幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
63 / 242

第六十四話:大規模遠征【後編】

しおりを挟む
無事にみんなと合流する事が出来たが、思わぬ強敵によりユイが負傷してしまっていた。
すぐさま治癒ヒールで回復する。

周りにも何人もの討伐隊参加者の亡骸が転がっていた。

他に生存者がいないか確認し、まだ息のある者は回復させ、ユイと同じ場所までクロと一緒に移動させる。
後は、クロに任せる。

俺は、未だ苦戦をしていたリン、ジラの元へと急ぎ、向かった。

モンスターは、ケルベロスのような姿をしており、鑑定アナライズで確認したモンスターのレベルは、なんと72だった。
60でも危険指定種扱いされ、騒がれると言うのに、こんな奴が街の周囲に出没するなんて話は勿論聞いたことが無い。

「リン、ジラ遅れて悪かった。参戦する」

すぐに2人に治癒ヒールと身体強化のブーストを施した。

「助かりました。ご主人様が来てくれれば、心強いです」
「マスター、私が居ながらすみません。ユイさんが深傷を・・」
「大丈夫だ、ユイの傷は直したよ。今は、クロに見てもらってる」

俺たちの会話など御構い無なしで、ケルベロスもどきは、3本の頭を巧みに使い分け、それぞれ別々の属性のブレスを吐いてくる。
3人は、それを華麗に躱した。

「さて、反撃開始といこうか。俺が動きを止めるから、後は任せたぞ。一つの頭を各個撃破の集中砲火だ!」

俺は重力グラビティを使用し、相手の動きを封じる。
しかし、流石にレベルが高いだけあり、凄まじい力で抵抗しようとするが、何とか耐え凌いでいた。

直後、2人の必殺技がケルベロスもどきに炸裂する。
防戦一方だった2人だったが、俺のブーストのおかげか、奴の硬い皮膚の装甲を貫けるようになっていた。
すぐにケルベロスもどきの頭の一つを破壊する事に成功する。

動きを封じ、少しズルい気はするが、こちらも命を懸けているんだ。許して欲しい。

俺も反撃と行きたいところだったが、相手の抵抗が激しく、重力グラビティに専念していないと、すぐに解除されてしまいそうだった。

時間はかかってしまったが、結果2人だけでケルベロスもどきを倒してしまった。

「2人共お疲れ様」
「やはり、ご主人様が来てからは、圧倒でしたね。防戦一方だったのが嘘のようです」
「いやいや、俺は動きを止めただけだよ。結局2人の実力だけで倒したんだよ」

別に謙遜するつもりはないが、みんなにはもっと自信を持って欲しいと思う。

3人でクロの元に戻る。
ユイが俺の元に走って来た。
どうやら意識が戻ったようだ。

「お兄ちゃん、ごめんなさい・・」

ユイの狐耳が、シュンとなっていた。

なぜ、誤っているのか直ぐに理解した。

「油断しちゃって、やられちゃってお兄ちゃんに心配かけちゃって・・」

俺は、ユイを抱きしめた。
そして頭をなでなでする。

「謝るのは、俺の方だ。すぐに駆けつけてやれなくて悪かった。本当に無事で良かった」

一歩間違えば、大変な事態になっていたかもしれないのだ。

「さて、戦いはまだ終わっていない。決着をつけにいこう」

この辺りにモンスターの気配が無い事を予めて確認し、生存者には、ベースキャンプに戻るように促した。

残る強大な敵は、あの巨大カタツムリだ。
あのアドバイスで、どれだけHPを削れただろうか。
弱点が分かったとしても、その対象である触覚は明らかに小さかった。
俺みたいに必中補正でもない限りは、あれに当てるのは容易ではないだろう。

まだ少し距離があったのだが、対象が巨大な為この距離からでも視認出来た。

ある程度近づいた所で、残HPを確認すると、残り僅かだった。
これなら、出番はないかもしれない。

ん?

何か変だぞ。
カタツムリの外殻が眩い光を帯び始めたのだ。
俺は、奴のスキルの中に自爆があるのを思い出した。

「まさか・・」

次の瞬間、予想は現実となる。

「みんな!!俺の近くに!!早く!!」

いきなりの言葉に皆、訳が分からないという顔をしながらも俺の元へと集まる。

そして、俺は障壁を展開した。
障壁を展開した丁度同じタイミングで、巨大カタツムリが大爆発を起こしたのだ。
スキル欄にあった自爆であろう事は、一目瞭然だった。

実際の爆発時間は、一瞬だったが、生きた心地がしない。
障壁の外は、凄まじい衝撃波と爆風の嵐で、視界ゼロとなっていた。
全ては、障壁がシャットアウトしてくれていたが、周りの光景の悲惨さで、一様に皆が言葉を無くしていた。

爆風により舞い上がった土煙が次第に晴れてきて、周りの情景が視界に入ってくる。

「ひ、酷い・・」
「一体何が・・」
「お兄ちゃん、怖い・・」
「自爆?」

「取り敢えず、みんな怪我はないか?」

皆が頷く。
辺りを警戒しつつ障壁を解除した。

「まだ動くなよ」

障壁を展開した場所以外の地面が大きく削り取られていた。
まるで隕石でも落としたような感じになっている。
巨大カタツムリが居たと思われる場所を中心として、巨大なクレーターが広がっていた。

「ここに居てくれ」

地上からでは分からない。俺は、妖精の羽フェアリーウィングで空を飛んだ。

「こ、これはヤバいなんてレベルじゃないな・・」

ポッカリと直径10km程の大穴が大地に空いていた。
とてもじゃないが、この範囲内にいた者は、生存の可能性は、低いだろう

皆の元へ戻り、今見た事を告げた。

悲惨な事実に、何を喋ったらいいのか、暫く沈黙が続いていた。
しかし、いつまでもここに居る訳にもいかない。

「生存者がいないか各自散開して探そう。生存者の発見もしくは、何かを見つけたら、連絡を頼む。構成は、リン、ユイとジラ、クロのコンビで行くぞ。俺は1人でいい」
「了解!」

俺は、レーダーを頼りに生存者を捜す。

そして、すぐにレーダーに複数の反応があった。

視界に入ってきたのは、5人だった。
1人は、俺を介抱してくれていたユーリだった。
皆何処かしらの怪我を負っているようだ。
その中でも一番酷いのは、全身血だらけの鎧を纏った人物だ。
鑑定アナライズで確認して驚いた。
なんと勇者だったのだ。

ユーリが俺の事に気が付いて声を掛けてくる。

「君は確か・・。無事だったんだね」
「ああ、なんとかね。それより彼の容体は?」

ユーリは、首を横に振っていた。
周りの3人も下を向いて黙ったままだ。

「彼が私たちの大将よ。大将は、私たちを守る為にその身を犠牲にしたの・・」

彼等の仲間に聖職者がいたそうなのだが、生憎と近くにいなかった為、助けられなかったそうだ。

「まだ、息がある。見せてくれ」

俺は勇者の鎧を剥がしていく。

「もう無理よ・・。致死量以上の出血だわ。上級聖職者でもこの場に連れてこないと助からないわ」

「諦めるのか?」
「だ、だって・・」
「自分たちをそれこそ命を掛けて守ってくれた人を簡単に見放すのかい?」

少し意地悪だったかもしれない。しかし、言わずにはいられなかった。
もし俺がここで力を使えば、助けられるだろう。
恐らく彼等は勇者御一行様だ。
この世界の実力者に自分の存在を知られるのは、大きなリスクでもある。
しかし、だからと言ってこのまま見捨てるなんて事出来るはずがない。
俺の答えは既に決まっていた。

「これなら、まだ救える」

俺の言葉に他の4人が一斉に顔を上げる。

俺は、治癒ヒールを使い彼の致死性の傷を治した。

「あ、あなた聖職者だったの!?」
「そんな事より、直ぐに街まで運ぶんだ。傷は癒したが、流れた血は戻らない。すぐに教会へ!」
「そ、そうね・・分かったわ」

彼等は、大将を連れその場を離れた。
去り際に、ユーリがこちらを振り向く。

「本当にありがとう・・。大将を失ってたら、人類の大きな痛手だったわ。それに私の大切な人・・」

ユーリは、何度も何度も頭を下げていた。

俺はこの場を離れ、生存者探しを再開していた。
しかし、爆発周りでの生存者は確認出来なかった。
運良く、近くにおらず、爆発に直接巻き込まれなかった人たちは、皆グラン王国を目指していた。
俺もみんなと合流し、グラン王国を目指す。


王国に到着すると、すぐに被害の確認をするという事で、動ける者は全員王宮へと招集を掛けられた。

俺たちが見聞きした内容を報告しておく。
しかし、ケルベロスのレベルだけは、伏せている。
大騒ぎになっても困るからだ。

討伐戦開始前は、大人数でごった返していた広間だったが、今集まった人数は俺たちの5人を含めて12人しかいなかった。
当初200人は居たはずだ。
今回の討伐戦の悲惨さを物語っていた。

ガゼッタ王国から参戦している俺たちは、ガゼッタ王国国王からの指示で、その日の内に強制帰還命令が下されていた。
個人的に調べたい事があったのだが、命令では仕方がない。

俺たちは、ガゼッタ王国側の義勇兵となっていた。
という事は、ガゼッタ王国側の保有戦力という事になる。
それを、他国の要請をへて自国の保有戦力を貸し与えが、結果そのほとんどを喪失してしまい、ガゼッタ王国側も黙っていないという辺りだろう。

実際の真意のほどは不明だが、敵さんも動きが見られないという事で、恐らく大丈夫だろう。

後で分かった事だが、グラン王国側も相当な被害を受けていた。
当初2000人近くいた討伐隊の数は、生き残りは、500人程だったと言う。

例の勇者一行が気になったが、取り敢えずの処置は施していたので、命に別状はないはずだ。

俺たちは、様々な想いを巡らせながら、来た時と同様の空艦オリンポスで、グラン王国を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...