精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー

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閑話

シヴィルのひとりごと7「金色ピカピカの男」

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「今日はラルフ様が来るから、ちゃんとしろ」

 ツァルニの表情は今日も変わらない。不満顔ふまんがおでアヒル口を尖らせていたら、思いきりつままれて痛かった。

 あれから進展しんてんはない。理性の働いてるうちはあんなことしない、僕はこれでも文明人なのだ。でも押さえつけられたツァルニはもう1度くらい見たい気はする。残念なことに、いまの彼は鉄壁てっぺきの防御でつけ入るすきもない。



 フラヴィオス・ラルフがヴァトレーネを訪れた。この州を管轄かんかつしている貴族で港町とこの町を行き来して滞在する。

 どんな悪徳貴族あくとくきぞくかと思えば、若くて気さくな男だった。甲冑かっちゅうをまとい大馬へ乗った騎士だが、実業家のようでもある。北城塞都市きたじょうさいとしではあまり見かけなかったタイプの兵士、雰囲気はアッピウスにも似ているけどこっちの方が洗練せんれんされてる。

公共の浴場へ行って、その辺の町人としゃべる。僕が話しかけても態度は変わらずフレンドリー。産業であるワイン用ブドウの品種改良ひんしゅかいりょうや東方の商人たちとの交流も欠かさない。

柔軟であたまの回転もはやい、向こうの世界でも十分活躍かつやくできるだろう。心のどこかで原始的な世界だと嘲笑ちょうしょうしてた僕はおどろいた。



 ひとつ気に入らないのはツァルニがずっと付きしたがってること。吸収できることはいっぱいあって心酔しんすいするのも分かる気はするけど――――。

 無意識むいしきに口を尖らせていたら、ラルフに見つかって大きな手で頭をなでられた。僕は全身の毛が逆立って退く。ツァルニとの事情をさっしているのかいないのか、判別できない表情でこちらを見ている。

 笑顔がまぶしくて目がつぶれそうだ。

(こやつ、もしやテンテキ!? )

 過去の僕、ウィリアムが読んでいたニンジャコミック。影に生きるニンジャの天敵はサムライだ。彼はブシドーではないけど表舞台おもてぶたいのナイト。

目のくらむ黄金色が太陽のごとく輝き、モブの影と水分は蒸発しそうだ。毛を逆立てたネコみたいになっていたら、ますます楽しそうな顔のラルフに観察される。

 大きな背中を見送ると、いっきに肩の力がぬけた。ラルフの後ろへついたツァルニがふり返り口元へ笑みをうかべた。滅多めったに表情をかえないクセにむかつく。



 ふわりふわりと白くてまるいのが目の前を通りすぎる。

(ん? あれって森とか畑で飛んでるやつ? )

 おとぎ話の妖精みたいなの。まるい光りは森や川など自然のなかで見かける。子供のころリンゴの木のそばでしゃべってるヤツがいたけど、声はちいさくて聞き取れなかった。ふわふわ飛んでるだけだからはねのついた虫と大差ない。

 他の人間には見えなくて存在を無視していた。

人間といっしょにいるのはめずらしい。リンゴ畑にいたヤツより動きがスローな妖精は、一生懸命いっしょうけんめいにラルフの後を飛ぶ。立ち止まったときにぶつかったりして、ちょっとドジっ子だ。ラルフは気づくそぶりさえ見せない。

(あ~あ、見えてないのになぁ……)

 森の野鳥とおなじでピカピカ光るものが好きなのかもしれない。ラルフが兵舎にいる時は見かけるようになった。いつもバカのひとつ覚えみたいに彼の後を追ってる。

 しあわせなのだろうか、妖精の考えてることは分からない。



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