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3話
しおりを挟むソフィアの夫に対する行動は、日増しにエスカレートしていった。
私がいない時間を見計らっているのだろう。頻繁に話しかけては二人きりの時間を無理矢理作って。夫が拒めるような性格ではないことを利用してか、過剰なボディータッチをかましている。
今朝は特に酷かった。『手相を見る』とか訳が分からないことを言ってフィンの手を握り、彼の手の甲にそのままキスをしたのだ。
フィンはぎょっとした表情を浮かべてその場から逃げようとしたものの、ソフィアは『寒いです。旦那様』とか言って、絶対に逃がさないと言わんばかりにフィンの腰に抱きついて。
雇われの身でありながら、何なのよこの女は。
そんなに寒いなら焼却炉に突っ込んでやろうか?
苛々しながらモニターを見つめ、映像を現時刻に切り替えた。場所は、住み込みで働いている侍女達の寮──ソフィアがいる部屋だ。
ソフィアは口角を大きく上げながら、両手に握り締めた何かを恍惚とした表情で眺めている。
彼女が握っているものが何なのか、カメラをズームしてそれを睨むように見つめ──次の瞬間、悪寒が背筋を駆け抜けた。
ソフィアが持っていたものは、フィンが日頃から愛着していたシャツだった。今朝方、フィンが私に『お気に入りのシャツが消えた』と訴えていたが、まさか此の女が犯人だったとは。まぁ、証拠は映像にしっかりと収めた。窃盗罪も追加しておいてやろう。
小さな溜め息を吐き、夫のシャツに顔を擦り寄せている気持ちの悪いストーカー女の部屋から、映像を夫がいる寝室へと切り替える。
──フィンはベッドで横になりながら、何かをぎゅっと抱き締めていた。
……あれは、私が着ているお気に入りのセーターじゃないの。無くなったと思っていたのに、フィンが持っていたのね。
やっていることはソフィアと変わらないけれども、スヤスヤと寝息を立てて眠っている姿を見ていたら、許せないものも許せてしまう。
まったく、そんなに可愛い顔を見せるから、女にすり寄られるのよ。まぁ、可愛いから許すけど。
夫の愛らしい姿に口許を綻ばしながら、映像を再びソフィアの部屋へと切り替え──刹那、小さな悲鳴を漏らしてしまった。
ソフィアは『はぁ、旦那様、フィン様、旦那様』と淫らな声を出しながら夫のシャツの匂いを嗅ぎ、片手で自分の秘部をぐにゅぐにゅと厭らしい水音を立てて弄りまくっている。
見てはいけないものを見てしまったような気になってしまい、私は直ぐにモニターの画面を切った。一瞬にして、夫の寝顔に対する和やかな気持ちが消えてしまったではないか。
──恐らく、ソフィアの行動は今後、更にエスカレートしていくだろう。来るべき時が来るまで、それ相応の覚悟をしなければ。
「はぁ……」
本日何度目か分からない溜め息を吐き、私は愛する夫が眠る寝室へ向かうことにした。
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