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閑話
シヴィルのひとりごと3「北城塞都市でのせいかつ」
さえない雑兵生活だった。
北城塞都市はそこそこ都会で人も多い、兵はちゃんと分けられて蛮族を撃退する隊もある。僕はおもったほど成果をあげられなかった。せいぜい町をみまわって、壁や道路の修理へかりだされる毎日。雑兵の賃金じゃ食べていくのがやっと、村の両親へ仕おくりどころではない。
帝国兵士のなかには文字も書けない僕をバカにするヤツもいた。読めない文字を見せて、ニヤニヤからかってくる。
(僕は進化したアルファベットを読めるんだ。おまえらみたいな原始的な文字なんて読めるかっての! )
既視感があるものの帝国の文字は読めない。いやな野郎へ思いつくかぎりの悪態をアルファベットで綴って目に突っこんでやりたいけど、帝国出身の兵士と山の村出身の雑兵じゃ立場もちがう。雑兵は紙とペンすら与えられない。
とくにロマス帝国本土から来た貴族は、地方の人間に対して偏見をもち鼻につく。文明もない野良だと見くだし、護衛についた時にいやみを言われたりもした。
「いやみ言われてることくらい分かるっての……」
風呂を知らなかったのはしょうがない。
村では夏は川で水浴び、冬はさすがに寒いので沸かしたお湯で体を拭いていた。シャワーもない生活をしてたから、都市に風呂があって目玉が飛びでるくらいビックリした。
もちろん帝国のヤツらには笑われた。
兵舎にちかい浴場の風呂からあがって体をふいた。辺境の村にうまれて十数年、いまでは入るのも億劫。
支給品のチュニックをかぶっていたら、集団がきて脱衣所がにぎやかになった。見たことない若い兵士たち、ツヤツヤしてるし士官候補だろうか、若いと言っても最年少である僕よりは年上だ。
「ガイウス・ウァレリウス・アッピウス、司令の息子だぜ」
西の村出身のラドリムが、僕の肩へ腕をおいてささやいた。まっすぐで熱血漢のアッピウスは期待の新星だそうだ。エリート兵士たちにまわりを固められて楽しそうに会話してる。
キラキラして住む世界のちがう人間、影ができてこちら側が灰色に見える。
「あいさつ行っとく? シヴィル? 」
「いや、僕はいいかな」
肩をすくめると野心家のラドリムは1人であいさつしにいった。
帝国へ忠誠を誓ってるわけでもない、兵士の地位を上げすぎたら戦いの矢面に立たされる。それにいいヤツほど面倒ごとを背負わされるというのはよくある話。
僕は孤高のオオカミ、群れたいヤツは群れていればいい。
「おまえってさ、隊長ぐらいすぐ任されそうなのに、なんで真面目にやらねぇんだ? 」
非番の雑兵たちと安物のワインを飲んでいたら、酔ったラドリムがぼやいた。のしあがろうとして上手くいかない矛先が僕へ向く。
「知らねーって、僕が行きたいのはそっちじゃあないんだよ」
からんでくるラドリムの顔を押しかえす。集団になったらおのずと親密になる者も出てくる。最年少だった僕は、体力があり余ってる兵士にたびたび声をかけられた。娼館はあったけど、手近なところですませようという魂胆がみえる。
背はぐんぐん伸びて、幅は足りないけど他の兵士たちへ追いついた。この国では15才になれば成人のあつかいで酒も早いうちから飲める。
僕は16になった。
まったくひどい誕生日だ。母の焼きリンゴがなつかしい。
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