【R18】夫を奪おうとする愚かな女には最高の結末を

みちょこ

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4話

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 寝室の扉を開けた途端、フィンは何やら忙しなく動きながら布団を咄嗟に被った。

 いや、どうしてそんなに慌てているかは分かってはいるけど。私のセーター隠しただけだよね。

「フィン、ごめんね。寝てたかしら?」

 気付かない振りをして笑顔でベッドに歩み寄ると、フィンは甘えるように私に向かって両腕を広げた。その愛くるしい笑顔、仕事をしている時には絶対に見れない私だけのフィン。

「大丈夫だよ、シャーリー。おいで」

「ふふっ」

 そのままフィンの腕の中に飛び込み、ぎゅっと抱き合いながらベッドを転がる。顔を上げれば、フィンの綺麗な顔が近付いてきて。互いの唇を堪能するように熱い口づけを交わした。

「んっ」

 唇をちゅうちゅうと吸い合い、形が潰れてしまうくらいに押し付ける。毎日飽きるほど沢山キスをしているというのに、何度触れ合わせてもこの柔らかくて熱い感触が堪らない。愛し合っているからこそ、この口づけは許された行為。

 だから、私のフィンの唇を奪ったあの女は絶対に許さない。地獄に叩き落としてやる。

「っ、は……」

 長い口づけを経て、惜しむようにゆっくりと唇を離す。

 フィンは瞳の奥に獣めいた光を宿しながら、再び私の唇を奪おうと顔をぐっと近付けようとした。

「待って。フィン」

 唇が触れそうになる寸前で、夫の頬を両手で覆う。キスのお預けを食らったフィンは、藍色の瞳を大きく見開いて「どうした?」と言葉を返した。

「フィン。私に何か隠してることない?」

「え?」

「か、く、し、て、る、こ、と」

 フィンの少し固い頬っぺたを左右にぐいっと引っ張る。フィンは少しの間を開けたあと「無いよ」と笑顔で答えた。

 この野郎。分かっている癖に清々しい顔で誤魔化しやがって。

「本当に? 嘘つく人は、私嫌いだから」

「嘘ついてない」

「隠しごとをしたら、一生フィンとはキスもセックスもしないから」

「ソフィアにキスされた」

 早い。開き直るのが早すぎる。

 隠し事をしようとした夫への怒りも込めて、フィンの頬を両手でむぎゅっと軽く押し潰した。

「どうしてキスされたの?」

「階段から落ちてきたソフィアを助けようとしたら、何故かその勢いのままキスされて」

「何で最初に言わないの?」

「……シャーリーが嫌な気分になるかと思って」

「好きな人にそんな隠し事をされる方が嫌よ」

「……ごめん」

 フィンの側頭部にあるはずの無い大きな犬の耳が見えて、幻覚として映るそれが分かりやすいほどに垂れ下がっていく。余りにも落ち込んだ様子を見せるものだから、慰めるように彼の唇に再びキスをした。

「もう二度と嘘つかないで。それと他の女に簡単にキスされないで」

「……分かった。気を付ける。ごめん」

 フィンは小さな声で謝ると、今度は自分から唇を重ねて、私の口内に熱い舌を差し込んだ。
 他にもセーターの件とか隠し事はあるだろうけど、彼の濃厚な口づけに応えていたら全て忘れてしまって。

 激しくベッドを軋ませながら、私達は互いの身体を貪り合った。

 私達の愛し合っている姿を見たら、きっとソフィアは嫉妬で怒り狂うんだろうな──と内心、彼女にほくそ笑みながら。




 まぁ、フィンには忠告したからもうキスされることは無いかな、と思ったのだけれど。その安易な考えは、次の日には簡単に打ち砕かれた。


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