【R18】悪女と冴えない夫

みちょこ

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第1章 冴えない夫

1話

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 教会のステンドグラスから射し込む穏やかな陽の光。美しい音色を奏でる古びたオルガン。聖壇に優しい眼差しを向ける人々。そして目の前には美しい花嫁の姿。

 燕尾服を纏ったアルフィーは、逞しい身体には似合わない強張った面持ちを浮かべていた。掌と額には尋常ではない量の汗を滲ませ、何度も無意味に咳払いを繰り返している、彼が緊張していることは一目瞭然だった。

「アルフィー」

「え?」

「どうぞ。次を」

「つぎ?」

 投げかけられた神父の言葉に、アルフィーは瞬きをする。
 ──次、とは何のことだっただろうか。上の空だったアルフィーは、式がどこまで進んでいたか頭から完全にすっぽ抜けていた。確か、神父が長ったらしい台詞をずっと喋っていた気はするが、ウエディングドレスに身を包んだエイヴァが余りにも綺麗で緊張してしまい、集中力が欠けていたのだ。

「え、えっと」

 しどろもどろの状態のアルフィーをエイヴァは冷めたような目つきでじっと見つめている。

 騎士団員の下っ端としていつまで経っても出世しない平凡な男に嫁いだ由緒正しい侯爵家の娘。多少冷たい印象は受けるものの、その美貌も申し分ない。
 縁もゆかりもない子爵家の人間からしたら高嶺の存在と言っても過言ではないのだが、アルフィーは未だに侯爵家の娘と婚約できたことが不思議でならなかった。

「アルフィー様」

「え?」

「早くしてください」  

「えっ」

「早く」

 整った顔立ちのせいもあるのか、どこか恐ろしさすら覚えるような表情で急かすエイヴァ。

 (次は何だった? 宣誓? 誓いの口づけ?)

 アルフィーは慌てふためきながら透明なベールを捲る。そのまま神々しいエイヴァの顔を直視しないように瞼をギュッと瞑り、妻となる彼女に口づけようとした──が、神父の小声により阻まれた。

「違います。指輪の交換が先です」  

「えっ、あっ、間違えちゃった、すいませ」

 神父の言葉にアルフィーは慌てて顔を離そうとしたが、今度は身体の動きを別方向から止められていた。それもそのはず、逃さんと言わんばかりにエイヴァがアルフィーの両頬を掴んでいたのだ。

「アルフィー様。不義を働いたら許しませんからね」

「え? あっ、ふっ、んむっ」

 有無を言わさない圧力で顔を引き寄せられ、半ば強引に唇を奪われるアルフィー。勢い余り不格好な体勢を取ってしまった彼の姿に小さな嗤い声が教会の隅からちらほらと聞こえていたが、エイヴァは表情を崩さずに口づけを受け入れていた。



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