上 下
42 / 43

第40話 シュナイダー伯爵令嬢ユリア

しおりを挟む
 翌日の昼休み。
 廊下を歩いてたら、急に壁がぬかるんで誰かに引きずりこまれた。

 な、何が起こったんだ?!

「驚かせてしまってごめんなさいね。あまり人目につくと困るから、拉致らせてもらったわ」

 そう簡単に拉致なんて出来るのか!? 目の前には、昨日生徒会室で会ったシュナイダー伯爵家のユリア様が立っていた。

「あ、い、いえ……」

 まぁ確かに、こんな美人に外で声かけられたら目立つよな。

 それにしても、何だこの部屋は!
 魔法で作られた空間なんだろうが、古今東西の人を痛め付けるであろう道具が揃ってるぞ。まるで人を拷問するのが目的のような……え、まさか俺、今から拷問されるのか?!

「ああ、気になる? 興味があるなら、使ってみてもいいのよ?」

 俺の視線の先を見て、ユリア様が声をかけてくる。

「い、いえ! あ、あの、それで俺に、どのようなご用件でしょうか?」
「お礼を言いたかったのよ」
「お、お礼ですか?」

 俺、別にユリア様にお礼を言われるような事なんて何もしてないと思うんだが。逆に、婚約者の悪趣味を暴いて責められる立場じゃないのか? え、じゃあやっぱここに拉致らたのは、お礼という名の拷問されるためなのか?!

「ふふふ、またシリウス様を調教できるんですもの! 楽しみだわ」

 えっと、うん、どこからつっこめばいいのだろうか。『また』っていう所か? それとも『調教』って所か? 怖くて聞けねぇよぉおおお!

「ダメな男を調教するのって楽しいわよね。最近は目立ったこともしてなくて、つまらなかったのよ。でもまたあのクズを調教できるから楽しみだわ。それも全て、秘密を暴いてくれた貴方のおかげね。感謝してるわ」
「は、はぁ……お役に立てたのなら、光栄です」

 その何かよく分からないの拷問器具を磨きながら言うの、止めてください。まじで怖いです!

「そういえばルーカス、貴方は光魔法の使い手らしいわね? しかも、何でも創造して作り出せるんだとか?」
「あ、はい! 創造すればそれを具現化する事ができます」
「そろそろ、調教に使う新しい拷問器具の開発をしたいと思っていたのよ。何かいいアイデアはないかしら?」
「ご、拷問器具の開発ですか?!」

 な、なんて相談をしてくるんだ、この方は!

「ええ。私の生家シュナイダー伯爵家では、貴族の乱れた風紀を正す役目を仰せつかっているの。だからそれにそぐわない行為を行う貴族には、少しばかり痛い目に遭ってもらって、正しい道へ進めるよう調教をして更生させているのよ。痛みを味わえば、二度と悪さなんてしたくなくなるでしょ?」
「そ、そうですね」

 貴族限定でよかった。俺にあの器具が使われることがないと、安心できたから。

「えっと、申し訳ありません。俺には調教をした経験がないのでイメージを掴みにくくて……」
「だったら、試してみる?」

 や、やめてくれー!
 考えろ、俺! どうすればこの場を穏便に離脱できるのか、想像するんた!

 シリウスは煩悩の塊のような奴だ。誰にだってそのような欲望はあるだろうけど、それが多分人一倍強いんだろう……そうか、それならその興奮する対象に苦痛を抱くようになればその煩悩も消えるんじゃないか?

「……い、いえ、思いつきました! シリウス様の強い煩悩を消し去るには、その興奮する対象に対して興味を失くさせればよいのではないかと思います」

「そうね。ではどうやって、その強すぎる欲を消し去るつもりなの?」

「強制的に飽きさせる、そして別のものに興味を抱かせるのが良いと思います」

 俺は創造魔法で、女性の形をした人形とゴーレムを作り出した。

「例えばシリウス様が、この人形の女性的な部分に触れたとします。そこで手がくっつき、飽きるまでその部分を揉まないと解放されない仕掛けを作るのなんていかがでしょうか? 最初は喜んで揉んでいたものが、次第に苦行に変わっていき触るのさえ嫌になるでしょう。その苦行を、このゴーレムに助けさせるのです。そうすれば耐え難い苦行から救ってくれたゴーレムに、シリウス様の興味は移るのではないでしょうか?」

 恐る恐るユリア様の反応を窺うと、何故かとてもキラキラとした眼差しを向けられた。あ、やばい。直感的にそう感じた時にはすでに遅し──

「これは驚いたわ。ルーカス、貴方には拷問吏としての才能があるようね。どうかしら、ここを卒業したらシュナイダー伯爵家で働かないかしら? 柔軟な発想力に優れた創造魔法、とても気に入ったわ。厚待遇を約束するから是非いらっしゃい」

 とんでもない提案をされてしまった。
 拷問吏なんて、なりたくねぇよ!

「い、いえ……申し訳ありませんが、俺には大切な夢がありますので……」

「そう……残念だわ。気が変わったらいつでも声をかけてちょうだいね。私はいつでも大歓迎よ」

「お、恐れ入ります」

 ふぅ、やっと解放された。なんかどっと疲れたぜ。
 でも、俺の魔法を純粋に認めてもらえたのは、少し嬉しくもあったな……でも正直、寿命が縮みそうだからユリア様にはあまり関わりたくねぇ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか

鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。 王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、 大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。 「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」 乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン── 手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。

私の婚約者は真実の哀に目覚めた

しげむろ ゆうき
恋愛
婚約者のケーン様が卒業パーティーに伝えたい事があると私に言ってきた。 「ユリアン、私は真実の哀に目覚めた……」  私はその言葉を聞き覚悟をきめるのだった。 ※タグを確認してから見て下さい!  ギャグです!

【短編集】ゴム服に魅せられラバーフェチになったというの?

ジャン・幸田
大衆娯楽
ゴムで出来た衣服などに関係した人間たちの短編集。ラバーフェチなどの作品集です。フェチな作品ですので18禁とさせていただきます。 【ラバーファーマは幼馴染】 工員の「僕」は毎日仕事の行き帰りに田畑が広がるところを自転車を使っていた。ある日の事、雨が降るなかを農作業する人が異様な姿をしていた。 その人の形をしたなにかは、いわゆるゴム服を着ていた。なんでラバーフェティシズムな奴が、しかも女らしかった。「僕」がそいつと接触したことで・・・トンデモないことが始まった!彼女によって僕はゴムの世界へと引き込まれてしまうのか? それにしてもなんでそんな恰好をしているんだ? (なろうさんとカクヨムさんなど他のサイトでも掲載しています場合があります。単独の短編としてアップされています)

おんな戦闘員に憧れて

ジャン・幸田
大衆娯楽
 私、就職希望です、おんな戦闘員に! そう思って拉致してもらって脱げない真っ黒な全身タイツ姿にされた私は、まったりとした戦闘員ライフを満喫するのであった! *小説になろうさんでも連載しております。

斧で逝く

ICMZ
SF
仕事なんて大嫌いだ――― ああ 癒しが必要だ そんな時 満員電車の中で目にしたビデオ広告 VRMMORPG ランドロンドオンライン やってみるかなーー 使うのは個人的に思い入れがある斧を武器としたキャラ しかし 斧はネタ武器であり 明らかに弱くてバグってて その上 LV上の奴からPKくらったり 強敵と戦ったり 一難さってもまた一難  それでも俺にはゲーム、漫画、映画の知識がある、知恵がある 人生経験者という名の おっさん なめんなーー どんどん 明後日の方向にいく サクセス ストーリー 味付け        | 甘め ゲーム世界      | ファンタジー  ゲーム内 環境    | フレンドリー  アプデ有(頻繁) バーサス       | PVE,PVP ゲーマスと運営    | フレンドリー 比率 ゲーム:リアル | 8:2 プレイスタイル    | 命は大事だんべ キーワード      | パンツ カニ 酎ハイ でぃすくれいまー ヒロイン出てから本番です なろう/カクヨム/ノベルUpでも掲載しています この小説はスペースを多用しています てにをが句読点を入れれば読みやすくなるんですが、 会話がメインとなってくる物で その会話の中で てにをが をちゃんと使いこなしている人、 人生で2人しか出会っていません またイントネーション、文章にすると難しすぎます  あえてカタカナや→などをつかったりしたのですが 読むに堪えない物になってしまったので 解決するための苦肉の策がスペースです   読みやすくするため、強調する為、一拍入れている  それらの解釈は読み手側にお任せします

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

アルテミスの着ぐるみ美少女たち

ジャン・幸田
青春
 様々なコスプレイベント会場でレイヤー、特に着ぐるみ美少女の撮影を趣味としている橘高弘樹はある時、長身の美少女「大岩基美」をしているレイヤーに魅了された。  そのレイヤーの正体は幼馴染で”元恋人”の村城志桜里だった。彼女の”着ぐるみマスター”である謎の中年女性・成海に誘われ向かった先で弘樹は脅威の体験をすることになった!  弘樹はヒロインの真里亜の内臓になって志桜里が内臓になっている基美と百合百合な事をしてほしいというものだった。志桜里との関係はどうなってしまうというのだろうか? (某掲示板でアップしたもののリテイクです。その時のものより大幅に加筆し設定は少し変更しています)

処理中です...