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第6話 約束の約束

引き出される記憶 その四

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『ねぇ、直哉君。これ見て?お花で作った冠よ。どう?似合ってるかな?』
『──ちゃんによく似合ってるよ』
「ありがとう、直哉君にも・・・・・・はい指輪をあげるわ』
『いいの~、ありがとう!大切にするね』
『うんっ!それでね・・・・・・直哉君、あのね・・・・・・私と・・・・・・大きくなったら私と結婚しようね?』
『うんっ、絶対するよ。──ちゃんと結婚する!』
『約束だよ?絶対に忘れないでね』


 直哉はその少女の名前を思い出した。何故今まで忘れていたのだろうか、そして忘れてしまっていたのか。直哉はその少女ともう一度会う事を心に決めたのだ。

「みんな聞いてくれ・・・・・・分かったんだよ。思い出したんだよ。約束も・・・・・・約束した女の子の名前も全て」
「え?本当なの直哉。それなら、その子の名前は・・・・・・」
「まずは、僕がその子と話すよ。そして、きちんと謝らなくちゃいけない。それが終わったらみんなにも話すから・・・・・・さ」

「直哉君が言うなら・・・・・・私はそれに従います」
「そうね、直哉君が決めたのなら。でも、忘れてたなんて知ったらその子怒るんじゃないのかな?」
「それは大丈夫・・・・・・だと思うよ。明日の十時にこの場所でその子と会う事にする」
「でも、直哉。どうやってその子に連絡するのよ」
「大丈夫、それも考えてあるから。手紙・・・・・・ちゃんと出すからね」

 直哉はその子の為だからと言って、絶対に覗きに来ないよう念を押す。

 優子はその子が誰なのか、直哉がどう思っているのか気にはなったが、素直に直哉の言う通りにしたのだ。

 みんなが帰った後、直哉はその少女に手紙を書く為部屋に篭っていた。どう書けば良いのか、何を書けば良いのかと色々悩んでいたが、素直な文面だけ書いて後は直接話すと決めた。


『──さんへ。明日の十時に以前住んでいた場所で、大切なお話しをしたいので来ていただけませんか?僕は貴方が来るまでずっとお待ちしております。直哉より』

(後はこの手紙をポストに入れて終わりかな・・・・・・。来てくれるよね・・・・・・、来なかったらどうしよう・・・・・・)

 不安を抱えながらも、直哉は暗くなった街をその少女が住む家まで自転車で向かったのだ。

 そして、ポストに手紙を投函すると祈りを捧げてから、暗闇の夜道を引き返し自分のアパートへと戻って行ったのだ。
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