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第三部 フォレ領編
64. 友人があっという間に大人気です
しおりを挟む数日後。
城で勤務する人たちや辺境騎士団の騎士たちが食事を取る大食堂で、私はリアとウォードと三人で食事を取っていた。
ちょうど昼時の大食堂は、混雑していた。
特に決まった席がある訳ではないのだが、制服ごとに何となくグループに分かれて座っている。
一人前と認められた騎士団員や、ジェーンと同じお仕着せを着たベテランの侍女、執事などは、みな黒い制服を着用している。
一方、見習いの騎士や、勤め始めて日が浅い従僕、メイドなどは、クリーム色と茶色をベースとした色合いの制服だ。
ちなみに、ウォードもリアも、後者の淡い色合いを身にまとっている。
ウォードは、元騎士だからか、騎士服がよく似合っていた。
私はギル様から黒いローブを支給されたが、同じようなローブを着ている魔法部隊の人もぽつぽつと見える。
だが私のローブと違って、彼らの制服の胸元には、黄金色の飾り石はついていない。
魔法使いのリアも、彼らと同じデザインの、クリーム色のローブを着ている。
そして、混雑した大食堂の中で、ひときわ目立っているグループがあった。
窓のそば、暖かい日差しが差し込むテーブル。
黒い騎士服を着た、精悍な騎士たちが並んで座る中央に、一人だけ、クリーム色のシャツに茶色のベストを着ている青年が座っている。
ここ数日、輪の中心にいる青年――アンディが、すっかり話題の中心になっていた。
持ち前の明るさと人なつこさ、そして何より、彼の持つずば抜けた解体技能により、ここに来て日が浅いというのに、あっという間に騎士団員たちに認められたのである。
私たちはアンディたちのテーブルから少し離れた席に座っているが、彼の笑い声と話し声は、ここまで届いていた。
「あーあ。なんだかアンディを取られちゃった気分」
「アンディは大人気だね。リア、大丈夫? 寂しくない?」
「ううん、平気。アンディがみんなに認められるのは、あたしも嬉しいからね。解体班には男しかいないみたいだし、仕事が終わった後はあたしと過ごしてくれるから、問題なし」
ギル様もシニストラ卿も、この地は徹底した実力主義だと言っていたが、それは事実だったようだ。
アンディの卓越した技術は、辺境騎士団でも高いレベルだったらしい。
「アンディも、自分の特技の価値に、ようやく気がついたみたい。最初は厳しく当たられてたみたいだけど、実力が評価されて、あっという間に大人気。騎士団の解体班は解体の専門家たちだし、そんな人たちに認められてようやく自信を持ち始めたみたいよ」
「すごいね、アンディは。私も、早く皆さんの役に立てるように、ポーション作り頑張らなくちゃな」
「あはは、アンディが調子に乗り始めないかだけ心配だけどね、あたしは。それと、ティーナ。貴女のポーションも、最近話題になりつつあるみたいよ?」
「えっ、そうなの?」
私は基本的に昼食のときと、ギル様に呼ばれたときぐらいしか、部屋の外に出ることがない。
接触する人も、リアとウォード以外だと、ジェーンやシニストラ卿、ギル様ぐらいしかいないから、城内の話題には疎かった――まあ、アンディぐらい目立っていれば別なのだが。
「そうだよ。あたし、嗅覚だけじゃなくて聴覚も強化できるからさ。普段から、色々と話題を仕入れてんの」
リア曰く。
最近仕入れるようになった珍しい色のポーションは、これまでの物よりも高効果だ。
しかも、以前だったらポーションを適用されなかったような軽い怪我にも、バンバン使ってくれるようになった。安定した仕入れルートを確保できたのだろうか。
軽い怪我でも、痛みや引き攣れから集中力の低下を招き、それが大きな事故に繋がる場合がある。それを防げるようになったのは御の字だ。
そんな話が、騎士たちから聞こえてくるのだそうだ。
「私のポーションが、役に立って……?」
「うん、そうだよ。今はアンディがやたら目立ってるし、ポーションを作ってるのがティーナだって知られてないから、大きく話題に上らないだけ。もう、ティーナが認められる素地は整いつつあるの」
「そっか……そうなのね」
リアの言葉に、胸の奥からじわじわと喜びがわき上がってきた。
「だけどね、ティーナ。公爵様が次の盤上に駒を進めるためには、もう少しだけ準備が必要なんだと思う。あたしも手伝うから、今は魔法の勉強と研究を頑張ろうね」
「うん、いつも色々教えてくれてありがとう。頼りにしてるわ、リア」
「もっちろん、任せて。魔法理論と空間魔法の知識は公爵様に負けるけど、属性魔法と実践魔法のことなら、あそこでランチプレートをつついてる黒ローブ集団にも負けないよ」
リアは、魔法部隊の人たちが固まっているテーブルを顎で示して、不敵に笑った。
リアとしばらく過ごしているうちに感じたのは、彼女がとても負けず嫌いで好戦的だということだ。
次に旅に出るまでの期間限定でここにいるとはいえ、リアがクリーム色ではなく、黒いローブを望んでいるのは明らかだった。
「ティーナが研究で結果を出せば、あたしの価値も上がる。一緒に新しい魔法を研究して、早いとこ結果を出して、上のステージに行くよ!」
「うんうん、そうよね。一緒に頑張りましょ!」
そう言って私はリアとハイタッチをする。
私が微笑むと、リアも、やる気に満ちた様子で口角を上げた。
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