【R18】今日から私は貴方の騎士

みちょこ

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第一章 愛想のない護衛騎士

3話

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 近くまで迫った顔。唇に触れる温かい吐息。そしてまったく光が見えない暗黒に染まったアランの瞳。完全にあの日、泣かされた時と同じ状況だ。

「これはおかしい。私はシエナ嬢が聡明な方だと認識していましたが」

「え?」

「誓いの口づけは頬にするものなのですか。知りませんでした。へぇ、そうなんですか。まさか誤魔化したりその場凌ぎな行為を働くなんて、シエナ嬢は絶対にしないですよね」

「……えっ」

「しないですよね?」

 目が、本気だ。
 そして意地悪だ。年下の子供相手に。

 最初こそシエナは目と口を丸めて驚いていたが、次第に視線が泳ぎ出し、顔がほんのりと赤く染まり始める。気まずさと動揺から目を逸らせば、逃さないと言わんばかりにアランが真顔のまま顔を覗き込んできた。やはり、顔が怖い。

「……だ、だめだよ……」

「何が」

「お口にしたら……」

「何ですか」

「……赤ちゃん、できちゃう……」

 ──時が、止まった。

 シエナが羞恥に耐えて、真っ赤に染まった顔を俯かせる中、彼女の腕を掴むアランの手にみしっと妙な力が入る。しばらく長い沈黙の時間が流れたが、地の底までつきそうな彼の溜め息が静寂を打ち破った。

「……それは、分かっていて言っているのですか? それとも人をからかいたいだけなのでしょうか」

「え?」

「もういいです。シエナ嬢、その知識足らずを衆目に晒す前に少々勉学に励んだほうがいいかと」

「どういう意味?」

「学園で生徒達に馬鹿にされる前に勉強しろという意味です」

「え、バカ?」

 アランの言葉に、シエナは表情を強張らせる。

「どういうこと? わたし、馬鹿と思われるようなこと言ってないわ!」

「いいえ。言っているから忠告したのです」

 アランは顔を逸したままさっと部屋の外まで逃げる。慌ててシエナは小走りで彼の後を追ったが、目の前に差し掛かったところで半分ほど扉を閉められてしまった。
 すかさず隙間に両手を差し込み、シエナは顔を喰い込ませる。

「お願い! どういうことか教えて!」

「近いうちに指導係をつけられるでしょうから、その時に聞いてください」

「アランに教えてほしいの!」

「無理。お断りします」

 あっという間に身体を押し出され、扉を閉められる。
 アランの言っていることが理解できず、挙げ句の果てに小馬鹿にされてしまったことにシエナは腹を立てた──が、その二年後に閨教育を受けて真実を知り、自分の無知な発言を思い返しては恥ずかしさで死にたくなるような衝動に駆られることになるとは、頭の隅にすら思い浮かばなかった。


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