一坪から始まる新世界創造

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第025話 旅立ちの朝にサンライズ

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 本日は旅に出るという事で、準備に充てる。

 焦らなくてもと言ってみたが、アイシャさん曰くあまり伸ばすとクローネちゃんがまた噴火するとの事。

 予算はそれなりに確保しているので、まずは前回使った馬と馬車を買い上げられないか相談しにいく。

 村の共有財産とはいえ、中古の荷馬車とそれなりに高齢な馬だったので、あまり手間をかけずに商談成立。

 短距離ワープだけではない偽装の足が手に入って、何より。

 で、衣食住だなという事で。

 着るものは都会の方が良いものがあるそうで、下着類を揃える事に。

 食べ物に関しては、生鮮食品の他には野菜の種なんかも揃えてみた。

 アイシャさん曰く、農作業というのにも憧れていたそうなので、家庭菜園をやるそうだ。

 お肉の類いに関しては、都度狩猟で賄う方が良いとエジライさんに聞いたので、移動中に手に入りにくいお酒や調味料を揃えて完了。

 住処に関してだが……。

「んじゃ、床柄部分がこれね。立てたところを大引きで固定したら、根太を張って、その上に床板を敷いていくと。この規模なら柱はこれで良いけど。天井は本当にこんなので良いの?」

 大工さんのところに行くと、流石林業の村。

 丸太の輸出だけじゃなくて、製材や加工済みの木材も販売していた。

 ツーバイフォーほど洗練されている訳じゃないけど、ちょっとした小屋なら二人で組み立てられるので、材料だけを買い込む。

 値段的には小屋を一軒立ててもらう値段で二軒分の材料が買えた感じに抑えられた。

 鍛冶屋で釘や大工道具を買い込み、最後の難関の錬金術屋さんへ。

 薬師以外でポーションを買うとなると、錬金術屋さんなのだそうで。

 大きな町などでは、製造を薬師が引き受けて、販売を錬金術屋さんがやっている形式も多いそう。

 この村では、錬金術屋さんはどちらかというか魔法に関わる雑貨屋さんというのが近い。

 その中でも個人的に探しているのが……。

「うーん……。迷いますね」

 本棚に並ぶ、魔法の本。

 アイシャさんは自衛兼草刈のために風魔法は取得済みだそうで。

 個人的にはそれ以外の魔法を選択したいなと。

 持ち金的に一冊買ったら、後は旅のお金しか残っていないのであまり選択を間違える訳にはいかない。

「んー……。じゃあ、土魔法で」

 火は灯火くらいしか使わないし、水は『一坪の世界』があれば供給可能。

 それ以外の魔法は物質に干渉するのに一癖も二癖もあるものばかりなので、後回し。

 という訳で、消極的選択ではあるが、土魔法を習得する事にしました。

 どさりと貨幣が詰まった革袋を渡して、本をゲット。

 あっさりその場で読んで覚えて、アイシャさんと店員さんから祝福のエールを貰った。

 そんなこんなで準備が整って、帰宅。

 明日にでも出発する事となったのだけど……。

「ふぇ……。ふぇぇ」

 ぐすぐすと泣き止まないクローネちゃんに心が痛い。

 色々慰めるのだが、全然効果が出ない。

 そんな時に颯爽と現れるお姉ちゃん。

「二人が一緒に出ていくと、お母さんもお父さんも寂しいでしょ?」

「うん……」

「それに、クローネが大きくなったら、一緒に旅をしたくない?」

「したい……したい!!」

「その練習でお姉ちゃんは先に行くの。そうじゃないと、クローネが大きくなった時に遅くなっちゃうでしょ? 遅い方が良い?」

「だめ。はやいのがいい!!」

 そんな感じで、手のひらでころころして、機嫌を治させるのだから、お姉ちゃんって凄いなと。

 旅立ちという事で、早めに就寝して、明日に備える事にした。

 明くる日。

 朝靄がけぶる中、荷馬車の上には俺とアイシャさん。

 偽装用として、木箱や樽なども載せているが、中身はほぼ空だ。

 眼前にはお世話になったエジライさんとエイザーさん、アローネさんが立っている。

「では、行ってきます。必ずアイシャさんは無事にお返しします」

 俺が告げると、そっとエジライさんが手を握ってくれる。

「大切な孫だから、頼むね。信じている」

 その上にエイザーさんが手を乗せる。

「まだまだ早いと思っていたけど、成長するんだね。よろしく……。アイシャも無事にね」

 そしてアローネさん。

「体調には気を付けてね。あなた羽目を外すのだから。元気で楽しんでらっしゃい」

 そう告げられたアイシャさんは泣き顔でえぐえぐしている。

「クローネちゃんは?」

「起きてこないし、返事もしないのよ……」

 アローネさん曰く、部屋のベッドで籠っているそうで。

 ただ、個人的に気になっているのは……。

 木箱に付けていた封蝋が外れているのですが……。

 そっと、叩くと、がたっと中で何かが動く。

 ぱかりっと開けると……。

「ふぉ、だめ!!」

 中にはクローネちゃんがしゃがんで入っていた。

 これには一堂びっくり。

 唖然と見つめていると、アローネさんの教育的指導が始まった。

 そんな締まらない中、笑顔での出発となった。

 では、いってきます。
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