも存在しており危険なのだが、先日採取していた薬草の一つベラージュを加えて作った香の匂いを嫌う。
今も馬車の先にくくっている香炉から煙が出ているのだが、あんな風に焚いていれば問題は無い。
という訳で、比較的安全に移動が出来るという形になる。
真剣な面持ちで前方を眺める、アイシャさん。
先程まで御者の手ほどきをお願いしていたが、一通りの動作をマスターしたら、元通りに。
ふわぁと欠伸を一つ。
のどかな風景が揺れる中、暖かい風を受けてうとうとと睡魔と戦いながら旅路は続いた。
ちょっとした刃物など細々としたモノも必要だろうという事で、鍛冶屋と併設された雑貨店にお邪魔したのだが。
ここで初めて鏡を見た。
自分の顔なんてそんなに興味は無かったのだが。
ちょっと猫毛で細いクリームに近い金髪に、碧い瞳。
細マッチョっぽい体格と合わせて、ちょっと中性的な容貌に驚いた。
あら、美人さん。
創造神、ぐっじょぶ。
「あら、こちら品質もよくて……」
感心していたのを珍しいモノを見たのと勘違いしたのか、店員さんが鏡をすすめてくるが、そちらは丁重にお断りして。
ちょっとした小鍋とか、カップ、皿など、移動の休憩に使いそうなものや、下着の予備などトラベルセットをまとめて買い込む。
「本当にカバンは大きいのだけで良いんですか?」
「はい。『収納』があるので」
女性だけに買い物は好きなのか、俺の買い出しが主だというのに、上機嫌でアイシャさんが手伝ってくれる。
ちょっとした調味料や保存食を買い込んで買い物は終了したのだが。
貰ったお駄賃の半分にも満たなかった。
買い物をしてやっと物価と貨幣が分かったのだが、薬草の類いというのは結構な価値があるようで。
ありがたや、ありがたやと。
用意も完了したので明日は出発という事で、行程の説明を受けて就寝へ。
ちなみに、町までは馬車で一日弱で着くそうなので。
途中に村が一か所あるけれど、そちらに寄っても十分当日圏内だそうだ。
はじめてのおつかいレベルだなと思いつつ、ぱたんきゅーした。
明けて、朝食と用意を済ませて、出発前の一服。
『一坪の世界』の様子を確認すると……。
後で生まれたノーマルなスライムさんの一匹が目前でふるふると踊っている。
何をしているのかなと思っていると、どうも参拝しているようで。
神かよ、って突っ込もうとして神だったとセルフツッコミをしてしまった。
スライムさん的に十年に一回程度しか現れなかったのが、ちょこちょこ現れるようになって感極まったようで。
確認するとアコライトスライムになっていた。
別に祈る以外は特筆するものは無いのだけど。
ぴとっとくっついてぷるぷるしているさまは可愛かった。
でも、祈るなんて高尚な思考を出来るなんて、スライムさん達は侮れないななんて。
さてさて、出発しますかと外に出ると。
『宗教の発生を確認しました。一坪の世界を拡張します』
そうか……宗教なのか……。
いや、神だけど、神だけど……。
日本人的な常識との折り合いに、うーんと若干悩みつつも、まぁ良いかなと。
切りの良い、十坪二十畳の空間になった事にも満足。
ちなみに、面積はさておき、空は大分高くなった。
もう少し、地層を入れて地面を複雑にしても環境が面白いのかなとアクアリウム的に考えつつ、アイシャさんのもとに向かった。
馬車に関しては村で共用のモノを複数台用意しているそうで。
そちらから整備済みのモノを一台借りる。
馬も農耕などと併用しつつ管理しているそうだ。
ちょっとした手続きを経て、アイシャさんと二人馬上の人となった。
ぽっこぽっことリズミカルな足音を鳴らしながら、荷車は進む。
七時間ほどの旅だそうなのだが、それでもアイシャさんと二人で送り出してもらえたのにはそれなりに訳がある。
まぁ、俺が送りオオカミにならないという信用があるという前提で。
この手の旅に訪れる災難というのは大きく分けて二つ。
一つは盗賊などに襲われること。
これに関しては、辺境のどん詰まりに位置している村の経路ということが妨げになっている。
そもそも高価なモノを運ぶことも無ければ、唸るような金を積んで移動することもない。
それだけでも襲うにはかなりの心理障壁となるのだが、加えて領主が衛兵のパトロールの経路に含んでくれているのだ。
これに関しては伝達役と訓練兵の意味合いも持っており、辺境の果てで問題が起こった時に迅速に連絡をするためなのと、そういう場所に出てくる魔物の処理で訓練を行うのだ。
二つ目は先程も出した通り、魔物という存在がおり、それが襲ってくるということ。
魔物とはなんぞいというと、きちんと区分けがあって。
ちょっと説明は長くなるが、俺達の体の心臓の裏側には魔力袋と呼ばれる器官が物理的に存在する。
袋状になった臓器の中に脳みそみたいな塊が入っているのだ。
生き物に関しては例外なく存在しており、スライムさんの中にもぷかぷか浮いている。
これの機能に関してはまたの機会に。
この脳みそ部分が硬化して石のようになった存在が魔物と呼ばれる。
非常に残忍かつ獰猛な存在で、明確に害獣として扱われるのが一般だ。
で、この魔物は森の中にも存在しており危険なのだが、先日採取していた薬草の一つベラージュを加えて作った香の匂いを嫌う。
今も馬車の先にくくっている香炉から煙が出ているのだが、あんな風に焚いていれば問題は無い。
という訳で、比較的安全に移動が出来るという形になる。
真剣な面持ちで前方を眺める、アイシャさん。
先程まで御者の手ほどきをお願いしていたが、一通りの動作をマスターしたら、元通りに。
ふわぁと欠伸を一つ。
のどかな風景が揺れる中、暖かい風を受けてうとうとと睡魔と戦いながら旅路は続いた。
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