幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百七十九話:不死の王討伐7

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「アンデットの王、我々倒す」

道中に出会った熊人族ベアルのラムウェイさんの話によると、何でも、この辺りに熊人族ベアルの移動集落があるようで、先日のアンデット軍団の侵攻に少なくない被害にあってしまったようだ。察知するのが遅れてしまい、結果数人の熊人族ベアルが犠牲になってしまった。

丁度その時、屈強な戦士たちは、獲物を獲る為に皆が出払っており、集落には女子供しか居なかったのも、被害拡大に繋がってしまった。
この事に激怒した族長は、今回の侵攻を手引きした者を抹殺するべく、集落でも手練れの彼等20名をアンデットの王抹殺命令を下したと言う。

「僕らの目的も、貴方方がアンデットの王と呼んでいる者を倒す為に、その現場に向かっています」

ギールさん的には、熊人族ベアルたちと共闘したいようだ。

熊人族ベアルは、単純に力だけならば、全獣人族の中でも1,2を争う程と言われていた。
結局はレベルが物を言う世界なのだけど、チラリと鑑定アナライズで盗み見ると、20人皆がレベル40以上という猛者たちだった。
一番高いのは58で、次に高いのは、唯一の人族に近い姿をしているラムウェイさんだった事にも驚いた。

確かに、彼等ならば十分な戦力になるだろう。
そして問題となるのは、不死の王ノーライフキングの放つ、威圧に耐えれるかどうかだった。

ギールさんからその事を聞いて、すぐにユイたちと猛特訓していた。
俺の放つ威圧でユイたちの訓練を行っていた。
威圧は、自身とのレベル差があればある程にその効果は上がる。
不死の王ノーライフキングの放つ威圧のレベルがどの程度かは不明だが、そんなに差はないと願いたい。

威圧にかかると、バッドステータスとして状態異常が恐怖となる。
しかし、威圧は慣れる事で克服する事が出来る。

ミーチェさんとマーレさんは、対威圧用に特殊な術式を施した首飾りを持参していた。
ゴエールさんは、「死んでも耐えてみせる!」と前回の二の舞にはならないと断言したので、その言葉を信じている。

熊人族ベアルたちは、種族の特性として、威圧の類は完全無効化出来ます」

マーレさんだった。

知らなかったけど、熊なんだから、逆に威圧を放つ方がシックリくるのは確かだ。
ま、威圧も万能じゃないって事だね。
俺の威圧が全く効かない相手も過去にも複数いたのは事実だった。

その後、共闘を承諾してくれた熊人族ベアルたちと、問題の洞窟へと向かう。
彼等の進軍速度に合わせる必要がある為、ゆっくり飛行する事になった。

ギールとゴエールは、熊人族ベアルたちと一緒に地上を進んでいる。

そろそろ洞窟に近付いてきたと思った拍子に、範囲探索エリアサーチに反応が現れた。
すぐに、地上を進軍中のギールさんたちに合図を送る。
奴は、真っ直ぐにこの地点より1km先にいる。
位置的に見ても当初の想定通り、洞窟の中に居るようだ。
恐らく奴も万全の状態で待ち構えているはず。
これより先は、より慎重に行動する必要がある。

「ユイも何か気が付いたらすぐに教えてくれ」
「了解!」

察知能力は、盗賊でもあり、狐人族ルナールでもあるユイの方が何倍も上なのだ。

てっきり、多数の眷属で守りを固めているものと思っていたが、洞窟の入り口を守っていたのは、僅か3対のヒュドラだった。

しかし、その姿を見た途端、皆の表情が強張り、尻込みしている。
ヒュドラは、そのサイズによって強さが分類される。
目の前のヒュドラは、少なく見積もっても体長10m程はあるだろう。
しかもそれが3対もいるとなると、尻込みするのも頷ける。
仮に体長10mだとすると、等級は最大の10で、レベルは100という事になる。

「ありえねえ・・・この世界が滅ぶレベルだぜ・・」

地上では、少々パニックに陥っていた。

確かにレベル100だとすれば、簡単には勝てないだろう。
でもそれは、あくまで正攻法で真正面からぶつかった時の話だ。

「あのヒュドラの弱点は火だ!アリス、レーザービームをお見舞いしてやれ。ルー、準備出来てるよな?遠距離3連射頼むぞ」

明らかに相手の射程外からの攻撃に、少しズルい気もするが、こっちも命のやり取りをしているんだ。
生き残る為ならなんだってする。

直後に放たれた俺たちの攻撃に、戦意喪失していた地上部隊の魔術師も一緒に魔術を畳み掛ける。
熊人族ベアル側にも魔術師がいる事に少しだけ驚いたのは内緒だ。
イメージは戦う前衛系熊さんなんだもん・・。

遠距離からの奇襲にあっけなく、3対のヒュドラは地に伏せた。
ハリボテもいいところだ。
抵抗すらしていなかったように見えたけど・・。

ヒュドラが倒れると、地上部隊から惜しみない歓声が挙がる。

「貴方達は、一体何者ですか・・」

ミーチェさんの表情がさっきからおかしい。
尊敬の眼差しで見られている気がする。

「お兄ちゃんは、とっても強いんだよ!」

いやいや、援護射撃はいらないから。

「全員の力だよ」

謙虚な姿勢を貫く。

さて、上空からの進軍はここまでだな。
いっその事、この洞窟毎吹き飛ばしたいのはやまやまだけど、流石にそれはダメだよな・・


地上部隊と合流しようと、空飛ぶ絨毯の高度を下げようとした時だった。

洞窟の方から、凄まじい魔力の奔流を感じた。
それは、俺以外も感じとっていたようだ。

巨大な光の柱が天から降り立ったと思ったら、次の瞬間、その地点を中心にまるで、大地が波打つかのように波紋状に周りの地形を変えながら超スピードで全てを破壊し、広がって行く。

声を上げる暇すらなかった。

凄まじい轟音に、隣にいるユイの声でさえ届かなかった。

その余波が上空にいる俺たちにも襲い掛かったが、常時障壁を展開している甲斐もあって、その場から少し流されただけで、被害はなかった。

上空から見るに、地上の部隊は絶望的かと思われた。

「そんな・・・」

ミーチェさんが、両膝を付き崩れる。

「大丈夫ですよ、全員無事です」

土煙でまだ視認は出来ないが、範囲探索エリアサーチに反応している数に変化はなかった。

「アースストレインよ」

ミーチェさんとは違い、マーレさんは冷静さを崩さなかった。

「あれが、そうですか・・話には聞いていたけど、ここまでとは・・」

見渡す限りの大地が掘り返され、原形を留めていなかった。

「きっと、何千人で攻めて来ようが、あれ1発で終わっていたわね」

確かにその通りだ。
地上部隊が無事だったのは、ゴエールさんが何かスキルを使ったのだろう。
一瞬だが、障壁と似たような何かを使っているのが見えた。

アースストレインの発動場所は、恐らく洞窟の最奥地だろう。
その洞窟すらも同様に更地になり、原形を留めていない。

「あんなのを何発も撃たれれば、たまったもんじゃないな」

果たして、俺の障壁でどこまで防げるものか・・

不死の王ノーライフキングの反応はまだ残っている。
最初に発見した地点と何ら変わっていない。

地上へと降り立った俺たちは、すぐにギールさんたちの元へと駆け寄る。

「ミーチェ!すぐにゴエールに回復を!」

ギールさんの腕に抱きかかえられるように倒れていたのは、ゴエールさんだ。
頑丈そうなフルプレートが見るも無残に損傷していた。

「ゴエールは、さっきの魔術を全て自分一人で肩代わりしたんだ・・」

盾騎士のスキルの中に確か、仲間の攻撃を全てその身に受けるみたいなのがあったはずだ。
ゴエールは、防御結界を展開させたが、それでも耐え切れずにその技を発動させたという事だろう。
あれだけの魔術で、逆に生きている方が奇跡と言ってもいいかもしれない。
ミーチェさんは、優秀な聖職者だ。
治癒ヒールLv3だし、任せておいても大丈夫だろう。
それに、今はあいつから目を離さない方が良さそうだしね。

コツコツと、音を立てながら隠れる気配も見せずにそいつは、俺たちの前に姿を見せた。
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