『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼

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「真実」

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「真実」

 寝ぼけることなく、目を開いたルメイは自分の頭が稀世の膝の上にあることに気づき、「すっく」と体を起こし、稀世に正対して正座をして頭を下げた。
「すみません、出場レスラーさんに対して失礼してしまいました。本当にすみません。決していやらしい気持ちはありませんでした。そこだけは信じてください。」
と土下座する大手アメリカ企業のCEOに対し、稀世は「にっこり」とほほ笑むとゆっくりと尋ねた。
「短い時間でしたけど、ゆっくり寝られました?」
 少しはにかんだ表情で、ルメイは答えた。
「聖母の膝の上で眠っている夢を見ました…。こんなに安らいだ気持ちになったのは何年ぶりかわかりません。ありがとうございました。
 大会主催者としては、稀世だけを特別扱いするわけにはいきませんが、困ったことがあればいつでも私に言ってください。開会式を見届けたら、東京、香港、上海と周り、準決勝には大阪に戻ってきます。
 稀世の健闘を心から祈ってますね。じゃあ、ミスター太田が心配しても困るので「大事な話・・・・」を済ませたら、デザートを食べてハイヤーを手配しましょう。」
 
 「えっ、それで終わり?なんや、料亭の奥に布団が二枚敷いてあって、提灯の横に着替えのピンクの肌襦袢がかけられてて、稀世ちゃんがルメイはんに帯を引っ張られて「あーれー」ってくるくる回る話はあれへんのかいな?」
 真剣な顔をして問いただす直に「あるわけあれへんやん!」と速攻で返した稀世の目に、三朗の笑顔が飛び込んできた。
「稀世さんの優しさが溢れる良いお話でした。ルメイが警察で悪びれることなく取り調べに応じてる背景に稀世さんの手紙があったって聞いた時は「KIYOMANIA」って言ってはったんでただのレスラーとしての稀世さんの「ファン」やと思ってたんですけど、そうじゃなくて「人間・安稀世」の「ファン」ってことやったんですね!」
 優しく語りかける三朗に稀世は思わず赤面してしまった。

 「いや、その前に「大事な話」って言うのはなんやったんや?直さんの「H」な妄想と違って、私はそっちを聞きたいわ!」
とまりあが首を突っ込んできた。
 稀世はまりあに正直に話した。
「間接的にと言うかオブラートにくるんだ表現をされたんでアホな私にはつかみかねたんですけど、太田さんが会話を分析するには、ルメイさんは「ガチプロレス」ではなく「ショー的プロレス」を望んでて、その理由が「ガチ勝負」は「ケガ」がつきもので、時として「有能な才能タレント」を潰しかねない。
シナリオがあれば、客も喜び、選手や団体もより儲かり、ウィンウィンの関係になれるから「UCWW」の用意する「シナリオ」に乗れば大きな資産を手に入れることができる。「その力がブックメーカーの自分にはある。」ということやったみたいです。今、思い起こせばレスラーの身体と収入を思いやってくれてるルメイさんの「プロレス愛」やったんかもしれませんね…。
まあ、太田さんがこっそり仕掛けた各選手の控室の盗聴器によると、私の初戦相手の大手団体「ワールドプロレスリング・ヴィーナス」のエースレスラーが得意の蹴り技をろくに出すことなく簡単に私にフォールされたんは、私より断然強い知名度とファンの多さから集まる掛け金を担保に「負ければ賞金以上にインセンティブを払う」っていう「裏契約」があって、団体の運営資金の為にわざと負けたってことです…。」

向日葵寿司の中は沈黙の空気に包まれた。おそらく、賞金以上の「インセンティブ」が「ルメイ社」から提示があり、全国規模団体のエースとして「名誉」よりも「インセンティブ」を取らざるを得ない女子プロレス団体の資金面の「現実」を知ることになった。
その後、ルメイは大阪を離れ、大会主催者のマネージャーから稀世にあった電話でアメリカでは先行して実施されている「ジャンプアップ式」ブックメイクのプランの為「40分以上闘ってください。そして勝ち抜いて下さいね。」のUCWWの描くシナリオの「メッセージ」を稀世が理解しているものと思っていたマネージャーに「ガチでやります」と答えた。
そんな稀世に対し、万一「ミスJ・F」が短時間でKOされることを考慮して男性レスラーを用意したのではという太田の推測も加えられたが、当然その結論はこの場では出なかった。

「まあ、そんな反則野郎相手に稀世ちゃんが結果的に「43分KO」っていう偶然の勝利になったわけやけど、稀世ちゃんファンの「ルメイ」と実質的に「マフィア」の手先のマネージャーとの間に「温度差」があったんやろな。
粋華ちゃんから聞いた話やと、あらかじめ決勝戦は「粋華ちゃん」と「オールジャパン女子プロレス」の「西城レイカ」があたって、「西城レイカ」が勝つって流れやったんやけど、準決勝でルメイが帰ってきたことで「大人の事情」で変わったんやろな。
事前にシナリオをつかんだ粋華ちゃんからそれを聞いて、稀世ちゃんには「従順」を装わせたんや。「ルメイ社」としたら、「誰が優勝する」よりも「博打でなんぼ稼ぐか」やからな。
稀世ちゃんが従順になってくれたんやったら、「引退から1年で復帰後すぐ」の「WWE」経験者の稀世ちゃんとWWEの人気者の粋華ちゃんがやる方がアメリカでのベット実績を考えたら美味しいって考えたんやろな。
ましてや「親友」の二人が組んだら「開始5分以内のギブアップ」も「60分で勝負がつけへん」も思いのままやろ。
ちなみに「デジタルルーレット」で対戦相手を決めるっていうのは、大統領選挙で使われる「投票集計機」の「ドミニオン」と同じくアメリカでは「仕込み」そのものを意味してるんやとさ。カラカラカラ。」
太田が解説を入れると直が突っ込んだ。
「なんでそこまで太田はんが詳しく知ってんねん?」

太田はビールを注ぎ直し、一気にあおり一息つくと、向日葵寿司に空き巣に入った男の事を話しだした。闇スポーツ賭博のことについて情報提供し、その日の闇金の支払分「5万円」を太田が支払うことで「縁」が切れたと思っていた直には寝耳に水の話が続いた。
 空き巣男は、その日の支払を済ましたが他にも返済予定が迫っているものもあり、翌日に太田に泣きつきの電話を入れてきたという。

 太田は男の勤め先がアポ撮り電話の会社で優良成績を上げており、社内表彰を受けた賞状等その実績を示すものを持っていることを知ると、男にある話を持ちかけた。
 自己返済不可能な高い金利の借金を持つ男は太田の描くシナリオに乗った。闇金業者のオーナーが、闇賭博の影の実行主である「反社」の同じ「グループ」という事を金城司法書士事務所に事前に確認を取っていたので、闇金の取り立て屋に「賭博参加者の勧誘の電話営業をして、その成功報酬を借金の返済に充てたい。」と提案させ、誰もが知る「大手企業」での電話営業の実績を示すと太田の思うように上部組織の電話営業に回された。

 手元にある見込み顧客リストの出所を何気なしに探ると、情報漏洩のあった門真のサーバー管理会社が出元であることが分かったのは偶然の産物であるが、それ以前から「デジタルカジノ」を追いかけていた坂井、載田との利害関係がそこで一致した。
 空き巣犯からの情報で、今日の警察記者会見であった「ハッカーの自殺」は実際には組織の仕込みの可能性があることも語られ、オフレコではあるが太田からの「公表」されない「闇」があることを知り、皆、背中に冷たい汗をかいた。

 後は、決勝当日のネタバレに皆が盛り上がった。稀世を心配させないように、「ミスJ・F」の替え玉に仕込んだ盗聴器を回収しに行ったと嘘をついていたが、その実際は「イリノイ・アウトフィット」とは日本で「提携」するか「競合」するかどちらかの「チャイニーズマフィア」の代表格である「蛇頭スネーク・ヘッド」が使用していた盗聴器を模したものを仕込んでいたことを太田は告白した。
 もちろんその背景には坂井からの情報があったことは口にはできない。

 地下駐車場に止められたマネージャーの車やルメイの車の後部座席のウインドウのゴムパッキンの間に薄型盗聴器を仕込んで会話内容を盗み出した。
 決勝戦当日、テレビクルーとして忍び込んだメディアクリエイトと「素性を明かすことのできない公務員・・・・・・・・・・・・・・・・」でマネージャーが1人になる瞬間を狙った。
 格闘技の達人を集めたチームは、決勝戦中にマネージャーの控室を急襲し、その中に直と三朗もいたことが太田の口から語られた。
「えっ、直さんはマネージャーの後ろでタイガーマスクのレスラーマスク被ってカメラに写ってたけど、サブちゃんもおったん?」
 稀世は驚いて三朗に尋ねると恥ずかしそうに答えた。
「はい、直さんから「脅し役・・・」で呼ばれました。」

 「えっ、サブちゃんが「脅し役・・・」?いったいどういう意味?」
稀世が首を捻ると、三朗は板場から「柳葉包丁」を持って来て稀世に見せ、皿の上の鯛の刺身を手に取ると、それを削ぎ「てっさ」のような薄造りにして見せた。
「あの時は、直さん達が確保したマネージャーの前で「柳葉包丁」を使って鶏の「ささみ」を薄切りにして見せました。
 おそらく、英語を話せるメディアクリエイトのスタッフさんが、「正直に答えないとこのささみのように薄切りにしてやる!」みたいな脅しをかけてたんやと思います。
 次は生きた「アジ」をマネージャーの前で「活き造り」にしました。刺身になってもピチピチ動くアジを前に「殺さずお前をバラバラにしてやる」とでも言ってたんですかねぇ。
すっかりそれでおとなしくなりましたよ。
 まあ、直さんの「餃子チャオズ!」、「八宝菜パーツァイツォー」、「回鍋肉ホイコーロー」って言いながらいいように合気道術で転がされて、倒されて、関節を固められてましたから直さんや僕の事は完全に「チャイニーズマフィア」の「殺し屋」やと思ってたんとちゃいますかねぇ。
 意外とあっさり白状しましたよ。やっぱり「チャイニーズマフィア」って恐れられてるんですねぇ…。」
と当日の話を語ると稀世は真面目な顔をして涙を目に浮かべ三朗に訴えた。
「もう、サブちゃんは「普通の人・・・・」やねんから、「危険」な事せんといてよ…。」

 「へーぇ、私の知らんところでいろんなことがあったんやな。まあ、「知らぬが仏」って言うのか、知ってたら当日落ち着いてセコンドなんかやってられへんかったわな。
 一応、事件の全容は分かったわ。もちろん、今日の記者会見は全容の2割も語られてへんやろうし、太田さんのつかんだスクープも全体の1割も公表してへんのでしょ。そこはぼちぼち聞かせてもらわなあかんな。
 ところで粋華はルメイに撃たれてたけどその後はどないなったん?電話しても繋がらへんねんけど…。」
のまりあの一言に答えられるものはいなかった。

 その後は、和気あいあいとした懇親会的な飲み会となり、最後に直の締めで稀世の「スクープ・パーティー」は中締めとなった。



「おまけ」
さて、残すところあと「2話」です。
ほぼ、謎解きも終わりました。

よくぞ、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
(。-人-。) アリガトウゴザイマス!

皆さんからの「ストーリー予想」のメールをずっと楽しく読ませていただきました。
その中で、今後の作品で使ってみたいネタもたくさんありましたので、「そのうち使わせてください」とお返事させていただいた方は「ゴーストライター」の「ゴーストライター」になる可能性があります(笑)。

皆さんの柔軟な発想に刺激を受けてますよー!
(⋈◍>◡<◍)。✧♡


さて、先日の「粋華」ちゃんのイラストに「男性読者」からたくさんの応援と再掲載の希望が寄せられました。
稀世ちゃんより人気あるかもΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)!

うーん、作者としては微妙~!
「粋華ちゃん主人公の話が読みたい!」
といったメールも複数ありましたので、来年は「粋華」ちゃん主人公の話にできる依頼があればチャレンジしてみたいですね!

年内は、「さいわら2nd」と「卑弥呼たん」でいっぱいいっぱいそうですので、少し時間ください!
放置プレイもどうかと思うので、「粋華」ちゃんイラスト放出しておきましょう!

「旧ドク」の方にしかわからないですが、元々は粋華ちゃんのイメージカラーはブルーでした!


















おまけのおまけで
「ブラ&パンティーマッチ(ランジェリーマッチ)」コスチュームの「粋華」ちゃんです!






ユーチューブで見たけど、意外と「ぽろり」しません(笑)。

では、ラスト2話!
よーろーひーこー!
(@^^)/~~~
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