『北の大地のファーストペンギン2025~限界集落復興と結婚したい訳あり男女達の物語~』

M‐赤井翼

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第2部 エピソード2024

「新年の大阪訪問」

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「新年の大阪訪問」

 松の内が明けると稀世と晶は大阪の営業先へ新年のあいさつ回りと、新事業に関する営業出張に向かった。LCCで前日の夜に大阪に入り、4日間で11件回るという強行軍だったが、今年1年の「アグリ神標津」の「BtoB」事業の行方の50パーセント以上の方針が決まる大切な訪問であるのは晶も十二分に理解していたので今の活躍を知る「旧友」からの誘いは断らざるを得なかった。

 到着初日の夜はホテルにチェックインした後、稀世と晶はすぐに門真市の金城司法書士事務所の副島の元に向かった。
「あけましておめでとうさん。安さんも立花さん、今年もよろひこー!安さんのおかげで、出口君や女性陣は脱落することなくみんな頑張ってくれてるんやな。安さんが送ってくれた売り上げと経費を見させてもらったけど、JAオンリーの納品時より、粗利率が60パーセント以上上がってるみたいやな。肉、乳製品は好調みたいでよかったわ。ホルモンや「異食」ネタは牡の子牛を2歳まで育てるプランが確立したら今の3倍の利益になるから今しばらくは頑張ってや。
 あと、菅野さんのところに続いて加藤さんのところの畜舎を活用した第2野菜工場が拡張できると冬の収益が安定してくるわな。フルーツにチャレンジする案も面白いと思うで。ただ、今やってるチマサンチュやルッコラ、ラディッシュと違って長期育成物は難しいから利益率よりも「プロ」の知識をしっかりと使わせてもらうんやで。
 そんで新事業の、村、道の補助金を使った仮「入村」の貸家、近隣農家への野菜工場の賃貸貸農場事業の不動産事業を進めて、温調畜舎での病気と産前産後の牛の預かり事業については出口君の方に素案は送ってるから、「獣医」を確保せなあかんな。今年は畜産系の大学、高校への「人員募集」の求人を出すのを忘れなや。」

 新年のあいさつは数秒で終わり、いきなり具体的な経営計画の話に入るところは(あぁ、師匠らしいなぁ…。ゆっくりお礼を含めて飲もうと思ってたけどここは「仕事優先」やな。)と稀世は思いつつメモを控え続けた。
 晶が年末に依頼していた「BtoB」の肉、乳製品関連の事業者のビッグデータについては、「日本橋の「名簿屋・・・」から仕入れといたで。殆どは昔からの地元の業者やからええねんけど、そこを買収した「ややこしい・・・・・」外国人バイヤーの「先買い」には気を付けるんやで。」と注意喚起してくれた。副島が「言い含んだ」事を理解している晶は「気を付けます。」と答え、ビッグデータの入ったUSBメモリーを受け取った。
 話題は尽きず、気がつけば終電時刻に近づいていた。最後に副島から「今年は飼育牛の頭数がめちゃくちゃ増える訳やから休眠畜舎改造やコンポスト牛糞燃料と「バクシート・・・・・」製造の為に技術系の男の子を1人送らせてもらうわな。「川崎健司かわさきけんじ」君っていうエンジニアやねんけど、「元いじめられっ子」で職場でのパワハラで「心を病んでる」んやけど安さんに「心のリハビリ」を任せてええかな?」と宿題をもらい金城司法書士事務所を後にした。

 翌日の午前中は「JOC強化委員会」を訪れた。ボーンブロスを採用してくれた管理栄養士との面会は叶わなかったが、格闘系競技の強化委員役員の「篠原弘道しのはらこうどう」が稀世と晶を迎えてくれた。秋から納品している「牛骨」により、選手の健康管理で良い結果が出ているとの事だった。篠原が声掛けをすれば、格闘系以外の競技にも普及は可能だという状況であることが分かった。
「合成飼料無しで飼育されている牛の個体数には限界がありますので、その件につきましては「預かり・・・」とさせてください。神標津で生まれた「新生牛」に関しては、牡は2歳、雌は繁殖を終えるまでの4ないし5歳になれば安定供給できるようになります。5年後のロサンゼルスオリンピックには安定供給できるように頑張ります。」
と晶が回答し、熱い握手を交わして「牛骨」についての継続売買契約が確定した。
 
 その日の午後は「フォアローゼス」の事務所に2人の姿があった。中島彩雲、空技廠桜花、三菱秋水、川崎飛燕は稀世とハグを交わし、晶も温かく迎えてくれた。実質的に1月1日からスタートした彼女たちの「健康と美プロジェクト」という音楽以外の事業の中で、「ボーンブロススープ」と「無農薬・・・野菜」、「無添加バター」、「無添加チーズ」は好調でこの先の売り上げ増加が期待できると聞かされた。
「稀世姉さんやなっちゃん、陽菜ちゃん、礼ちゃんと踊った「ダンシング・バター」も好評ですよー!「頑張るぞ!」の音源は前の会社の「権利」なんで今年はオリジナルで再度プロデュースしますよ!
 寝屋川で頑張ってるインディーズで「シュタインズ」っていう私のお気に入りバンドがあるんですけど、そこに「曲」をお願いしようと思ってるんですよ。その時は稀世姉さんも一緒に踊ってくださいね!
 晶さんはよかったらうち・・のユーチューブにも出てくださいね。私たちもアラサーに入る中、「美魔女」って憧れてます。晶さんの料理で「美」が保たれてるっていう実例として紹介させてくださいね。」
 フォアローゼスの4人との女子会トークはビジネス要素を含み、彼女たちの求める「ビジネス」に関する希望とニーズを拾わせてもらい、稀世は晶と「早急に実現可能」なものと「少し時間を要するもの」を判断して、しっかりと稀世が説明した後、フォアローゼスとの「業務委託契約書」を交わした。

 2日目から4日目は営業先訪問に徹した。稀世と晶の関係者である既存採用店と商談中の見込み客を訪問した。晶がビストロチェーン店に所属していた頃の中堅の「食材卸商社」を訪問した際に、晶の店の営業担当で仕事以外にもいろいろと相談に乗ってくれた12歳年下で懇意にしていた「小原靖おはらやすし」と面会する機会があった。
「あー、立花さんご無沙汰しております。突然、退職されたって聞いてて心配してたんですよ。うちの商材がキャンセルになった際にいろいろとお骨折りいただいたことでご迷惑かけちゃったんですか?
 それともの面倒な客というかストーカーが原因だったんですか?ネットでの情報しか僕は知らないんですけど立花さんが悪いとは全然思ってないんですけど、真実を聞けないまま辞められちゃったんで…。
 でも、今、こうして元気な立花さんのお顔を見られてうれしいです。今のお仕事内容も事前に拝見させていただきましたので、今後もお付き合いしてもらえると個人的・・・に嬉しいです!また、お仕事でご一緒させていただく機会がありましたら何なりと申し付けてくださいね。立花さんの為でしたら、ここを辞めて神標津まで行きますから。」
  晶を前に照れながら話す靖の様子を見て稀世は「何か・・」を感じた。(まあ、好意的に取引を応援してくれてるんやから「良し」とするか…。)と思った稀世の直感が後に神標津村で「大事件」につながることになるとはその時は全く予想していなかった。

 翌日は東大阪の発送代行の倉庫事業者を訪れ、設備見学とシステムの研修を受けた。「あー、そんな事までできるんや?」、「この値段でそこまでしてくれんの?」、「ぎょへー、それは使わな損やな!」と稀世は発送代行システムの詳細を聞いて、頭の中で次々とビジネスモデルが広がっていった。
 晶も同様で「小規模多品種」の対応が神標津での手配と比べると「低コスト」でできる事を知り、北海道での提携各社の内地での発送代行を新たに「アグリ神標津」で仲介するプランが頭に浮かんだ。オンラインで在宅勤務も可能な業務であれば、神標津に移住しなくてもどこに居住していようと可能な事が発送代行業者からの提案ではっきりした。
 「近隣の酪農家や少し離れて漁村のホタテや蟹の発送代行なんかも可能ですよね。酪農作業はダメでも在宅でのPC作業ならいける人も巻き込んで行けば今後広がるビジネスチャンスを拾えると思うんですよ。」
と発送代行会社を出ると晶は稀世に話しかけた。
「せやね。副島のおっちゃんの提案にもあったけど、大阪起点で商品発送ができれば関東圏から九州までが商圏になるからね。まあ、マージンビジネスはある意味元手いらずでできる商売やから、将来的にはありかもね。晶さんって「現場」の人やと思ってたけど、そんなところまで考えてるんや。あれ?もしかして昨日の小原さんの事を考えてました?もしかして「そういう・・・・関係」やったりするんですか?」
 稀世が悪ふざけして晶に問うと、一回りも年下の靖にそういう・・・・気持ちはないが仕事のパートナーとしては信頼しているという返事だったので稀世はそれ以上突っ込むことは控えた。

 午後は晶の関係する業者とさくらが掴んだ客先を回り、既存取引先からは新たなニーズと今後の展開についてしっかりと話をすることができた。新規客の紹介ももらい有益な商談ができた。
 夕食は副島が「アグリ神標津」のホルモンが使用されている京橋の汚い・・焼き肉屋に連れて行ってくれた。笑顔でホルモンを食べるエンドユーザーの笑顔を見て晶は「いままでもったいない事してたんやね。副島さんが直さんの所のサウナの源泉で発電できるって教えてくれなかったら無かった話ですもんね。特に「これ・・」は商品になるなんて考えたこともなかったです。」と感謝の言葉を並べる晶は「2玉」で3000円で販売されている牛の睾丸の揚げ物の「ロッキーマウンテンオイスター」を笑顔で頬張りビールをあおった。

 出張最終日の午前中は、さくらが取ってくれていた新規顧客のアポイント先を回っていった。事前に葵と多世の作ったホームページを見ていてくれたので商談はスムーズに進み、新たな顧客を開拓して12時過ぎの釧路行のLCCで帰途に就くことができた。その飛行機には副島から紹介された川崎健司も同乗していた。

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