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第6話 約束の約束
引き出される記憶 その三
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優子、紗英、亜子が直哉のアパートに来たのは、この騒動が終わってからの事であった。
「そんな事があったんだねぇ。葵ちゃんも諦め悪いからね」
「この旅の前に散っていった・・・・・・葵さんの思いに報いる為にも・・・・・・直哉君の記憶を呼び覚ましましょう」
「いや、葵ちゃん死んでないからね?普通に仕事に行ってるだけだからっ。紗英ちゃん、拝まないでぇ~。ちゃんと生きてるからぁ~」
天を仰ぎ祈る紗英を必死に止めようとする優子。そんな二人のコントをしばらく見た後で、直哉の実家へ向かう為にアパートを後にしたのだ。
直哉の実家はアパートから電車で二駅先にある。駅を降り商店街を抜け、そこから十分程歩くと実家に辿り着くのだ。優子の家は隣りに建っており、昔から家族ぐるみでの付き合いがあった。
「直哉君の実家・・・・・・。お母様に挨拶しなくちゃ。紗英、ここが正念場だからね、失敗しないようにしないと」
「紗英ちゃん、気合い入れているところで悪いんだけど・・・・・・、直哉の実家には入らないからね?」
「え?えっえ・・・・・・はぅぅ・・・・・・」
優子につっこまれたれた事で、心の声が漏れた事に気が付き、顔を真っ赤にし萎んだ風船の様にしゅんとしてしまった。
「ところで直哉君は、幼い頃はどの辺で遊んでいたの?」
「え~と、大体優子と一緒だったんだよねぇ。だから・・・・・・あっ、そういえば・・・・・・優子の家が一週間ぐらい海外旅行に行った時があったなぁ」
「そういえばそんな時もあったよね。あの時は直哉が『離れるのヤダー』って泣いてたよね」
「よ、よく覚えているよね・・・・・・。確か・・・・・・その後何かあったような・・・・・・」
徐々に当時の記憶が鮮明に蘇ってくる。直哉はあの時、しばらく優子と会えない事が悲しく一人で泣いていたのだ。泣きながら街を歩き気がつくと・・・・・・。
「そうだ・・・・・・思い出したよ。あの時泣きながら街を歩いていたら、知らない場所に来てしまって・・・・・・道端でうずくまってしまったんだ」
直哉は脳裏に浮かんだ景色を頼りに、その場所へと足を運んだのだ。自然と足が動き出し、まるでその場所へ導かれる様であった。
「ここ・・・・・・覚えている。特徴的な家だから、当時変な家って思ったんだ。あっ、そうこの道を曲がった先で疲れてもう歩けなくなったんだ」
直哉はまるで幼い子どもの様にその場所へ突然走り出した。優子達もその姿を見失わない様に必死になって追いかけていったのだ。
優子達が息を切らしながら追いつくと、何もないただの空き地の真ん中で立ちすくんでいる直哉の姿があったのだ。そこに何かがあったようで、直哉は空き地の周囲を見回していた。
「直哉・・・・・・?ここに何かあったの?」
「優子・・・・・・、思い出したよ。全部思い出したんだ。何で忘れていたんだろう」
「直哉・・・・・・君?」
「そう、そうだよ。あの時僕は・・・・・・そこの道端で泣いていたんだ。そしたら、ここに住んでいた女の子が慰めに来て・・・・・・」
『どうしたの?悲しい事でもあったの?』
『うん、仲の良かった子にしばらく会えなくなったんだ。そしたら、悲しくて気がついたら知らない場所に来ちゃったんだ・・・・・・ぐすん』
『よしよし、大丈夫よ。大丈夫、もう怖くないから、寂しくなんてないから・・・・・・だから泣かないでね』
『うん、ありがとう。僕は直哉、神崎直哉だよ』
『私はね──っていうの。お母さんに言って、直哉君の家探してもらうから、家の中で待ってようよ』
その少女は白いハンカチをポケットから取り出すと、直哉の涙を優しく吹いてあげたのだ。
そして、直哉の手を引っ張ると家の中に案内し直哉の母親が迎えに来るまで二人であそんだのだ。
その後も直哉は、その少女の家で遊ぶようになり二人は仲良しとなった。その日は近くの広場で花を詰んで遊んでいたのだった。
「そんな事があったんだねぇ。葵ちゃんも諦め悪いからね」
「この旅の前に散っていった・・・・・・葵さんの思いに報いる為にも・・・・・・直哉君の記憶を呼び覚ましましょう」
「いや、葵ちゃん死んでないからね?普通に仕事に行ってるだけだからっ。紗英ちゃん、拝まないでぇ~。ちゃんと生きてるからぁ~」
天を仰ぎ祈る紗英を必死に止めようとする優子。そんな二人のコントをしばらく見た後で、直哉の実家へ向かう為にアパートを後にしたのだ。
直哉の実家はアパートから電車で二駅先にある。駅を降り商店街を抜け、そこから十分程歩くと実家に辿り着くのだ。優子の家は隣りに建っており、昔から家族ぐるみでの付き合いがあった。
「直哉君の実家・・・・・・。お母様に挨拶しなくちゃ。紗英、ここが正念場だからね、失敗しないようにしないと」
「紗英ちゃん、気合い入れているところで悪いんだけど・・・・・・、直哉の実家には入らないからね?」
「え?えっえ・・・・・・はぅぅ・・・・・・」
優子につっこまれたれた事で、心の声が漏れた事に気が付き、顔を真っ赤にし萎んだ風船の様にしゅんとしてしまった。
「ところで直哉君は、幼い頃はどの辺で遊んでいたの?」
「え~と、大体優子と一緒だったんだよねぇ。だから・・・・・・あっ、そういえば・・・・・・優子の家が一週間ぐらい海外旅行に行った時があったなぁ」
「そういえばそんな時もあったよね。あの時は直哉が『離れるのヤダー』って泣いてたよね」
「よ、よく覚えているよね・・・・・・。確か・・・・・・その後何かあったような・・・・・・」
徐々に当時の記憶が鮮明に蘇ってくる。直哉はあの時、しばらく優子と会えない事が悲しく一人で泣いていたのだ。泣きながら街を歩き気がつくと・・・・・・。
「そうだ・・・・・・思い出したよ。あの時泣きながら街を歩いていたら、知らない場所に来てしまって・・・・・・道端でうずくまってしまったんだ」
直哉は脳裏に浮かんだ景色を頼りに、その場所へと足を運んだのだ。自然と足が動き出し、まるでその場所へ導かれる様であった。
「ここ・・・・・・覚えている。特徴的な家だから、当時変な家って思ったんだ。あっ、そうこの道を曲がった先で疲れてもう歩けなくなったんだ」
直哉はまるで幼い子どもの様にその場所へ突然走り出した。優子達もその姿を見失わない様に必死になって追いかけていったのだ。
優子達が息を切らしながら追いつくと、何もないただの空き地の真ん中で立ちすくんでいる直哉の姿があったのだ。そこに何かがあったようで、直哉は空き地の周囲を見回していた。
「直哉・・・・・・?ここに何かあったの?」
「優子・・・・・・、思い出したよ。全部思い出したんだ。何で忘れていたんだろう」
「直哉・・・・・・君?」
「そう、そうだよ。あの時僕は・・・・・・そこの道端で泣いていたんだ。そしたら、ここに住んでいた女の子が慰めに来て・・・・・・」
『どうしたの?悲しい事でもあったの?』
『うん、仲の良かった子にしばらく会えなくなったんだ。そしたら、悲しくて気がついたら知らない場所に来ちゃったんだ・・・・・・ぐすん』
『よしよし、大丈夫よ。大丈夫、もう怖くないから、寂しくなんてないから・・・・・・だから泣かないでね』
『うん、ありがとう。僕は直哉、神崎直哉だよ』
『私はね──っていうの。お母さんに言って、直哉君の家探してもらうから、家の中で待ってようよ』
その少女は白いハンカチをポケットから取り出すと、直哉の涙を優しく吹いてあげたのだ。
そして、直哉の手を引っ張ると家の中に案内し直哉の母親が迎えに来るまで二人であそんだのだ。
その後も直哉は、その少女の家で遊ぶようになり二人は仲良しとなった。その日は近くの広場で花を詰んで遊んでいたのだった。
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