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第十四話:大魔術師との出会い
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範囲探索とセリアの活躍のおかげで、誰にも気付かれる事なく、俺は宿屋の自室まで戻って来ていた。
「お兄ちゃん、その子が捕らわれのお姫様?」
ユイが少し冷たい目で見ている気がするが、気のせいだろう。
クロも元気そうだった。尻尾を振って出迎えてくれている。
エルフ嬢をそっと下に降ろし、仮面を取る。
「ああ、そうだよ」
エルフ嬢の方へ向き直り、自己紹介する。
「自己紹介がまだでしたね。俺の名前はユウ。で、こっちがーーー」
俺が説明しようとしたところでユイが強引に割って入る。
「お兄ちゃんの妹のユイです!お兄ちゃんは、私だけのお兄ちゃんなんだよ?」
エルフ嬢が一瞬クスッと笑っていたが、すぐに表情を取り繕った。
「あ、えと、ごめんなさい。あまりにも仲がお宜しいので、少し羨ましくなっちゃって」
エルフ嬢は続ける。
「私の名前は、エレナと言います。この度は危ないところを救って頂き、本当に、本当にありがとうございました」
仰々しく一礼する。
「急かしてしまって申し訳ないけど、まだ危険は去っていないんだ。君がいなくなった事が知れれば、君を捉えに来る連中がきっとここまで探しに来てしまう。だから、落ち着いたらすぐにでもこの街から出た方がいい」
そう言った直後、セリアが偵察から戻ってきた。
姿は俺にしか見えていないはずだったのだが、エルフ嬢もといエレナにはその気配が分かるようだ。
「バレたようです。今騎士団が招集されています。既に貴族街の方でかなりの人数が集結していました」
もうバレたかのか。
すると座っていたエレナが立ち上がる。
「これ以上貴方がたに迷惑を掛ける事は出来ません。本当に助けて頂きありがとうございました」
エレナは再度礼をして、この部屋を出ていこうとする。
俺は、エレナの手を掴んだ。
こんな少女を騎士団が躍起になって捜索しているんだ、どうせここから出ても出なくてもすぐに見つかってしまう。
俺が手助けしない限りは。
ここから先、エレナを助けるなら俺も覚悟を決めなければならない。お尋ね者になる覚悟だ。
だけど俺の中では既に答えは決まっていた。
「ユイ。すぐに支度するんだ。この王国から出るぞ」
ユイは、察してくれたのか、アイアイサーのポーズを取る。
「え、でもそれでは貴方たちに迷惑が・・」
俺はエレナの口に人差し指を立てた。
「このまま君を行かせてしまって、もしまた捕まって何かあった時、きっと俺は死ぬほど後悔します。どのみち近日中にはこの王国を出ようと思っていましたので、気にしないで下さい」
セリアが呆れた顔をしていた。
「全く、ご主人様はどうしていつもこうなのかしらね。でもそういうところがあるから私の興味が尽きないのですけどね」
「おいおい、俺はセリアのご主人様になった覚えはないぞ。あくまでも宿主契約のはずだ」
2人のやり取りを見ていて、エレナが口を開く。
「ユウ様は精霊様とお話しが出来るだけじゃなく、宿主をされているのですね。凄いです」
やはり、なんとなくだがセリアが見えているようだ。
「エルフ族は、もっとも精霊に近しい種族ですので、私が姿を消していても、その気配だけは分かるのだと思います」
セリアが俺の疑問に答えてくれた。
ユイが支度を終えて、今度は準備完了のポーズを取る。
ポーズ的には、アイアイサーと同じなんだけどね。
俺たち3人と1匹は宿屋を出ていく。
カウンターにホリーさんとココナさんに書置きを残しておく。
まだ辺りには追手は来ていないようだ。
俺達はここから一番近い南門を目指して走った。
だが1つ問題がある。門番は24時間監視している。
それは以前確認した事があるので間違いないだろう。
俺やユイは通れても、エレナは通れるだろうか?
いや、無理だな。
やはりいつもの手でいくしかない。
俺達は南門の近くまで辿り着いた。
良かった、まだ追手は門までは来ていないようだ。
封鎖されていなくて助かった。
いつものように門番が1人だけのようだ。
「よし、セリア頼む」
セリアが頷く。
そう、セリアの睡眠作戦だ。
無事に門番を眠らす事に成功したので、その隙に門を出て、外へ向かい走り出した。
もちろんエレナは、俺がお姫様抱っ子している。
隣でユイが頬をプクッと膨らませているが、気にしないでおこう。
30分程走り、少し休憩する事にした。
「とりあえず、ここまで来れば、しばらくは大丈夫だろう」
「エレナさん、このまま貴故郷まで送り届けますよ」
「エレナと呼んで下さい。それと、私が攫われた場所は、ここからかなり距離があります。あそこに見える山の向こう側なんです。辺りは暗いですし、道中も危険でーー」
俺は再びエレナの口に人差し指を立てた。
「山一つならば、走ればすぐです。俺たちは体力には自信があるので」
と笑って見せる。
先程も30分程度は、かなりの速度で走っていたが、ユイはともかく、クロも息を切らしていなかった。
「さてと、休憩は終わりだな。暗いうちにもう少し距離を稼いでおこう」
誰もが寝静まる真夜中の真っ黒な密林地帯を目的地に向かって、ただひたすらに走った。
道中のモンスターは無視だ。
しばらく走っていたら、暗視スキルを獲得してしまった。
相変わらず便利な設定のようだ。
スキルを獲得してからは、夜なのにまるで昼間の明るさのようにハッキリと見えている。
自分がどんどん人間離れしていくのが、正直怖い。
途中何度か休憩を挟みながらも朝日が昇る頃には目的地周辺まで辿り着いていた。
さすがにもうここまで追手がくる事はないだろう。
ここからはエレナを降ろして一緒に歩いて向かう。
恐らくエルフ側も捜索しているはずという事なので、引き渡すのを見届けたら俺たちのミッションはクリアだ。
俺自身、エルフの里には非常に興味があるけど、助けたお礼に見せて欲しいなんて、図々しい事を言う気は更々ない。むしろ、謝るべきだと思っている。
しばらく進むと範囲探索に反応があった。
恐らくエレナの捜索隊だろう。
良かった。どうやら無事に任務は達成出来そうだな。
捜索隊が視界に入ってきた所でエレナが呟く。
「私の捜索隊のようですが、でもなぜ・・」
最後の方が少し聞き取れなかったが、聴き直す必要もないだろう。
この時の判断が後に後悔するハメになる事をこの時の俺は知る由も無かった。
「エレナ様!」
エルフ捜索隊が、エレナに気が付いたらしい。
やけに多い。捜索隊の人数は20人近くいた。
俺は、エレナに捜索隊で間違いない事を再度確認し、彼らに近付く。
捜索隊のリーダー格と思われる男が話しかけてきた。
「エレナ様、ご無事で何よりです」
エレナ様?
エレナは身分が高いのだろうか。
「ええ、この方々に危ないところを救って頂きました」
横目でチラッとエレナを見ると、少し不機嫌そうだった。あまり仲が良くないのだろうか。相手の詮索は良くないので気にはなったが、気にしない事にする。
リーダー格の男は、俺の方を見ている。
「この度は、エレナ様を人族の手から救出して頂きありがとうございました。なんとお礼を言って良いやら」
「気にしないで下さい。発端は、私たち人族側でしょうから、逆に謝らなければなりません」
その必要はありません。とリーダー格の男が答える。
その後いくつか会話を交わした。
さて、長居するつもりもないし、無事にミッションコンプリートしたので、俺たちはここで退散するとしよう。
エレナに別れの挨拶を告げ、その場を後にする。
その際、エレナは何か言いたげだったが、口ごもっていた。
何故か俺にはエレナとはまたすぐに会えるようなそんな気がしていた。
俺たちの次なる目的地は、プラーク王国から南へ行った先にあるバステト村だ。
前にエスナ先生に聞いたのだが、偉大な魔術師が暮らしているところでもあるのだ。
俺は、その人に一目会っておきたかったので、次の目的地に決めていた。
ここからそんなに遠くないしね。
特に急いでいるわけでもないので、俺たちは道なりに景色を眺めながら、まったりと進んでいた。
日が暮れ始めた頃に目的地の村へ到着する。
宿屋を探して、本日はそこで寝泊まりする事にした。
1泊10銅貨と格安だ。
プラーク王国では平均50銅貨だったので、単純に5倍も違う。実に安い。
いわゆる地方と都会との物価の違いだろうか。
格安だったので、部屋は期待していなかったのだが、意外と広い。
ホリーさんの所とあまり変わらないくらいの広さだった。
しかし、この宿には食堂がないらしく、外に食べに行くのも面倒だったため、ストレージから出来立てほやほやの料理を取り出し、俺たちはペロリと平らげた。
その間クロは俺の魔力をチューチュー吸っていた。
若干だが、吸われる量が多くなった気がする。
朝になり、重量感を感じて目を覚ます。
「やっぱりお前か・・」
またしてもユイが、俺の上で大の字になって寝ていた。一体どう寝たらそんな事になるのだろうかと考えたが、答えが見つかりそうになかったため、いつものようにグリグリで優しくユイを起こして、着替える。
戦闘スタイルではなく、商人スタイルだ。
ユイが頬をプクッと膨らましているが、気にしない。
「置いていくぞ」と声を掛けると、慌てて準備していた。その際、服を全部脱ぐのはやめて欲しい。せめて俺がいない時にしてもらわないと、目のやり場に困る。
俺たちは、下で待ってるからと伝えてクロと一緒に部屋を出た。
しばらくしてユイも降りて来て、一緒に朝から村の探索スタートだ。
東京ドーム1個分程度の広さだろうか?
すぐに街外れに辿り着いてしまった。
すれ違う人が興味深そうにこちらを見ている。
正確に言うとユイをなのだが。
まぁ、予想通りの反応な訳で気にした方が負けだ。
俺たちは朝食ついでに朝から出店していた屋台を見つけたので覗いてみる事にした。
いい匂いがする。
形も味もイカ焼きのような食べ物だったが、イカではなく、ラザと言う陸上生物らしい。
海中ではなく、陸上に住んでいるイカを想像してみた。
まぁ、なくはないな。味も旨いし。某ゲームでは、イカは空を飛んでいたしね。
ラザ焼きを頬張りながら、散策を続けていると、武具屋があったので入ってみるが、王国で見たような良い品は無かったので、すぐに店から出る。
規模とすれ違う人の数で単純計算だが、人口は1000人程度だろうか。
いつの間にかユイが子供達に囲まれている。歳は、ユイと同じかそれ以下だろう。
「おねーちゃん、かっこいい!」「動くお耳だー」「触ってみてもいい?」「尻尾がフリフリしてる!」
など、物凄い人気振りだ。
ユイの顔を見るが、嫌そうにしていなかったので、そのまま様子を見ていた。
ユイ自身、まだ子供という事もあり、すぐに子供たちと打ち解けてしまったようだ。何とも微笑ましい光景だ。
俺は、通りすがりの人に質問していた。
ここへ来た目的の人物についての聞き取りが目的。
一通り村をグルりとしてみたが、それらしい人物がいなかったのだ。
答えはすぐに分かった。
どうやら、変わり者らしく、街外れの丘に住んでいるとのこと。
子供たちと別れて、教えてもらった場所を目指す。
ユイは、少し残念そうにしていた。
村から徒歩20分くらいの所に一軒家が見える。
恐らくあれがそうだろう。
小屋の入口の前まで来たのでおもむろに声を出してみた。
「すみませーん」
少し待ったが、反応がない。
この感覚前にもあったな。初めてエスナ先生の家に行った時もこんな感じで、ドアが勝手に・・。
ん?
ドアが勝手に開いたのだ。
俺は寸でのところで避けることに成功した。
「危ないな・・」
危うくまたゴツンするところだった。
すると小屋の中から男の声が聞こえてきた。
「入っていいぞ」
いやにフレンドリーだな。もしかして誰かと勘違いしているとか?
俺たちは、恐る恐る小屋の中に入っていく。
すぐに声の主が視界に入ってきた。
一言で表すならダンディーなおじ様といった感じだろうか。
俺はエスナ先生から、偉大な魔術師としか聞いていなかったので、てっきりもっと年配のいかにも大魔導士のような、おじい様を想像していた。
一文字しか違わないが、外見はぜんぜん違う。
しかし、目の前にいるのはどうみても40代のガッシリした体格のとても魔術師には見えない。それに若い。
念のために本人かどうか確認してみることにした。
「偉大な魔術師がここにいると聞いてやってきました。貴方がそうなのでしょうか?」
ダンディーなおじ様は、俺を舐めるように全身を見ている。
正直ちょっと怖い。
そして、口元に手をやり、ふむふむと言っている。
「あんたが、エスナ師匠の弟子か」
!?
俺は正体を明かしていないのになぜ分かったのだろうか。返答にためらっていると、ネタを明かしてくれた。
「いやいや、すまないね。いきなり言っても驚かせてしまうね。別にエスナ師匠に聞いた訳ではないんだ」
先生に直接聞いたのではなければ、一体どうして、もしかしてこの人はエスパーなのだろうか・・。
後ろから水晶のような物を取り出して、目の前の机の上に置く。
「実は、この水晶を使い、これから自身に起こることを事前に確認していたのさ。この水晶に君が映ったから、君の事を調べていたってわけだ」
なるほど、どうやらこの水晶は未来や過去を見ることが出来る魔導具らしい。
なんて便利なものがあるんだ。
「納得です。それで、こちらの質問に対しての返答は?」
「おっと、そうだった、すまんすまん」
ダンディーなおじ様が苦笑いしている。
「私の名前は、クラウディル・イエイガー。偉大かどうかは分からないが、魔術師をしている」
「俺も自己紹介が遅れました。名前はユウ。で、こっちが」
「ユイです!ユウの妹です」
ユイはなぜかラジャーのポーズを取っていた。
「で、こっちがクロですー」
クロがワン!と吠えている。
その後自己紹介がてら、お互いの素性を話していた。
ダンディーなおじ様もといクラウさんは、先生の単なる知り合いではなく、先生の弟子だったそうだ。
先生は弟子は取らないと言っていたのだが、どうやら、彼が一番弟子で、俺が二番目との事だ。
見た目は若そうなクラウさんだったが、実年齢は70を過ぎているそうだ。
若作りにもほどがある。詐欺クラスと言ってもいいだろう。
名前:クラウディル・イエイガー
レベル:50(魔術師)
職種:魔術師
スキル:魔力注入、火撃Lv4、火嵐Lv4、火道Lv1、火壁Lv3、リフレッシュLv3、念話
さすがに先生の一番弟子だけあって、レベルだけで言うとこの世界での英雄級だ。
クラウさんが、表情を強張らせて話を変えてきた。
「実は、お前の近況を調べているときに妙な映像が映ったんだ」
妙な映像とはなんだろうか。少しだけ胸騒ぎがする。
「ここへ来る途中にエルフを助けなかったか?」
「あ、はい。無実の罪で捕らわれていたので、救出しました」
クラウさんの表情が一層強張る。
「どうやら、助かっていないようなんだ」
!?
最初はクラウさんの言っている意味が分からなかった。
そんなはずはない、だってあの時エルフの捜索隊に引き渡したからだ。
しかし、嫌な予感がしていた。
あの時、そうだ、捜索隊を見たときエレナが変な顔をしていたんだ。
俺の表情が変わったことで、クラウさんも気が付いたのだろう。
「助けに、行くのか?」
「はい」
クラウさんが立ち上がり、水晶の前に座り直していた。
「そうくると思って、事前に調べておいた」
そして、とんでもない事を話し出した。
「エルフの嬢ちゃんは、明日の正午に公開処刑される」
「な、なんっ・・」
ある程度予想は出来たはずなんだが、俺はそれを考えたくなかったのかもしれない。
俺は、エレナを助けたはずだった、しかし未来は変えられていなかった。驚愕の事実に俺は声が出せないでいた。
「未来は変えられる。可愛い弟弟子君の為に一つアドバイスをしよう」
俺は伏せていた顔を上げる。
「単純にまたエルフの嬢ちゃんを救出しただけでは、二の舞になりかねない。だから、根本原因を排除する必要がある」
少し間をおいて、クラウさんが尋ねてきた。
「どうすればいいか分かるか?」
俺は少しの間考えてから、答えた。
「首謀者を捉える・・ですか?」
クラウさんは頷き、水晶で知りえた情報を話してくれた。
時は少し経ち、俺は今全速力でプラーク王国に向かって走っている。
辺りは真っ暗だった。
未来が本当ならば明日の正午にエレナは処刑される。
それまでに首謀者を見つけ出し、言い逃れ出来ない証人を突き付けてやる必要がある。
ユイとクロは、クラウさんに預けてある。彼は先生の弟子である証を見せてくれていたので、まず信用出来るだろう。
俺はセリアと一緒に行動している。手分けして探す手はずだ。
そして、何とか日が昇り始めた頃にプラーク王国に到着することが出来た。
セリアは、首謀者の動向とエレナの様子を見て来てもらうことにした。
俺は、今回のカギとなる、証人を探している。
2人とも事前にクラウさんの水晶で顔と名前は把握していたので、あとは探すだけだった。
しかし、この王国は広い。2万人もいる中から目的の人物を探す必要があったのだ。
期限は迫っている。タイムアップとなっては、意味がない。
町中を走り回っていた。冒険者に聞いたり、酒場で聞いたりと必死だった。
そして公開処刑が行われる正午となる。
今、街の中央広場に人だかりが出来ている。
群衆が騒ぎ立てる。
「公開処刑が始まるってよ!」「なんでもこの国を滅ぼそうとしていた奴だそうだ」「エルフ族って噂よ」
中央広場に処刑台が立てられている。
そこに、1人の少女が執行人に連行されてやってきた。
執行人以外にもう1人男が見える。
そう、今回の首謀者のアルベルト公爵だ。
そして今、まさに公開処刑が執行されようとしていた。
「お兄ちゃん、その子が捕らわれのお姫様?」
ユイが少し冷たい目で見ている気がするが、気のせいだろう。
クロも元気そうだった。尻尾を振って出迎えてくれている。
エルフ嬢をそっと下に降ろし、仮面を取る。
「ああ、そうだよ」
エルフ嬢の方へ向き直り、自己紹介する。
「自己紹介がまだでしたね。俺の名前はユウ。で、こっちがーーー」
俺が説明しようとしたところでユイが強引に割って入る。
「お兄ちゃんの妹のユイです!お兄ちゃんは、私だけのお兄ちゃんなんだよ?」
エルフ嬢が一瞬クスッと笑っていたが、すぐに表情を取り繕った。
「あ、えと、ごめんなさい。あまりにも仲がお宜しいので、少し羨ましくなっちゃって」
エルフ嬢は続ける。
「私の名前は、エレナと言います。この度は危ないところを救って頂き、本当に、本当にありがとうございました」
仰々しく一礼する。
「急かしてしまって申し訳ないけど、まだ危険は去っていないんだ。君がいなくなった事が知れれば、君を捉えに来る連中がきっとここまで探しに来てしまう。だから、落ち着いたらすぐにでもこの街から出た方がいい」
そう言った直後、セリアが偵察から戻ってきた。
姿は俺にしか見えていないはずだったのだが、エルフ嬢もといエレナにはその気配が分かるようだ。
「バレたようです。今騎士団が招集されています。既に貴族街の方でかなりの人数が集結していました」
もうバレたかのか。
すると座っていたエレナが立ち上がる。
「これ以上貴方がたに迷惑を掛ける事は出来ません。本当に助けて頂きありがとうございました」
エレナは再度礼をして、この部屋を出ていこうとする。
俺は、エレナの手を掴んだ。
こんな少女を騎士団が躍起になって捜索しているんだ、どうせここから出ても出なくてもすぐに見つかってしまう。
俺が手助けしない限りは。
ここから先、エレナを助けるなら俺も覚悟を決めなければならない。お尋ね者になる覚悟だ。
だけど俺の中では既に答えは決まっていた。
「ユイ。すぐに支度するんだ。この王国から出るぞ」
ユイは、察してくれたのか、アイアイサーのポーズを取る。
「え、でもそれでは貴方たちに迷惑が・・」
俺はエレナの口に人差し指を立てた。
「このまま君を行かせてしまって、もしまた捕まって何かあった時、きっと俺は死ぬほど後悔します。どのみち近日中にはこの王国を出ようと思っていましたので、気にしないで下さい」
セリアが呆れた顔をしていた。
「全く、ご主人様はどうしていつもこうなのかしらね。でもそういうところがあるから私の興味が尽きないのですけどね」
「おいおい、俺はセリアのご主人様になった覚えはないぞ。あくまでも宿主契約のはずだ」
2人のやり取りを見ていて、エレナが口を開く。
「ユウ様は精霊様とお話しが出来るだけじゃなく、宿主をされているのですね。凄いです」
やはり、なんとなくだがセリアが見えているようだ。
「エルフ族は、もっとも精霊に近しい種族ですので、私が姿を消していても、その気配だけは分かるのだと思います」
セリアが俺の疑問に答えてくれた。
ユイが支度を終えて、今度は準備完了のポーズを取る。
ポーズ的には、アイアイサーと同じなんだけどね。
俺たち3人と1匹は宿屋を出ていく。
カウンターにホリーさんとココナさんに書置きを残しておく。
まだ辺りには追手は来ていないようだ。
俺達はここから一番近い南門を目指して走った。
だが1つ問題がある。門番は24時間監視している。
それは以前確認した事があるので間違いないだろう。
俺やユイは通れても、エレナは通れるだろうか?
いや、無理だな。
やはりいつもの手でいくしかない。
俺達は南門の近くまで辿り着いた。
良かった、まだ追手は門までは来ていないようだ。
封鎖されていなくて助かった。
いつものように門番が1人だけのようだ。
「よし、セリア頼む」
セリアが頷く。
そう、セリアの睡眠作戦だ。
無事に門番を眠らす事に成功したので、その隙に門を出て、外へ向かい走り出した。
もちろんエレナは、俺がお姫様抱っ子している。
隣でユイが頬をプクッと膨らませているが、気にしないでおこう。
30分程走り、少し休憩する事にした。
「とりあえず、ここまで来れば、しばらくは大丈夫だろう」
「エレナさん、このまま貴故郷まで送り届けますよ」
「エレナと呼んで下さい。それと、私が攫われた場所は、ここからかなり距離があります。あそこに見える山の向こう側なんです。辺りは暗いですし、道中も危険でーー」
俺は再びエレナの口に人差し指を立てた。
「山一つならば、走ればすぐです。俺たちは体力には自信があるので」
と笑って見せる。
先程も30分程度は、かなりの速度で走っていたが、ユイはともかく、クロも息を切らしていなかった。
「さてと、休憩は終わりだな。暗いうちにもう少し距離を稼いでおこう」
誰もが寝静まる真夜中の真っ黒な密林地帯を目的地に向かって、ただひたすらに走った。
道中のモンスターは無視だ。
しばらく走っていたら、暗視スキルを獲得してしまった。
相変わらず便利な設定のようだ。
スキルを獲得してからは、夜なのにまるで昼間の明るさのようにハッキリと見えている。
自分がどんどん人間離れしていくのが、正直怖い。
途中何度か休憩を挟みながらも朝日が昇る頃には目的地周辺まで辿り着いていた。
さすがにもうここまで追手がくる事はないだろう。
ここからはエレナを降ろして一緒に歩いて向かう。
恐らくエルフ側も捜索しているはずという事なので、引き渡すのを見届けたら俺たちのミッションはクリアだ。
俺自身、エルフの里には非常に興味があるけど、助けたお礼に見せて欲しいなんて、図々しい事を言う気は更々ない。むしろ、謝るべきだと思っている。
しばらく進むと範囲探索に反応があった。
恐らくエレナの捜索隊だろう。
良かった。どうやら無事に任務は達成出来そうだな。
捜索隊が視界に入ってきた所でエレナが呟く。
「私の捜索隊のようですが、でもなぜ・・」
最後の方が少し聞き取れなかったが、聴き直す必要もないだろう。
この時の判断が後に後悔するハメになる事をこの時の俺は知る由も無かった。
「エレナ様!」
エルフ捜索隊が、エレナに気が付いたらしい。
やけに多い。捜索隊の人数は20人近くいた。
俺は、エレナに捜索隊で間違いない事を再度確認し、彼らに近付く。
捜索隊のリーダー格と思われる男が話しかけてきた。
「エレナ様、ご無事で何よりです」
エレナ様?
エレナは身分が高いのだろうか。
「ええ、この方々に危ないところを救って頂きました」
横目でチラッとエレナを見ると、少し不機嫌そうだった。あまり仲が良くないのだろうか。相手の詮索は良くないので気にはなったが、気にしない事にする。
リーダー格の男は、俺の方を見ている。
「この度は、エレナ様を人族の手から救出して頂きありがとうございました。なんとお礼を言って良いやら」
「気にしないで下さい。発端は、私たち人族側でしょうから、逆に謝らなければなりません」
その必要はありません。とリーダー格の男が答える。
その後いくつか会話を交わした。
さて、長居するつもりもないし、無事にミッションコンプリートしたので、俺たちはここで退散するとしよう。
エレナに別れの挨拶を告げ、その場を後にする。
その際、エレナは何か言いたげだったが、口ごもっていた。
何故か俺にはエレナとはまたすぐに会えるようなそんな気がしていた。
俺たちの次なる目的地は、プラーク王国から南へ行った先にあるバステト村だ。
前にエスナ先生に聞いたのだが、偉大な魔術師が暮らしているところでもあるのだ。
俺は、その人に一目会っておきたかったので、次の目的地に決めていた。
ここからそんなに遠くないしね。
特に急いでいるわけでもないので、俺たちは道なりに景色を眺めながら、まったりと進んでいた。
日が暮れ始めた頃に目的地の村へ到着する。
宿屋を探して、本日はそこで寝泊まりする事にした。
1泊10銅貨と格安だ。
プラーク王国では平均50銅貨だったので、単純に5倍も違う。実に安い。
いわゆる地方と都会との物価の違いだろうか。
格安だったので、部屋は期待していなかったのだが、意外と広い。
ホリーさんの所とあまり変わらないくらいの広さだった。
しかし、この宿には食堂がないらしく、外に食べに行くのも面倒だったため、ストレージから出来立てほやほやの料理を取り出し、俺たちはペロリと平らげた。
その間クロは俺の魔力をチューチュー吸っていた。
若干だが、吸われる量が多くなった気がする。
朝になり、重量感を感じて目を覚ます。
「やっぱりお前か・・」
またしてもユイが、俺の上で大の字になって寝ていた。一体どう寝たらそんな事になるのだろうかと考えたが、答えが見つかりそうになかったため、いつものようにグリグリで優しくユイを起こして、着替える。
戦闘スタイルではなく、商人スタイルだ。
ユイが頬をプクッと膨らましているが、気にしない。
「置いていくぞ」と声を掛けると、慌てて準備していた。その際、服を全部脱ぐのはやめて欲しい。せめて俺がいない時にしてもらわないと、目のやり場に困る。
俺たちは、下で待ってるからと伝えてクロと一緒に部屋を出た。
しばらくしてユイも降りて来て、一緒に朝から村の探索スタートだ。
東京ドーム1個分程度の広さだろうか?
すぐに街外れに辿り着いてしまった。
すれ違う人が興味深そうにこちらを見ている。
正確に言うとユイをなのだが。
まぁ、予想通りの反応な訳で気にした方が負けだ。
俺たちは朝食ついでに朝から出店していた屋台を見つけたので覗いてみる事にした。
いい匂いがする。
形も味もイカ焼きのような食べ物だったが、イカではなく、ラザと言う陸上生物らしい。
海中ではなく、陸上に住んでいるイカを想像してみた。
まぁ、なくはないな。味も旨いし。某ゲームでは、イカは空を飛んでいたしね。
ラザ焼きを頬張りながら、散策を続けていると、武具屋があったので入ってみるが、王国で見たような良い品は無かったので、すぐに店から出る。
規模とすれ違う人の数で単純計算だが、人口は1000人程度だろうか。
いつの間にかユイが子供達に囲まれている。歳は、ユイと同じかそれ以下だろう。
「おねーちゃん、かっこいい!」「動くお耳だー」「触ってみてもいい?」「尻尾がフリフリしてる!」
など、物凄い人気振りだ。
ユイの顔を見るが、嫌そうにしていなかったので、そのまま様子を見ていた。
ユイ自身、まだ子供という事もあり、すぐに子供たちと打ち解けてしまったようだ。何とも微笑ましい光景だ。
俺は、通りすがりの人に質問していた。
ここへ来た目的の人物についての聞き取りが目的。
一通り村をグルりとしてみたが、それらしい人物がいなかったのだ。
答えはすぐに分かった。
どうやら、変わり者らしく、街外れの丘に住んでいるとのこと。
子供たちと別れて、教えてもらった場所を目指す。
ユイは、少し残念そうにしていた。
村から徒歩20分くらいの所に一軒家が見える。
恐らくあれがそうだろう。
小屋の入口の前まで来たのでおもむろに声を出してみた。
「すみませーん」
少し待ったが、反応がない。
この感覚前にもあったな。初めてエスナ先生の家に行った時もこんな感じで、ドアが勝手に・・。
ん?
ドアが勝手に開いたのだ。
俺は寸でのところで避けることに成功した。
「危ないな・・」
危うくまたゴツンするところだった。
すると小屋の中から男の声が聞こえてきた。
「入っていいぞ」
いやにフレンドリーだな。もしかして誰かと勘違いしているとか?
俺たちは、恐る恐る小屋の中に入っていく。
すぐに声の主が視界に入ってきた。
一言で表すならダンディーなおじ様といった感じだろうか。
俺はエスナ先生から、偉大な魔術師としか聞いていなかったので、てっきりもっと年配のいかにも大魔導士のような、おじい様を想像していた。
一文字しか違わないが、外見はぜんぜん違う。
しかし、目の前にいるのはどうみても40代のガッシリした体格のとても魔術師には見えない。それに若い。
念のために本人かどうか確認してみることにした。
「偉大な魔術師がここにいると聞いてやってきました。貴方がそうなのでしょうか?」
ダンディーなおじ様は、俺を舐めるように全身を見ている。
正直ちょっと怖い。
そして、口元に手をやり、ふむふむと言っている。
「あんたが、エスナ師匠の弟子か」
!?
俺は正体を明かしていないのになぜ分かったのだろうか。返答にためらっていると、ネタを明かしてくれた。
「いやいや、すまないね。いきなり言っても驚かせてしまうね。別にエスナ師匠に聞いた訳ではないんだ」
先生に直接聞いたのではなければ、一体どうして、もしかしてこの人はエスパーなのだろうか・・。
後ろから水晶のような物を取り出して、目の前の机の上に置く。
「実は、この水晶を使い、これから自身に起こることを事前に確認していたのさ。この水晶に君が映ったから、君の事を調べていたってわけだ」
なるほど、どうやらこの水晶は未来や過去を見ることが出来る魔導具らしい。
なんて便利なものがあるんだ。
「納得です。それで、こちらの質問に対しての返答は?」
「おっと、そうだった、すまんすまん」
ダンディーなおじ様が苦笑いしている。
「私の名前は、クラウディル・イエイガー。偉大かどうかは分からないが、魔術師をしている」
「俺も自己紹介が遅れました。名前はユウ。で、こっちが」
「ユイです!ユウの妹です」
ユイはなぜかラジャーのポーズを取っていた。
「で、こっちがクロですー」
クロがワン!と吠えている。
その後自己紹介がてら、お互いの素性を話していた。
ダンディーなおじ様もといクラウさんは、先生の単なる知り合いではなく、先生の弟子だったそうだ。
先生は弟子は取らないと言っていたのだが、どうやら、彼が一番弟子で、俺が二番目との事だ。
見た目は若そうなクラウさんだったが、実年齢は70を過ぎているそうだ。
若作りにもほどがある。詐欺クラスと言ってもいいだろう。
名前:クラウディル・イエイガー
レベル:50(魔術師)
職種:魔術師
スキル:魔力注入、火撃Lv4、火嵐Lv4、火道Lv1、火壁Lv3、リフレッシュLv3、念話
さすがに先生の一番弟子だけあって、レベルだけで言うとこの世界での英雄級だ。
クラウさんが、表情を強張らせて話を変えてきた。
「実は、お前の近況を調べているときに妙な映像が映ったんだ」
妙な映像とはなんだろうか。少しだけ胸騒ぎがする。
「ここへ来る途中にエルフを助けなかったか?」
「あ、はい。無実の罪で捕らわれていたので、救出しました」
クラウさんの表情が一層強張る。
「どうやら、助かっていないようなんだ」
!?
最初はクラウさんの言っている意味が分からなかった。
そんなはずはない、だってあの時エルフの捜索隊に引き渡したからだ。
しかし、嫌な予感がしていた。
あの時、そうだ、捜索隊を見たときエレナが変な顔をしていたんだ。
俺の表情が変わったことで、クラウさんも気が付いたのだろう。
「助けに、行くのか?」
「はい」
クラウさんが立ち上がり、水晶の前に座り直していた。
「そうくると思って、事前に調べておいた」
そして、とんでもない事を話し出した。
「エルフの嬢ちゃんは、明日の正午に公開処刑される」
「な、なんっ・・」
ある程度予想は出来たはずなんだが、俺はそれを考えたくなかったのかもしれない。
俺は、エレナを助けたはずだった、しかし未来は変えられていなかった。驚愕の事実に俺は声が出せないでいた。
「未来は変えられる。可愛い弟弟子君の為に一つアドバイスをしよう」
俺は伏せていた顔を上げる。
「単純にまたエルフの嬢ちゃんを救出しただけでは、二の舞になりかねない。だから、根本原因を排除する必要がある」
少し間をおいて、クラウさんが尋ねてきた。
「どうすればいいか分かるか?」
俺は少しの間考えてから、答えた。
「首謀者を捉える・・ですか?」
クラウさんは頷き、水晶で知りえた情報を話してくれた。
時は少し経ち、俺は今全速力でプラーク王国に向かって走っている。
辺りは真っ暗だった。
未来が本当ならば明日の正午にエレナは処刑される。
それまでに首謀者を見つけ出し、言い逃れ出来ない証人を突き付けてやる必要がある。
ユイとクロは、クラウさんに預けてある。彼は先生の弟子である証を見せてくれていたので、まず信用出来るだろう。
俺はセリアと一緒に行動している。手分けして探す手はずだ。
そして、何とか日が昇り始めた頃にプラーク王国に到着することが出来た。
セリアは、首謀者の動向とエレナの様子を見て来てもらうことにした。
俺は、今回のカギとなる、証人を探している。
2人とも事前にクラウさんの水晶で顔と名前は把握していたので、あとは探すだけだった。
しかし、この王国は広い。2万人もいる中から目的の人物を探す必要があったのだ。
期限は迫っている。タイムアップとなっては、意味がない。
町中を走り回っていた。冒険者に聞いたり、酒場で聞いたりと必死だった。
そして公開処刑が行われる正午となる。
今、街の中央広場に人だかりが出来ている。
群衆が騒ぎ立てる。
「公開処刑が始まるってよ!」「なんでもこの国を滅ぼそうとしていた奴だそうだ」「エルフ族って噂よ」
中央広場に処刑台が立てられている。
そこに、1人の少女が執行人に連行されてやってきた。
執行人以外にもう1人男が見える。
そう、今回の首謀者のアルベルト公爵だ。
そして今、まさに公開処刑が執行されようとしていた。
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