『北の大地のファーストペンギン2025~限界集落復興と結婚したい訳あり男女達の物語~』

M‐赤井翼

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第1部 エピソード2023

「次の5人の女性と1人の男性訪問者は少し変わり者?」

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「次の5人の女性と1人の男性訪問者は少し変わり者?」

 副島が本来の仕事に戻った日の夜の会議は大いに盛り上がった。ある意味、「アグリ神標津」の実質的な代表金主である直から発言がなされた。
「わしは副島さんの提案を受け入れようと思う。あの「しょぼい・・・・」温泉が「電気の塊」っていう発想は全くなかった。副島さんの計算やと、古いプレハブ冷蔵庫、冷凍庫に3棟の旧式エアコンをつけてもまだ余剰電力があるらしいから、うちの隣の典史の家の空き畜舎も冷暖房完備にしようと思ってる。
 使い道はみんなで考えてくれたらええ。典史のじいさんの代の畜舎と農産物保管庫の60坪くらいまで、副島さんの引っ張ってくるエアコンで完全空調で使えるらしいから何に使うのが良いのか考えてみろな!
 あと、副島さんとのバーターでこの1週間の間に5人の女の子と1人の男の子がこの村に来る。もちろん「婚活」目的もあるが、「それ以外」もある。皆には、この村で働いてくれる道外からの新たな仲間として受け入れてくれるよう頼むわな。」

 リーダーの広志を筆頭にいくつも質問が飛んだ。直に変わって稀世から6人のプロフィールが語られた。婚活目的で来る3人は、「いつか王子様が症候群シンドローム」のおそらく「交際歴ゼロの33歳」、過去に2度のDV離婚を経験している「22歳で2人の子連れのハーフ」、そして「これは本人の前で絶対に言ったらあかんで!」という前提で、「婚活100連敗中の27歳」という事だった。「釣書」の本人写真はどれも「平均値以上」の顔立ちだった。
 そして、若くてかわいいにもかかわらず「「人間の男より動物が好き」と言い切る男に興味を持たない20歳」と、稀世を超える「Hカップ」のダイナマイトボディーの「超BL好きの腐女子の31歳」の5人の女性がこの村に来るという事が伝えられた。
 さらに副島を師匠と崇める「25歳の男性コンサルタント」が稀世のサポートとして来るのでよろしく頼むという話だった。
 直の家で現在生活している稀世、さくら、晶に加え5人の女性はキャパ的にギリギリで何とかなると考えて面倒を見ることとなり、男性1名は岩井家が受け入れる事となった。

 「今後も、来村者が来た場合に備えて男女別の「シェアハウス」的な物件が必要になるじゃろ。あと、家族単位で来る場合もあるやもしれんから、広志と真一は空き家になってる建屋を法人借り受けが可能か親に確認しておいてくれな。一郎は組合員の空き家の転借をあたっておいてくれ。大した金額は払われへんが、寝かせておくよりはましじゃろ。
 トイレのコンポスト化と風呂の改修費は会社で持つから事前に準備しとかなあかんからな。」
と直が、副島と話をした「仮村民体験」プランを皆に発表した。更に、副島の提案を受け菅野家の空き畜舎3棟の改造計画と当座の運営について皆の意見を求められた。直は税込み100万円での改修の確認は取れているので「実行したい」と述べ、その意見に反対は無かった。
 更に10坪のプレハブ冷凍庫は、当面、精肉保管で一杯になる事はないので「一斗缶」に地下水を入れ、随時百個近くを「約20時間」かけてマイナス20度で「緩慢冷凍・・・・」で凍らせておくので、メンバー各自は直のところまで引き取りに来たうえで、畜舎の地上3メートルに数個ずつ隙間を空けて設置し、送風機で風を当てるだけで温度15度未満の冷気を数時間にわたり送ることができるという「自然派クーラー」実験を「アグリ神標津」メンバーの畜舎では実験的に始めてみてほしいという事だった。

 もうひとつは副島からの提案を受けて、畜舎地面に置いた水温10度の「井戸水」を汲み上げたドラム缶に凍らせた一斗缶を漬け込み、水温5度の冷水をポンプで汲み上げて畜舎上部を熱交換効率の高い亜鉛メッキ鋼板の波型トタン板の上を流し、そのトタン板に送風して表面ラジエーターとするプランと比較をしてみる事にすることにした。
 もちろん、冷水は牛の飲料水にも転用されるし、3馬力程のポンプと小さな穴を開けたゴムホース噴霧器があればミスト冷却器になり、それだけでも外気に対し「体感温度」でマイナス5度の効果はあり畜舎の牛たちの暑さに対するストレス解消になるであろう事が加えられた。
 広志がリーダーとなり、三朗、典史、真一に加え一郎の畜舎で各々の方式を試し、結果を報告し合う事が決まった。

 会議が終わった瞬間、稀世のスマホが鳴った。着信元は帰阪したばかりの副島だった。
「安さん、いきなりやけど明日の朝一に今朝話してた「コンサル卵」の「出口君」が行くからよろしくしたって!冬の「暖房費」の件はしっかりと仕込んでるからな。若いけど、しっかりしてるから鍛えたってや。発電機とその他機材は明日には大阪から搬出やから敦賀発のフェリーで、苫小牧東経由で3日後にはそっちに着くし、設置は3日で終わるからな。あと万朶野さんに破産宣告の申請受理は終わったからカード類は使わんように伝えといたってな。よろひこー!」とだけ言って一方的に電話は切られた。
 稀世はその事を皆に伝えると直がぐい飲みの日本酒を一気に飲み干すと叫んだ。
「お前ら、今日が4日、副島さんが最短で段取りしてくれたおかげで発電と施設稼働は「1010ヒトマルヒトマルニイタカヤマノボレ」じゃい。これからの50日は「戦争」じゃ!雪が降り始める前に「冬季収入」確保の「水耕栽」のネタをまとめておくんじゃぞ。
 6人の新たな「村人」が「夢」を持てるようにしっかりとプランを抜かりなく練っておくようにな。さくらちゃんと晶ちゃんは、大阪発送の「BtoC」のプランを考えておいてくれ。
 稀世ちゃんは総参謀として、皆の行動管理を頼むで。わしらが見せる行動で来年以降の「神標津村この村」の将来が決まると思って間違いはない。「皇国の興廃この一戦にあり」じゃい!今日はわしの奢りじゃでとことん飲むぞ!」
と皆に「喝」を入れ、大宴会が始まった。
 
 「来年は「神標津ブランド」をテレビで取り上げてもらえるように頑張ろう!」といつになく盛り上がる広志に煽られて三朗と真一も「夢」を語った。「もし「神標津ブランド」を日本中に広める事が出来たら「肉牛」にもチャレンジしてみたいですね…。」、「僕は雪のない時期の土日の「村営ドライブイン」を開催したいです!」と楽しそうに話している。晶は具体的なプランを提案して真面目に議論をしている。
 「私は冷蔵、冷凍設備が充実したらスイーツブランドを立ち上げたいな。今度はこっちで主導権持って大阪のパン屋さんとコラボしたいんですよねー!さっそく、お客さんがどんなものを望んでるのかTikTokでリサーチしちゃお!」と嬉しそうにスマホで動画撮影を始めたさくらに寄り添う典史が「うちはこの秋から鶏舎なしの「養鶏」もチャレンジしてみようと思ってます。地飼いの「神標津鶏」ってできたらいいですよね!さくらちゃんの作るニュースイーツで使ってもらえるような卵を作りたいですね!」と楽しそうに話している。

 後ろ向きな発言なしに、夢を語る若手4人と晶とさくらに一郎は檄を飛ばした。
「意見はどんどん出せよ。俺達では実現できない話も今は安さんや立花さん、万朶野さんだけでなく、これからは内地の人たちも入ってくる。JAに納めるだけの仕事でなく、自主的に新たな「仕事」を作っていけるかどうかはお前たちの頑張りにかかってるからな!」
 ほろ酔いの直も活気のある若者の会話に耳を傾けて一郎と共に目を細めている。那依とまりあは給仕に駆け回っていると、何も言わなくても晶とさくらもそのフォローにまわり、不自然さなく事が回っているのを見て稀世は(新たに来る6人も馴染んでくれたらええねんけどな…。)と想い、若手メンバーと共に明日の夢を楽しく語り合い、宴は午前0時を迎えお開きとなった。

 稀世は布団に入っても興奮は冷めず、明日以降、すべきことを頭の中で整理していった。いろいろな可能性が頭に浮かぶ中、ある者・・・のとった安易な行動でうまく回り始めた「アグリ神標津」にとんでもない「招かれざる客」も来ることになるとは、1ミリも考えてなかった。

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