『北の大地のファーストペンギン2025~限界集落復興と結婚したい訳あり男女達の物語~』

M‐赤井翼

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第1部 エピソード2023

「試作品と視察」

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「試作品と視察」

 酪農家の朝は早い。道東という事もあり、大阪より約1時間早い日の出の光がカーテンの隙間から入ってくると同時に、「稀世ちゃん、起きてるかな?」と那依がドアをノックした。枕元のスマホを見ると、午前4時45分だった。昨晩、1時に会議をお開きにして、一番に風呂に入れてもらってすぐに寝たのだが、3時間の睡眠で頭がまわらない。周りを確認し、神標津町農協組合長の坂井一郎の家に泊まらせてもらっている事が思い出された。
 「はい、今、起きました…。」と答えると、「今、直さんとまりあさんも来てくれて、ジャージー種の肩肉とロース、バラ肉のローストビーフの試作品が焼きあがったから、試食してもらいたいんだけどお願いできないかな?安さん、よく食レポやってたから「プロの味」に詳しいでしょ?女だけだから、すっぴんでいいからちょっと付き合ってくれない?」
 ドアの向こうから聞こえる那依に「ジャージのままでもいいですか?」と確認を入れて布団から出てドアを開けた。

 ドアを開けた瞬間、階下から肉とスパイスの香ばしさが混ざった朝の空気が鼻をくすぐった。(がおっ、今までに嗅いだことのない肉の香りやな。ところで、焼きあがってるみたいやけど、いったいみんな何時から作業してたんやろか?)と思いつつも、香りに誘われるがままに顔も洗わず那依に続いて階段を下りた。
 「稀世ちゃん、おはようさん!昨晩はよく寝られたか?」、「ごめんね、早い時間から…。もう、直さんがやる気スイッチ入っちゃってるんで今日は4時集合で試作を始めてたんよ。」とエプロン姿の直とまりあがフライパンに並んだ6本の棒肉を見せた。
「とりあえずは、副島はんがあえて「推して」くれてた、一般的には低ランク肉とされるジャージー種の牡肉を稀世ちゃんに食べてもらおうと思ってな。なんやったら「朝ビール」も「朝ワイン」もあるからな。カラカラカラ。」
と笑いながら、各棒肉の半分をスライスして6枚の皿に取り分けた。
 先ほど那依から聞いた「赤身の肩肉」、「脂ののったロース」、そして「こってり脂身が入ったバラ肉」の3種で、1歳の子牛と4歳の親肉という事だった。加熱前の肉も6種類全て見せてくれた。やはり黄色味の強い脂は稀世の視覚的には良いとは思えなかった。さらに、バラ肉は三枚肉のように赤身と黄色い脂が1センチ弱ごとの層になっていて脂っぽさを想像させた。

 スパイスは市販の「ローストビーフの元」を使用したと、空き袋を見せてくれた。「まずは、ジャージー牛の脂を味わってもらいたいから、ソースは無しで食べてみてくれるか。」と直に勧められるがままに稀世は6種類のローストビーフに箸をつけた。
 ビールを飲みながら味見をする直は別として、稀世と那依、まりあはメモを取りながら味の違いを噛み締めていった。
 (ん!想像と違って脂がしつこくなく、さっぱりとしつつ深いコクがある。決して嫌な脂っぽさじゃない。赤身の肩肉はひたすら香ばしく、ロースとバラ肉は柑橘系ソースやわさび醤油やポン酢に合いそう。あー、私もビール飲みたい…。)との思いを心の中で抑えきれず、口に出してしまったようで、那依が気を聞かせて缶ビールを出してくれた。
 一度は断ったものの、午前中は那依の運転で直、まりあの4人で近隣の街の道の駅やチーズ工房に取扱商品の視察に行く予定を直が立てていたようで、「遠慮なく飲んでよ。飲み物と併せた提案や商品開発も必要でしょ!」と那依は冷蔵庫から十勝ワインの赤と白のボトルも出してきてくれた。

 6種の試食を済ませ、4人で意見を交換している間に、冷凍庫で急速冷却し本来のローストビーフの状態に近い状態にした残りの試食に入った。脂が固まりしつこさを感じさせるかとの想像は良い意味で裏切られた。高級なベーコンの脂身のように甘さを感じさせる黄色がかった油はわさび醤油やポン酢と合った。柑橘系ドレッシングの在庫が無かったのでレモン汁に元々ついていたローストビーフのタレとも合わせてみた。
「冷やすと、さっぱり系の肉になるんやね。ローストビーフサンドにしてもよさそうかな?いや、握り寿司のネタでもよさそうや!ソースとの相性もいいし、がっつり系のおかずには親牛、薄くスライスして酒のつまみにするなら子牛って感じかな?いくつかサンプルを作って真空パックにできたら、大阪や東京で何件か持ち込みたいお店があるから考えてみるわ。」
と稀世の意見に那依とまりあが「個人向けで売るんじゃないの?」、「私、道の駅とかで売るもんだとイメージしてたんだけど…。」と各々の意見を述べた。

 稀世が意見を言う前に、直がフォローしてくれた。二人が言うように、個人消費を狙って売るのも良いが、個人消費者に知名度の無い「神標津のジャージー牛」を選ばせるのは難しいとの意見を述べた。
「まずは、「神標津のジャージー牛」を知ってもらうのが先じゃろ。しかし、広告を打ったりする費用は無い。ここは、稀世ちゃんの伝手を借りて、有名店での採用事例を作ることが必要じゃ。いかんせん、神標津は日本の東の果て…。個人向けに全国発送するにしても、クール便の「送料負け」してしまうでな。
 羽咋の「神子原米」も「ローマ法王が食べた」からこそ、通常の数倍のあの値段で売れるんじゃ。送料を考えると、個人向けの「BtoC・・・・」でなく、いわゆる事業者納品の「BtoB・・・・」でまとまった数を送るモデルでないと、売れへんし、利益も出んからな。じゃろ?稀世ちゃん。」
 (直さん、フォローありがとう。きっと、副島のおっちゃんがそう言ってくれてたんやろな。確かに、最終的には個人消費に持ち込みたいけど、そのためには「ブランド力」が必要やからね…。そこら辺を那依さんとまりあさんに理解してもらうための近隣ショップの視察なんやろな。)と感謝しつつ、
「直さんが言うように現在はネットでの「お取り寄せ」ブームとは言いつつも、その殆どは消費地近郊の事業者からの発送購買なんですよ。大阪で北海道や沖縄の商品を取り寄せるのも現地からじゃなく、近郊の取り扱い商社や店舗から買います。3000円以下の買い物で送料が1500円以上かかったら、よほどのモノでないと買ってもらえないんですよ。
 ですから、例としては「大阪有名レストランA」が「アグリ神標津」と提携して「開発・製造」したっていう看板や売り文句がポイントなんですよ。レストランのオリジナルソースと一緒に販売したりもいいですね。
 とりあえず、今日から、過去の取引先にもモニタリングをかけていきますのでまたいろいろと意見下さいね!大阪、東京の知り合いにも協力してもらうつもりですので少し時間をください。」
と稀世の思うスタート営業の方針を説明すると那依とまりあは「あぁ、「大人の商売」って単純じゃないんだね。」と納得した様子だった。

 午前8時半、那依の運転する四駆に稀世と直とまりあが乗り込むと、金城司法書士事務所の提案書にあった「オリジナルチーズ」と「バター」と肉製品を含む「地域産物」を取り扱う店を視察に向かった。
まずは「道産品」がどのような形態で取り扱われているのかを知る為に、釧路の人気複合施設の「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」を訪れた。1968年に釧路河畔開発公社が開発したショッピングモールは1988年に西武百貨店も経営参画しバブル期には多くのマスコミに取り上げられたことを4人は承知している。
 鮮魚介類は「地方発送承ります」と表示されているが、ここ数年の宅配便料金およびクール便加算料金の高騰により関東圏以西の発送売り上げは苦戦している事が分かった。
 缶詰や常温保存可能な加工品はフェリーで車持ち込みの旅行者には好評で売り上げが上がっているが、飛行機で道内に入りレンタカーでの旅行客やバス旅行客の購買単価は下がっているという事だった。
 参考に「1000円」程度のさんまのジャーキーを発送しようと尋ねるとその送料は、道内であればコンパクトサイズで720円、120サイズで1850円だが、送り先が東京になると940円、2370円となり、大阪では1110円、2830円、九州となると1270円、3250円になるという。
「うーん、アマゾンや楽天の「送料無料」が当たり前だと思ってたから、個人あての小口発送が厳しいって事はよくわかったわ…。」まりあは改めて知る宅配便の現状の送料に驚いてMOOを後にした。

 続いて訪問したのは、白糠町のチーズ工房「白糠酪恵舎」だった。自家製チーズがかかり甘じょっぱい味わいのチーズソフトを稀世は真っ先に選んだ。理由は元々ジャージー乳を使った黄みがかったソフトクリームをかつて取引のあった、金箔を貼り付けた金沢名物の「金箔ゴールデンソフトクリーム」の名店に「チーズトッピング」なら提案できるという見込みがあったからだった。味見をしてみて「これは見込みありかな?」と手帳にメモを残し、フレッシュタイプのモッツァレラチーズに加え、セミハードタイプ、ハードタイプのチーズを数種類購入した。
 更にディナーやワインに合う「リコッタ」の表面に胡椒をまぶし14日以上熟成させた「リコッタ・サルーテ」、燻製した「スカモルツァ」等も追加した。
「それは稀世ちゃんの夜のお供かいな?」と尋ねる直に稀世は笑顔で答えた。
「ワインバーのチーズってめちゃくちゃ売価が高いんですよ。ジャージー種の牛乳から作った国産手作りチーズってだけでもいいんですけど、より珍しい物、変わったものであれば高単価で売れますから、一般調理用のナチュラルチーズやプロセスチーズより付加価値が上がりますから研究するのも面白いと思いまして…。もちろん、その後は酒のアテですけどね。くすくす。」

 その後、道の駅をはしごして「肉製品」、「肉加工品」をチェックして回った。一般的な「牛」、「豚」、「鶏」に加え北海道では普及している「羊」にジビエとして「エゾシカ」、「クマ」、「トド」などの変わり種を見て回った。
「稀世ちゃん、何を調べてんの?」と尋ねる那依に、稀世は具体的な事例としてカレーを取り上げた。
「調理方法と賞味期限を調べてたんよ。余談やけど全国に何百とある「ご当地カレー」でしっかりと利益が出てるものって殆どあれへんのよ。一人前1000円を超えるようなものもあるけど、そうそう食べへんわな。やっぱりこれも、ホテルやレストランで3000円以上で出してもらえるクオリティーのルーかブイヨンを作れば、後はシェフのアレンジで一斗缶で大阪の商社に常温輸送ができるやろ。更に濃縮化が可能やったら一缶あたりの単価も上がるでしょ。」

 7、8件回ったところで時刻は午後3時半を迎えていた。「ぼちぼち、帰ろうか。一郎と広志が徹と岡山兄弟と龍二に声をかけてるはずじゃ。もし、やる気を出す奴が居ったら、「アグリ神標津」の説明をしたらなあかんし、集まれへんかったら昨晩のメンバーで「立ち上げ」に向けて「新発式」じゃい!」と直は稀世に声をかけ、4人は車に乗り込んだ。

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