おーばー!〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生前編】

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強さの秘訣と憧れ

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 三日目の練習は技術的なトレーニングは行わなかった。二日目の練習で試合を行なったため、体を動かしながらも楽しみながら交流を深めるという目的でバスケやサッカーをして負ければ罰ゲームで筋トレという練習だ。

 神代先生の目的としては、常に動いているわけではないスポーツが野球のため、常に動いて考えるバスケやサッカーで体力的な面や咄嗟の判断を養おうということらしい。

 実際どれほどの効果があるのかは疑問だが、一応試合の翌日ということで休暇を取りたいという意図もあるため、特にピッチャーは肩を休めるのに良い機会だった。

 人数的に明鈴は珠姫を含めて十五人、水色と光陵は各十八人ずつ、鳳凰は二人のため、足りない場合は巧やマネージャーが加わった。マネージャーは水色が二人、光陵が一人、明鈴は佐久間由衣が交代だったが、巧に関してはほぼ出ずっぱりだった。

 三日目はそんな練習だ。巧は選手同様動き回ったこともあって疲れたのだ。早く寝たいというのが本音だ。しかし……。

「なあー、巧。聞いてる?」

「はい、聞いてますよ」

 酔っ払いの相手をしていた。神代先生の「監督組で飲みに行こう!」という提案に巧も強制連行されたのだ。場所は近場の居酒屋だが、もちろん巧は未成年なので酒を一滴も飲んでいない。

 美雪先生と佐伯先生は早々と宿舎に戻ったのだが、それもあって巧は戻れなくなっていた。一応十時前には退店しないと高校生の巧は問題になるため、あと一時間ほど辛抱すれば解放されるのが救いだ。

「それでさぁ……」

 神代先生は高校時代の話をしている。要約すると、神代先生は高校時代に黄金期だった明鈴に負けたということらしいが、もうすでにこの話は三回聞いた。

「なぁ、聞いてんの?」

「聞いてますよー」

 巧は神代先生の奢りということでここぞとばかりにご飯を食べながら適当に相槌を打っていた。ただ、食べ盛りの巧としては酒の肴よりもラーメンや牛丼のようがガッツリしたものでなければ腹は満たされない。それでも焼き鳥や枝豆などを摘みながら炭酸ジュースを飲む。酒飲みはこんな気持ちなのだろうか。

「そういえば神代さんに聞きたいことがあるんですけど」

「お? なんだ?」

「光陵って去年は甲子園に行くほどの強豪ですけど、そもそものメンバーも別に大半は日本代表に選ばれているような人たちじゃないですよね? どうやってそのメンバーで甲子園に行ったんですか?」

 以前に光陵の経歴を聞いてから気になっていた。実際に去年できた新設校で当時は一年生が九人、二年生が一人、そのメンバーだけで甲子園に行くのは奇跡みたいなものだ。どうやってチームを強くしたのかという秘訣も気になった。

「んー、埋もれてた才能を拾ったって言えばいいのかな?」

 酔っ払っている神代先生は顔が赤いままだが、先ほどよりも真剣な表情に変わる。

「鳳凰のとこの伊奈梨とか似たような例だけどさ、あいつのフォークは取れる人が限られてる。そのフォークも投球数が少なかったけど封印してたら日本代表はないよね。あいつはシニアじゃないけど中学校自体が普通だった上に伊奈梨が加わったからそれなりに勝ち進めて、勝った分伊奈梨が多く登板したからたまに投げたフォークが評価されて日本代表まで選ばれた。でもうちの子らはそこまでのチームにいなかった」

「チームが弱くて日の目を見ることのなかった選手をスカウトした、と?」

「そうそう。才能はあるのにチームに弱くて低い評価のままの子とか、うちの咲良とか奏みたいにそもそも尖った奴らでチームから弾かれた子とか」

 セカンドの六道咲良とショートの乙倉奏は確かに特徴的と感じた。咲良は試合の時もそうだったがセカンドなのに左投、奏はボールを待つ時も常にリズムを取っているように動いており、ボールの捌き方も独特だった。

「わかりやすいから一年生の二人を例に出したけど、二年生の子らもそういう実力はあるけど一般的に見ると変わった野球をする子たちもいるんだよね。まあ、そういうこととか、埋もれてた子とか、あとは普通に日本代表レベルの子を集めたって感じだよ」

 明鈴でいうと黒絵が似たタイプだろうか。現時点では荒削りだが、球速自体はプロと比べてもやや劣っている程度だ。伊澄や陽依のように強いチームにいたわけでもなく、中学校の生徒が少ないことで野球部の人数も足らずに公式戦にも出たことがないと聞いているので、そういう選手をスカウトした結果ということだ。

「ちなみに伊澄と陽依も一応誘ったけどね。ただチームのコンセプトとしては違ってたから期待してなかったけど案の定断られたよ」

「コンセプト?」

「そうそう。教育者として一人の生徒に肩入れするのは違うと思うけど、私が光陵の監督になったのは、琥珀がいたからなんだよ」

 この言葉だけで神代先生は琥珀一人に肩入れしているというのはわかる。それでもどういう意味かわからない。

「どういうことですか?」

「光陵は琥珀のために作ったチームだってこと。他の子らもそれを理解している」

「……ますますわかりません」

「私はスカウトする時に絶対言ってるんだけど、琥珀が入部して引退するまでの約二年半は琥珀を中心にしたチームにするってこと。つまり琥珀を最高の状態でプロに送り出すまで、四番にもエースにもなれないってわかった上でみんな私に付いてきてるんだよ」

 野球をやっている人全員ではないが、強豪校に入る連中はその学校のレギュラーだったり、エースや四番、そういうチームの中心を目指す人が多い。もちろん中には切り込み隊長である一番や主軸の三番や五番など目標は様々ではあるが、自分よりも絶対的に優先される存在があるのは複雑な心境だろう。

「もちろん他の子たちの将来も考えているよ。甲子園に連れて行くつもりだし、その子が望めばプロ入りでも他の進路でも可能な限り力になる約束はしている。まあプロ入りはプロチームがドラフトで選ばないと無理だけどね。でも、正直琥珀は四番よりも一番とか三番の方が合ってると思うから琥珀よりも適正な子がいたらその子を使うよ。競争心を煽ってるところも正直あるよ」

 巧としてはやや複雑な心境ではあったが、方針としては一理あった。コロコロとチームの中心が変わるよりもチームの中心が固定されていてその位置を奪うことを目標にした方が成長する。明鈴であれば夜空のように基本的には一年スパンで中心が変わるものだが、光陵はそれが三年間琥珀という話だ。

「それでも、なんで琥珀にそこまでするんですか?」

 それは純粋な疑問だ。琥珀は確かにすごい選手だが、例えば夜空と比較するとやや劣っている。もちろん選手によって長所や短所はあるが、琥珀よりも優れている部分を持つ選手はいくらでもいる。

「私が憧れているから、かな」

「憧れ……」

「子供がプロ野球選手を見ていいな、すごいなってなる感じ?」

 最初はどういうことかと思ったがその言葉を聞くと巧は理解した。こういう選手になりたい、自分にはないものを持っているからこの選手が好きというのは巧自身にもある。

「初めて見たのは琥珀が小学生四年生の頃、私もまだ二十歳の頃だね。プレーとか佇まい、あとは琥珀の才能にお手上げな指導者たちを見て、私がこの子を育てたいって思ったよ」

 もう六年も前の話だ。小学生高学年の頃も巧と琥珀は共に日本代表に選ばれたが、当時は面識はなかった。しかし、中学で知り合った際に小学生の時点で孤立していたことは聞いていた。

「このまま適当に野球をしてても琥珀はいずれプロになるのは確信してた。でもずっと孤独なままじゃなくて、チームで野球をする楽しさを教えてあげたかった。もちろん、監督をすることになって他の子たちにも後悔はさせるつもりはないよ」

 正直、琥珀中心のチームと聞いて嫌な人なのかと少し疑ってしまった。しかし、琥珀のことを考えた上で他の選手にも気をかけているということを聞いて自分の考えが間違っていたのだと感じた。

「なあ、巧」

「なんですか?」

「琥珀と仲良くしてくれてありがとう」

 まだ二十代というのにまるで琥珀の親でもあるかのように優しい目をしていた。

「別に、仲良くしたいからしているだけなので」

 巧は少し照れ臭くなり、神代先生から目を逸らした。

「それと、ちょっといいかな?」

「なんですか?」

「飲み過ぎて気持ち悪い……。これ、勘定済ませといて……」

 神代先生はそう言うと財布を渡し、トイレへとフラフラと歩いていった。時刻なすでに九時半過ぎ、少し早めではあるが帰るのにはちょうどいい時間だ。

「ごゆっくり……」

 良い話をしたかと思えば最後は締まらない神代先生に呆れつつも、巧は支払いを済ませ、神代先生がスッキリして戻ってくるまで十分ほど待っていた。
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