あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

M‐赤井翼

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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』

1-48「強盗犯」

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「強盗犯」
 バタンっ!激しく入り口のドアが開かれた。
「おらおら、騒ぐな!おとなしくせえ!」
迷彩服に黒の目出し帽のふたり組の男が飛び込んできた。入り口付近にいた、女性部会の奥方たちから悲鳴が上がった。取材のテレビ局のカメラのレンズが入り口に向かう。ひとりは、185センチ以上でがっしりした体形で、大きな黒いリュックサックを背負っている。もうひとりは、170センチ弱くらいの中肉中背。黒いスポーツバッグを肩から掛けている。開いたままのチャックの隙間から、札束らしきものが見える。ふたりとも刃渡り30センチはある、コンバットナイフを剥き身で右手に持っている。ナイフの刃がにぶい光を放っている。
(えっ?こいつらって、さっき夏子が見せてくれた、銀行強盗?)まりあは、瞬時に理解した。
「はいはい、みなさーん、お楽しみのところ悪いが、女子供を残して、男は、全員出ていけ。今すぐや。余計な血は見たないんで、おとなしく動けや。」
それまで、和気あいあいとしていた会場の空気が一気に凍りついた。
「なんやお前ら。無粋なもん持ち込みやがって。」
背の高い男に、掴みかかった武藤の頬に男のナイフの柄がヒットする。鼻血が吹き出し吹っ飛ぶ武藤。
「社長に何すんねや。」
飛びかかった、杉田の腹に正面蹴りが入る。明らかに、格闘技の経験があるものの動きだ。杉田は、武藤に折り重なり、呻いている。
「おいおい、なんやえらい元気な奴が多いな。次は、遠慮せんとブスッといくで。死にたくなかったら、さっさと出ていけや。俺は、気が短けーんや。ほらほら。」
とナイフをちらつかし、奥へと進んでいく。小さいほうの男が、凜に目をつけた。バッグをかけた左手で凜を抱え込み抱き上げる。
「第一人質ゲットー!」

 武雄が、男の左足の太ももにタックルする。
「凜に何するんや!放せ!」
男は、ぶんぶんと足を振るが、離さない。黒マスクの男の腕の中で凛が泣きじゃくる。男はナイフを持った右手で振り払おうとした瞬間、武雄が男の手を掴み右手首に思いっきり噛みついた。
「痛ってーなー、このクソガキ。」
右手で武雄を振り払い、吹っ飛んだ、武雄を踏みつけようとする。
「こどもに何すんねや!」
三朗が、男に飛びかかるが、ナイフのグリップで後頭部を一撃され、三朗はその場に倒れこむ。
「サブちゃん!」
稀世が、一歩前に出ようとしたところ、直が制止する。
「おいおい、結婚式の最中ってか?白無垢着て「幸せの絶頂でーす」ってか?「思いっきり、不幸な思い出」にしてしもて、すまんのう、お姉ちゃん。」
小柄な方の男が悪態をつく。
「とっとと、男は出ていけ。そこで倒れとる三人と勇敢なちびっ子も誰か連れて行ったってや。」
ぞろぞろと、男たちが出て行く。倒れた武藤と杉田は広義が手を貸し、三朗は気絶しているので徹三が背負い、武雄の手を取り、出て行った。
「強盗犯のふたりに告げる。これ以上、罪を重ねるな。お前たちは、完全に包囲されている。おとなしく自首しなさい。」
刑事ドラマでお決まりのセリフが蔵の外から聞こえる。ふたりの黒マスクの男が入り口側に意識が向いた瞬間、テレビ局のカメラマンが、そっとリング下のキャンバスに潜り込んだ。

 「花嫁のお姉ちゃんとばばあとこの女の子残して、後はみんな帰ってええよ。俺らの気が変わらんうちに、早く出て行ってなー。」
 小さい方の男は、凜を抱っこしたまま、リング上に残されていたマイクで好き勝手話している。大きいほうの男が、ナイフをみんなに突き付け、蔵から出るのを急かしている。最後に、まりあが稀世と直と凛の方を振り向き言い残した。
「必ず助けたるからな。絶対無理したらあかんで!」
「はいはい、できもしないこと言えへんの。ばいばいきーん。」
とまりあを外に押しやると、ドアを閉め、錠をかけようとした。いつもかかりにくく、新しい錠に変更しようとしていた鍵はうまくかからず、大きい男は四苦八苦している。相変わらず、外からは、まったく効果のない説得が続いている。「稀世ちゃん、隙を見て小さいほうから、やるでな。凛を連れて、逃げるんやで。」直が小さな声で稀世に言った。稀世は小さく頷いた。リング下の垂れ幕と床の隙間からカメラのレンズは覗き続けている。

 なかなか閉まらない鍵にイライラした凜を抱えた小さい方の男の意識が、稀世と直から外れた瞬間をふたりは見逃さなかった。無言のアイコンタクトで、直が一歩踏み込み、右手の親指と人差し指で凜を抱きかかえる左腕の肘のツボに指を入れた。「ぐあっ!」男の叫びと同時に、男の肘が垂れ下がった。凜の身体が「すとん」と床に降りた。男の肩から落ちたバッグの中から、札束が床に散らばった。
 稀世は、小走りで男の胸に左肩からショルダータックルをかました。(着物で歩幅がとれへん。浅いか?)男が吹っ飛ぶイメージで体当りしたが、尻もちをつく程度の当たりだった。背の高いほうの男が振り返った。稀世は、凜を右腕で抱きかかえ、入り口の前の男の喉元に左腕のラリアットを入れた。男の背中が、ドアを押し開け道路に倒れこんだ。開いたドアから、正面に心配そうな顔をしたまりあ、夏子、陽菜の姿が見えた。稀世は、
「まりあさん、凜ちゃんをお願い。」
と叫ぶと同時に凜をまりあに向かってラグビーボールのパスのように放った。まりあが両腕で凜の身体を受け止めた。倒れた男の右手のナイフを蹴飛ばすと、
「なっちゃん、陽菜ちゃん、こいつの後処理よろしく。」
横にいた警察官よりも早く、夏子と陽菜のエルボードロップが男のみぞおちと急所に食い込んだ。遅れて警察官が男に飛びかかったのを横目で確認し、蔵の中の直の姿を目で追った。

 きれいな円弧を描き、男が背中から床に落ちる瞬間が、稀世の目に飛び込んできた。男は、ブリッジで、跳ね起き、右手のナイフを逆手に持ち直し、再び直に正対しナイフを振り下ろそうとした。直は一歩踏み込み入り身投げに入った。再び男は回転したが、直の動きを読まれたのか、背中から落ちず、足から着地し再びナイフを振り上げた。
 男と斜対した直は、だらりと下がった男の左腕を下に、振り上げたナイフを持った右手を上に払い天地投げの体勢に入り、右足を踏み込んだ。「ブチっ!」直のサンダルのベルトが弾け切れ、直が大勢を崩した。天地投げは不発に終わり、小手返しを出そうとするが男の足が一歩早く、右膝蹴りが直の左太ももにヒットした。2メートルほど横に飛び、着地した直に苦悶の表情が浮かんだ。
 
 直は、再び正対した位置関係から正面に踏み込み、男の右腕をひねり、逆L字型に固め、相手のナイフが右手から落ちるのが直の目に入り、相手の懐に飛び込んだ。(だめ、直さん。踏み込みが浅い上に、落としたナイフはフェイクや!)稀世は、一瞬で判断し3メートル先の直に向かって飛び込んだ。男は、右手から落としたナイフを左手で受け、懐に背面で入った直の腹部に向けナイフを突き上げた。




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