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閑話
シヴィルのひとりごと2「ド田舎の村でそだった」
「シヴィル! お父さんの昼ごはん持っていって! 」
「へいへーい」
母がドアから顔をだして叫んだ。僕は気だるげに返事して、父の昼食を持って畑へむかう。
山を開拓して作った畑はリンゴやオリーブの木が植えられてる。秋はリンゴの収穫期、村の人たちはハシゴを立てかけリンゴをカゴへ入れる。父へ声をかけたら降りてきて昼食を受けとった。
両親はいい人たちだ。僕は車にぶつかられてフェードアウト、最初は混乱したけど村で生きることを受け入れた。もとの世界で読んだラノベにこんな展開あった気がする。ただSNSもゲームもマンガもない原始的な生活、楽しみかたがわからない。
「今年は豊作さね。シヴィル、おめえは仕分け手伝ってこい」
子供だけど仕事へかりだされる。児童労働に虐待、もといた国だったら騒がれていただろうが、ここにそんなものはない。
村の女性たちの輪へ加わってリンゴを仕分けする。形のいいもの悪いものを町へ持っていく箱につめる。虫食いや落ちて傷んだものは売れないので村人が食べる。
加工すればいい売りものになるのにと、ためいきを吐いた。毎年バースデーに母がつくる焼きリンゴのハチミツがけを思いだしてヨダレがでた。
リンゴいがいにヤギやチーズもあったけれど、食べるのは年1回くらい。育てているものは町へ出荷してしまうため村人の口には入らない。自給自足は成りたっていたが村は貧乏だった。きょう出荷するリンゴだって、僕たちにとってはたいしたお金にもならない。
木の箱へ〇と×を書いて運ぶ人が分かるように印をつけ、おいしそうなリンゴを見送る。この村には文字を書くどころか読める人もいなかった。教えてもらおうと思っても、両親も文字を知らない。
「シヴィルはトルニーさん自慢の息子だべ」
隣家の娘さんが感心したようにつぶやく。てきとうにしゃべっていたら、仕分け小屋へ農園主がきた。農園主は北の町に住んでる貴族、収穫の時期に視察へおとずれる。
「シヴィルくんは本当に頭がよいですねぇ、来年になったら、家でいろんな事をおしえてあげますよ。ぐふふふ」
手をにぎられて摩られた。あぶらぎった目がこっちを見て悪寒がはしる。両親は農園主のことばに丸めこまれて、貴族のもとへ養子にいく話がすすんでる。
(ちくしょう悪徳農園主め! 冗談じゃない。あんな脂ぎったおっさんの小姓なんてやってられっかよ! )
僕は自由をもとめて奮起した。貧乏な村とおっさんの魔の手から逃れる方法をさがした。
その名も”シヴィルの下克上けいかく”
しぶる両親を説得して、出荷の荷馬車へのって町へ来た。持ち物はちいさな袋と一枚のチュニック、僕は村人と別れて兵舎の門をたたく。ここは村の北にある北城塞都市。
「シヴィルか……姓はあるのか? 」
「無いっすよ。ただのシヴィル」
この都市で姓がある人は希、ほとんどは階級が上の兵士か貴族。一般人は名前だけ、山奥からきた僕が姓をもつなんてありえないこと。
けいかくは刻々と進行中。あれから色々しらべた結果、兵士になるのがいちばん地位を上げやすい方法だった。
「若いな」
「ぴちぴちのほうが吸収して強くなりますよ! 青田買いですよ、だ・ん・な! 」
「その年でむずかしい言葉を知ってるのだな。まあいい、訓練はさぼるなよ」
背も伸びはじめて兵士の最低ラインは突破した。あとはてきとうに成果をあげて地位が上がればのんびりと暮らす。それが”シヴィルの下克上けいかく”。
北城塞都市はロマス帝国の兵士が中心となってつくられた防衛都市だ。兵舎を歩く兵士たちはみんな筋骨隆々でガタイがいい。百戦れんまの大隊を2つもかかえて、雑兵である僕の出番などなさそう。ほのぼの兵士ライフを送れそうだ。
村より刺激的な生活、だけど面白いことばかりではない。
朝から晩まで訓練と土木工事に従事してヘトヘト。寝るのにも悲鳴をあげる身体を横にする。
信じられないことにベットがかたい、村の藁ベッドよりもだ! おまけに雑兵たちはせまい部屋へ押し込められてちょう暑苦しい。でかいイビキで目が冴える。
(ちくしょう! 誰だよでっかいイビキかいてるヤツは!! )
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