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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-8「待合室から病室へ」
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「待合室から病室へ」
すっかり日が落ち、暗くなった病院に戻り、裏の救急受付で、稀世の財布から健康保険証を抜き出し、警備員につないでもらい、総合受付に急いだ。先ほどの看護師が出てきて、健康保険証を受け取った。
「ふーん、国民健康保険なのね。ところでプロレスって試合中の事故って労災扱いなの?」
と聞かれた。
「わかりません。ところで、稀世さん、いや安さんの具合はどうなんですか?意識は戻りましたか?」
と聞き返すと、
「まだ、意識は戻ってないみたい。ただ、心拍も、呼吸も安定してるみたいだから、検査待ちね。あと、左肩の脱臼は、無事に入ったみたいだからそこは安心して。今、CT取ってるから、あと十分ほどで一回出てくるわ。この奥の25番のCT室の前で待っててください。おそらく、その後、MRI入るから、三十分ほどはかかると思うわ。何かあったら、一階の外来ナースステーションで呼び出しベル鳴らしてください。一応、保険証のコピーもらっておきますね。」
と事務的に答え、健康保険証のコピーを取り、すぐに保険証を返してくれた。
夜の無人の病院で薄暗い照明のCT室の前に移動し、稀世が出てくるのを待った。しばらくすると、ストレッチャーに乗せられた稀世が、白衣姿の若い撮影技師といっしょに出てきた。三朗は緊張した。
「まだ、意識が戻っていません。担当医は、今、別の患者を診ていますので、次は30番のMRI室の前で待っていていただけますか?ついてきてください。ちなみに、リングコスチュームって金属部品無いですよね?金属あるとMRIかけられないんで。普通なら、ガウンに着替えてもらうんですが、うちも、日曜の夜間は人手不足なもんで着替えさせる余裕がないもんですから。」
と聞かれた。
「試合中、けがしないように、金属は使われてないと思います。指輪や装飾品も試合中は身につけないと聞いていますので。仮に金属ぽく見えるものがあってもメッキ加工のプラスチック部品だと思います」
「わかりました。」
後は、黙って部屋を移動した。
稀世が、MRI撮影室に入り、五分ほどすると撮影中の赤いランプが点灯した。三朗は、まりあの携帯に状況をショートメールで送った。MRI室の前で待つ三十分は、五分くらいに感じたし、三時間にも感じられた。頭の中がぐるぐると周り、元気に稀世が出てくる良い想像と意識のない状態で出てくる悪い想像とが交互に浮かんでは消えていった。
ちょうど、三十分で「撮影中」ランプが消え、白衣の若い医師が出てきた。
「撮影が終わりました。一旦、病室にてお待ちください。おって、主治医から診察結果の話がありますので、奥様の意識が戻られてなかったら、ご主人が受けてください。」
「えっ、僕、主人じゃ…。」
と言いかけたが、話を聞かず、若い医師は、撮影室に戻り、しばらくするとふたりの看護師が来て、ストレッチャーを撮影室から出し、専用エレベーターで個室の病室に連れて行かれた。ICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)ではなかったので少しほっとした。
「ご主人も室内で奥様が目を覚まされるまでお待ちいただいて結構です。意識が戻られましたら、枕もとのナースコールお願いします。」
看護師は、ふたりでストレッチャーからベットに稀世を移し、簡易の酸素マスクと右手の指先にクリップ式のモニターセンサーを設置して、部屋を出ていった。(稀世さん、早く目を開けてください…。)と顔を覗き込んだ時、「ブブブブ」と三朗のスマホのバイブが鳴った。画面を見ると、まりあからのショートメールだった。「ごめん、サブちゃん。社長と私は、先方のスポンサーと食事に行かないといけなくなりました。面倒かけますが、稀世の状況変わったらメール下さい。みんな心配していますが、押しかけても迷惑かけるので。本当にごめんね。」とあった。「稀世さん、検査終わり、一般病室に移りました。意識はまだ戻りません。医師との面談もまだです。何かあればメールします。お寿司は皆さんで食べてください。」と返信した。病室内には、医療機械のモニター音と稀世の呼吸音だけが響いていた。
三朗は、薄暗い照明の中、稀世の顔に自分の顔を近づけた。酸素マスクから「シュー」という連続音が聞こえ、間に「ハー」という稀世の呼吸音が入る。十分強の熱戦の名残なのか、ファイト中の汗が結晶化し、稀世の顔にところどころ白く塩が吹いている。(これじゃ、かわいこちゃんが台無しだ。)とウエストバックからハンカチと入場時にもらったミネラルウォーターを出し、ハンカチに水を染ませて、稀世のおでこから、頬、そしてあごの下を優しく拭いた。部屋の水道で一度ハンカチを濯ぎ、再び顔を拭き始めたところ、ピクピクと稀世の瞼が動いた。
「稀世さん!稀世さん!」
と声をかけながら、おでこを拭くと、ゆっくりと稀世の瞼が開いた。
「あれ・・・。サブちゃん・・・。ここ、どこ。あ、痛っ!」
「稀世さん、三朗です。わかりますか?試合で脳震盪起こして、今、病院です。」
「えっ!?試合は?」
「相手のパワーボムが崩れて、稀世さん、受け身とれなくて。両者ノックダウンで。救急車で運ばれて、脳震盪で二時間ほど意識なかったんですよ。左肩は脱臼してたし。あーでも、意識戻ってよかったー。本当に、心配しました。ほんと、よかった。よかった。」
三朗の頬を安堵の涙がつたった。
「なんでサブちゃんが泣くのよ。男前がもったいないで。ところで相手の子は、大丈夫やったん?」
「すいません。稀世さんの意識が戻れへんかったらどうしようってずっと思ってたんで、緊張が急に解けてしもて、自然に泣いてしまいました。相手の子は、向こうの団体のスタッフの肩借りて、立ってましたから。大丈夫やと思いますけど。こんな時まで、相手のこと心配してんと、自分の身体を心配してください。」
「そんなん言うてもな、試合中、相手の子、意識飛んでんのわかってたから・・・。そうか、受け身失敗か。また、まりあさんに怒られるな。で、今何時?」
「今、八時半です。もう、大会も終わって片付けやってる時間やと思います。まりあさん、相手団体のスポンサーと食事行かなあかんから、僕が稀世さんの付き添い頼まれたんです。」
すっかり日が落ち、暗くなった病院に戻り、裏の救急受付で、稀世の財布から健康保険証を抜き出し、警備員につないでもらい、総合受付に急いだ。先ほどの看護師が出てきて、健康保険証を受け取った。
「ふーん、国民健康保険なのね。ところでプロレスって試合中の事故って労災扱いなの?」
と聞かれた。
「わかりません。ところで、稀世さん、いや安さんの具合はどうなんですか?意識は戻りましたか?」
と聞き返すと、
「まだ、意識は戻ってないみたい。ただ、心拍も、呼吸も安定してるみたいだから、検査待ちね。あと、左肩の脱臼は、無事に入ったみたいだからそこは安心して。今、CT取ってるから、あと十分ほどで一回出てくるわ。この奥の25番のCT室の前で待っててください。おそらく、その後、MRI入るから、三十分ほどはかかると思うわ。何かあったら、一階の外来ナースステーションで呼び出しベル鳴らしてください。一応、保険証のコピーもらっておきますね。」
と事務的に答え、健康保険証のコピーを取り、すぐに保険証を返してくれた。
夜の無人の病院で薄暗い照明のCT室の前に移動し、稀世が出てくるのを待った。しばらくすると、ストレッチャーに乗せられた稀世が、白衣姿の若い撮影技師といっしょに出てきた。三朗は緊張した。
「まだ、意識が戻っていません。担当医は、今、別の患者を診ていますので、次は30番のMRI室の前で待っていていただけますか?ついてきてください。ちなみに、リングコスチュームって金属部品無いですよね?金属あるとMRIかけられないんで。普通なら、ガウンに着替えてもらうんですが、うちも、日曜の夜間は人手不足なもんで着替えさせる余裕がないもんですから。」
と聞かれた。
「試合中、けがしないように、金属は使われてないと思います。指輪や装飾品も試合中は身につけないと聞いていますので。仮に金属ぽく見えるものがあってもメッキ加工のプラスチック部品だと思います」
「わかりました。」
後は、黙って部屋を移動した。
稀世が、MRI撮影室に入り、五分ほどすると撮影中の赤いランプが点灯した。三朗は、まりあの携帯に状況をショートメールで送った。MRI室の前で待つ三十分は、五分くらいに感じたし、三時間にも感じられた。頭の中がぐるぐると周り、元気に稀世が出てくる良い想像と意識のない状態で出てくる悪い想像とが交互に浮かんでは消えていった。
ちょうど、三十分で「撮影中」ランプが消え、白衣の若い医師が出てきた。
「撮影が終わりました。一旦、病室にてお待ちください。おって、主治医から診察結果の話がありますので、奥様の意識が戻られてなかったら、ご主人が受けてください。」
「えっ、僕、主人じゃ…。」
と言いかけたが、話を聞かず、若い医師は、撮影室に戻り、しばらくするとふたりの看護師が来て、ストレッチャーを撮影室から出し、専用エレベーターで個室の病室に連れて行かれた。ICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)ではなかったので少しほっとした。
「ご主人も室内で奥様が目を覚まされるまでお待ちいただいて結構です。意識が戻られましたら、枕もとのナースコールお願いします。」
看護師は、ふたりでストレッチャーからベットに稀世を移し、簡易の酸素マスクと右手の指先にクリップ式のモニターセンサーを設置して、部屋を出ていった。(稀世さん、早く目を開けてください…。)と顔を覗き込んだ時、「ブブブブ」と三朗のスマホのバイブが鳴った。画面を見ると、まりあからのショートメールだった。「ごめん、サブちゃん。社長と私は、先方のスポンサーと食事に行かないといけなくなりました。面倒かけますが、稀世の状況変わったらメール下さい。みんな心配していますが、押しかけても迷惑かけるので。本当にごめんね。」とあった。「稀世さん、検査終わり、一般病室に移りました。意識はまだ戻りません。医師との面談もまだです。何かあればメールします。お寿司は皆さんで食べてください。」と返信した。病室内には、医療機械のモニター音と稀世の呼吸音だけが響いていた。
三朗は、薄暗い照明の中、稀世の顔に自分の顔を近づけた。酸素マスクから「シュー」という連続音が聞こえ、間に「ハー」という稀世の呼吸音が入る。十分強の熱戦の名残なのか、ファイト中の汗が結晶化し、稀世の顔にところどころ白く塩が吹いている。(これじゃ、かわいこちゃんが台無しだ。)とウエストバックからハンカチと入場時にもらったミネラルウォーターを出し、ハンカチに水を染ませて、稀世のおでこから、頬、そしてあごの下を優しく拭いた。部屋の水道で一度ハンカチを濯ぎ、再び顔を拭き始めたところ、ピクピクと稀世の瞼が動いた。
「稀世さん!稀世さん!」
と声をかけながら、おでこを拭くと、ゆっくりと稀世の瞼が開いた。
「あれ・・・。サブちゃん・・・。ここ、どこ。あ、痛っ!」
「稀世さん、三朗です。わかりますか?試合で脳震盪起こして、今、病院です。」
「えっ!?試合は?」
「相手のパワーボムが崩れて、稀世さん、受け身とれなくて。両者ノックダウンで。救急車で運ばれて、脳震盪で二時間ほど意識なかったんですよ。左肩は脱臼してたし。あーでも、意識戻ってよかったー。本当に、心配しました。ほんと、よかった。よかった。」
三朗の頬を安堵の涙がつたった。
「なんでサブちゃんが泣くのよ。男前がもったいないで。ところで相手の子は、大丈夫やったん?」
「すいません。稀世さんの意識が戻れへんかったらどうしようってずっと思ってたんで、緊張が急に解けてしもて、自然に泣いてしまいました。相手の子は、向こうの団体のスタッフの肩借りて、立ってましたから。大丈夫やと思いますけど。こんな時まで、相手のこと心配してんと、自分の身体を心配してください。」
「そんなん言うてもな、試合中、相手の子、意識飛んでんのわかってたから・・・。そうか、受け身失敗か。また、まりあさんに怒られるな。で、今何時?」
「今、八時半です。もう、大会も終わって片付けやってる時間やと思います。まりあさん、相手団体のスポンサーと食事行かなあかんから、僕が稀世さんの付き添い頼まれたんです。」
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