精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー

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閑話

よいこのクリスマス 下

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 次の日、広場は観光スポットと化し、装飾された木も増えていた。朝市の広場に面し、買い物をすませた人々はツリーを見物している。午後からラルフといっしょに見てまわった。

 ミナトの手が冷えないようにラルフはずっと握っていた。

 テーブルを並べたスペースもあり、ワインを売るテントからいい香りがただよう。ハチミツやローリエ、ナツメグ、りんごや柑橘系かんきつけいのスパイス入りのワイン壺が焚火台たきびだいで温められていた。テントの前は人だかりで盛況してる。

 人だかりの中から出てきたツァルニに声をかけられた。人だかりは見知った顔が多く、非番ひばんの兵士たちがホットワインへむらがっていた。

「ラルフ、ミナト! 」

 呼ばれてふり向くと、馬をつないだヒギエアが歩いてくる。

「ヒギエア、どうしてここへ!? 」

「ミナトがこっちで面白いことをしてるって手紙をもらってね。いても立ってもいられなくて来てしまった」

 彼女へ手紙を送った覚えはない、ラルフが口笛を吹くマネをしてて送った犯人はすぐに判明した。楽しげに話すヒギエアをクリスマスツリーまで案内する。

「あらまあキレイ! ミナトはユールを知ってるの? 」
「ユール? 」

 ヒギエアの故郷こきょうでもかしの木などへ飾りつけをする。冬至とうじの祭りで故郷の神々へささげものをして太陽の復活を祈るという。ラルフたちの祭りとは異なり、神様もちがうけど祈る目的はおなじみたいだ。そこにジーザスの面影はなかった。

「オゥ、ジーザス。クリスマスじゃなかったの!? 」

 背後でシヴィルがなげき、ホットワインをあやうく手から落としそうになっていた。

「シヴィル、いまクリスマスって言った? 」
「ううん、人混みクルシイデスって言ったよ! 」

 聞いたことある単語が聞こえたけど、シヴィルは首を横へふって否定する。手に持っていたホットワイン2つを押しつけ、再び人だかりへ消えた。ツァルニは彼を追いかけ、ヒギエアもホットワインを買いにいく。

「ミナト、いてる席で飲もう」

 クリスマスツリーの前でカップを持ったまま取り残されていたら、ラルフがほほ笑んだ。

 アーバーが手招てまねきしてテーブル席へ腰をおろした。ホットワインを買いに行ってたヒギエアやツァルニたちも戻り、おしくらまんじゅうのように座る。ホットワインで体は温かいけど、毛皮ラルフとくっつけば尚更なおさらあったかい。

「ここのおんワイン、甘めなのね」
「はちみつ多めだから私好みだ。ミナト、ミラたちのおみやげも買って帰ろう」
「へへへ~、ツァルニと間接かんせつチュウ」
「シヴィルッ、自分のワインを飲めっ! 」

 テーブルは様々な声があふれかえる。こっちへ手をふるエリークの姿も見かけた。家族と来ていたが、うしろを飛びまわる白い光りは3つくらいに増えていた。





 ランプの明かりが中庭のクリスマスツリーを照らす。ソファーへ横になってながめたら、ラルフが背中へおおいかぶさった。

「窓をあけていたら寒くないか、ミナト? あっ、腰ひもがあんなところに!? 」
「金糸が入ってキラキラしてるからつい……」

 中庭のツリーへ金糸と赤い腰帯こしおびを巻きつけていた。飾りつけの道具をさがしてる時に草木の妖精が持ってきたものだった。笑ったラルフはミナトを持ち上げてソファーへ寝そべる。彼へ乗るかたちになってミナトの顔は赤くなった。

 一緒の毛布にくるまっていると、正面のソファーでリラックスしていたヒギエアが口をひらく。

「ちょっとあんたら、イチャイチャしすぎ。私もいるのよ」
「ヒギエアめ! ミナトと私の仲を引きこうというのか? そもそも泊まるとは聞いてないぞ」
「しょーがないじゃない、飲みすぎちゃって落馬したら大変でしょう? 」

 毛布のすきまから黄金色の目をのぞかせたラルフがうなった。動じないヒギエアはワインを飲み干す。酔っぱらい達の攻防を眺めていたら、ラルフが思い出したように起きあがる。

「『サンタサン』の話をしていただろう? 私もミナトへ贈り物があるんだ! 」

 ラルフからの贈りもの、期待に胸をふくらませ受けとった。

 それは硬くてゴツゴツした石像。ミナトは髭モジャの神像しんぞうをプレゼントされた。

「……思ってたのとちがう」
「ミッミナト!? やっぱり女神像めがみぞうのほうが良かったか!? 」

 腹をかかえたヒギエアがソファーへして大笑いしていた。





――――――――――

 読んで頂きありがとうございます。
見直していたら季節ものが書きたくなってアップしました。





 おまけ

 暦のはなし

 紀元前3000年ごろエジプトで農耕に適した季節を知るために生まれたシリウス暦(太陽暦)、もっとも日の長い夏至の日が1年の始まり、季節が変化する4つの時期に分けて種まきや収穫を管理していました。

 古代ローマではロムルス暦が使われていて1年は10カ月で冬の期間はわりと適当でした。

Martius:軍神マルスの月
Aprīlis:女神ウェヌスの月
Māius:豊饒の女神マイアの月
Jūnius:結婚を守護する女神ユーノーの月
quīntus:5番目の月
Sextīlis:6番目の月
September:7の月
Octōber:8の月
November:9の月
December:10の月
冬:約61日くらい



 ロムルス暦では1年の始まりは暖かくなる現在の3月(Martius:マーチの語源、戦の神マルス)でした。

 紀元前800年ごろローマでも太陽暦が取り入れられましたが、数百年単位で運用していると実際の太陽の運行とズレが出ます。

紀元前153~45年のあいだの暦の大改造により冬は2つに分けられて現在の1月と2月ができました。年はじめは1月(Jānuārius:ジャニュアリーの語源、門の守護神ヤヌス)、2月は戦死者の慰霊祭の主神Februus(フェブルウス)です。紀元前45年ごろローマ皇帝ガイウス・ユリウス・カエサルがユリウス暦を導入しました。

 現行の太陽暦(グレゴリオ暦)は1500年代にローマ教皇がユリウス暦を改良して導入したものだと云われています。1年12カ月365日、4年に1回調整のため366日になります。うるう年が2月にあるのは、3月が始まりだった古代ローマのなごりです。

 日本では戦国時代キリシタンのあいだで利用されはじめ、1872年に太陰暦を廃止して太陽暦を導入しました。


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