73 / 242
第七十四話:刺客達との激昂
しおりを挟む
ガゼッタ王国の王妃であるシュガーさんにかけられてしまった永眠の呪いを解く為、絶界の魔女の棲む廃墟された古城を訪れていた。
あっちから呼んでおいて絶界の魔女に会う為には、条件を提示してきやがった。
腹立たしさこの上ないが、文句は直接会って言う事にする。
その条件とは、古城内に放たれた4人の刺客を倒すというものだった。
何処かで聞いたようなシュチュエーションだが、倒せと言われたら倒してやるよ。あー倒してやるとも。
俺には優秀な仲間達がいる!
さぁ、何処からでもかかって来いや!
優秀な仲間達が相手だ!
リン、クロの活躍により、既に2人の刺客を倒す事に成功していた。
「どうやら、各階層毎に1人の刺客がいるようだね」
「ご主人様、残りの刺客も、かなりの手練れと推測します」
「ああ、手は抜けない。絶対に油断するなよ」
「お兄ちゃん!次は、私がやるからね!」
「相手を見てからな」
2階にはこれといって何も無かった為、3階へと進んで行く。
階段を上がって早々、宙に浮いた水晶球の上に座っている妙齢の女性が視界に入ってきた。
何とも余裕そうな表情をしている。
どうやら、あれが3人目の刺客みたいだね。
魔女の姿をしている事から、一瞬彼女が絶界の魔女かと思ったが、違ったようだ。
絶界の魔女の本名を知っている訳では無かったが、鑑定で確認するに、称号の欄が爆炎の魔女見習いとなっていたからだ。
「どうやら相手は魔女のようですね、ユイちゃん、悪いですけど先に行かせて貰いますよ」
ジラは、ユイの肩をポンポンと軽くタップして刺客の前へと歩いて行く。
「あら、貴女が私の相手かしら?」
「ええ、そうよ。私では不足?」
爆炎の魔女見習いは、ジラを睨みつけている。
「どうやら貴女も魔術師のようね。まあ、いいわ、格の違いというものをみせてあげるわ」
ジラがこちらを振り返った。
「マスター。少々本気を出したいので、許可を頂けますか?」
ヤバい何か怖いぞ。
表情は笑顔なのだが、何処か怖い。
「き、許可する・・」
取り敢えず、顔色を変えずに堂々と?返事をしておく。
すぐに二人の勝負が始まった。
爆炎の魔女見習いは、先手必勝で巨大な火の球をジラに向かい落としてきた。しかも何発もだ。
着弾時の衝撃と爆風がジラだけではなく、観戦していた俺達をも襲った。
衝撃が届く前に障壁を展開し、遣り過す。
「あら?少し強くやりすぎちゃったかしら?」
爆炎の魔女見習いは、勝ち誇った気になっているようだ。
モクモクと立ち込める煙で、ジラの様子が伺えないのだろう。
勿論、俺は見えているんだけどね。
「この程度の熱気じゃ、濡れた髪も乾かせないわね」
「なっ!?」
ジラが衝撃波を放ち、辺り一面に立ち込めていた煙を吹き飛ばした。
ジラの平然とした姿を見た爆炎の魔女見習いは、余裕を見せていた表情から一転し、顔を赤くし、怒りの形相をしていた。
「私がお手本を見せてあげる」
ジラが杖をかざし、フレアを使用した。
その火球の大きさは、先程爆炎の魔女見習いが使用した火球の3倍くらいはあるだろう。
もはや、巨大というか、部屋の天井に到達しそうなサイズだった。
「ちょ、ちょっと・・そんなサイズ反則じゃない?」
ジラは火球をチラつかせながら、ゆっくりと相手に近付いていく。
まるで、相手を脅すように不敵な笑みを浮かべている。
ジラさん、怖いです・・
「ひ、ひぃ・・止め・・」
爆炎の魔女見習いは、水晶から飛び降り抵抗とばかりに火撃をジラに向かい連射する
かなりの速度で連射している。
威力も中々のものだ。
魔術を使用する度に水晶から光が爆炎の魔女見習いに向かい伸びている。
恐らく、水晶には魔力が込められており、無尽蔵かどうかは分からないが補給しているのだろう。
しかし、いくら連射してもジラは対魔術軽減結界を張っているようで、殆どダメージを負っていないようだ。
「なんで効かないのよ!」
ジラと相手との距離は5mもなかった。
相手は、フレアから伝わる熱に気圧されている。
「あつっ、ちょっと!こっちへ来ないでよっ!熱いでしょ!」
一応あんた爆炎の魔女見習いなんだろ・・・熱耐性くらい真っ先に取るだろ普通。師匠の顔が見てみたいな。
「さてと、そろそろ飽きたから、終わりにしましょうか」
ここからだと良く見えないが、爆炎の魔女見習いの顔がどんどん引き攣っていっている気がする。
ジラが直径5m程に膨れ上がったフレアを相手に向かい投げ放つ。
「や、やめ・・」
微かに聞こえたその声を最後に、爆炎の魔女は口から泡を吹いて気絶してしまった。
放たれたはずのフレアも一瞬のうちに消えていた。
どうやら、幻影の類だったようだ。
してやったりという顔でジラはこちらへと戻って来た。
取り敢えず、ハイタッチしておく。
爆炎の魔女見習いの哀れな姿が目に映る。
「ジラ、少しやり過ぎじゃないか・・」
「そうですか?」
やっぱりジラを怒らすのは、危険だな・・
ともあれ、これで3人の刺客を倒した事になる。
残りは1人だ。
隣を歩いていたユイが次は絶対私がやる!と物凄い闘志をみなぎらせていた。
4階へ上がる階段を見つけ、俺達が階段の前へ移動した時だった。
「まさか3人があっさり倒されるとはね」
何処からともなく声が聞こえてくる。
その声は、この城の中に入った時に聞こえてきた声と同じ、絶界の魔女本人だった。
「でも、最後の1人は、すんごく強いよ?」
なんだか子供っぽい発言に聞こえるが、気にせず進む。
4階は、一部屋しかないようだ。
上がったすぐ先に大扉があったが、既に開かれており、その中に人影が見える。
次第にその姿が露わになる。
頭の上に生えた青く凛々しい耳。フサフサの尻尾が軽快に動いている。
犬人(シエンヌ)か。
俺は鑑定で確認した内容に驚いた。
名前「クク・セイユーン」
レベル68
種族:獣人族(犬人)
職種:盗賊
スキル:????
驚いたのは、スキルが閲覧出来なかった事ではない。
レベルは確かに高いが、ジラ程ではない。
ユイには、少し厳しいかもしれないが、今はそんな事はどうでもいい。
俺には見覚えのある名前だった。
クク・セイユーン。
俺が初めてこの世界に降り立った時に初めて出会った犬人(シエンヌ)の少女。
彼女の名前は、ミリー・セイユーン。
ある時ミリーに聞いた話がある。
自分には、生き別れになった妹がいると・・
確か、歳はミリーの3つ下で、名前はククと言うそうだ。
同じ犬人(シエンヌ)の容姿に、同姓同名・・
姿も何処となく似ている気がしないでもない。
果たしてありえるのだろうか?
ミリーの生き別れた妹である可能性は高い。
俺が動きを止めて、物思いに耽っていた為、ユイが心配して下から顔を覗き込んできた。
「お兄ちゃん?」
「あ、ああ悪い。ちょっと考え事をね」
全員で部屋の中に入った。
「ユイ、気を付けろよ。相手はユイよりレベルが10は上だぞ」
「ふふーん、相手に取って不足はないよ!」
何やらカッコイイ事を言っている。
と言うのも、時々ふざけて俺のいた世界で使われている言葉を皆に教えている。
「へ~私の相手は、あなた?」
「そうだよ!」
「ふ~ん。まあ、楽しい勝負にしようね」
「うん!」
はたから見ると、子供同士の勝負にしか見えないだろうが、この二人の前では普通の大人では全く相手にすらならないだろう。
「じゃあね、この石が地面に落ちたら開始ね」
ユイが頷く。
ククが石を振り上げ、やがて地面へと落ちた。
落ちたのを見計らって先に動きを仕掛けたのはユイだった。
電光石火の如く真っ直ぐにククの元へと突進したユイだったが、急にその足が止まっていた。
ククが居ないのだ。
ユイが周りをキョロキョロと探している。
ユイは種族の特性もあり察知能力に凄く優れている。
気配を頼りに相手を探しているようだ。
「そこっ!」
ユイ得意の短剣の投擲だ。
キンッ!と高い音が鳴り響く。
ユイの投擲した短剣をククが弾いた音だった。
「私の隠を見破るなんて、やるじゃん!」
姿を見せたククに一瞬にして詰め寄るユイ。
ユイが二刀短剣で連撃を浴びせる。
対するククは、短剣と盾を持つスタイルだ。
華麗にユイの攻撃を盾でいなしている。
ユイも負けじとスキルを使い、重い攻撃を繰り出していた。
ここまでの戦況を見ていると、若干ククの方が余裕がありそうだ。
「予想より早いね」
ここへ来て防御一択だったククが攻撃に転じてきた。
速さこそは、ユイの方が上だが、盾を上手く使い、ユイの短剣を弾いた隙間を狙い攻撃を繰り出していく。
ククが繰り出したスキルでユイは後方へと飛ばされ、壁に激突する。
しかし、上手く受け身をとり、すぐに戦闘に復帰する。
その時一瞬見えたユイの表情は、笑顔だった。
クロもそうだったが、2人は本当にバトルが好きなようだ。
俺には、あんまし理解は出来ないんだけどね。
出来ることならば戦いたくない気持ちは今でも変わらない。
対するククの表情も緩んでいた。
当初こそは、ククは喋る余裕を見せていたが、今は真剣に勝負をしているように見える。
余裕がなくなった訳ではなさそうだが、なんと言うか楽しんでいる感じにさえ見える。
2人が出し惜しみもなく、奥義級の派手なスキルを使用する。
斬撃の余波が、観戦しているこっちまで及んで来る為、常時障壁を展開していないと、ダメージを負いかねない。
爆音と共に地面には大穴が空き、壁には剣撃の跡が走り、外の光が差し込んでいた。
ユイが、圧倒的な手数でククを追い込んでいる。
しかし、ことごとく盾に阻まれてククには届かない。
その時だった。
ククの盾からミシッと言う鈍い音がしたのをユイは聞き逃さなかった。
「無双連撃!」
ユイの最も威力のあるスキルだった。
最終放たれた連撃の数は24にも昇る。
その高速で放たれる剣撃全てを受け切ったククも見事だ。
そうして最後の一撃を盾が受け切ったその時・・・
パキンッ
何かが砕け散る音が聞こえた。
ククの盾だ。
ユイは、これを狙っていたのだろう。
しかし、最後の一撃を放った瞬間、ユイは全ての力を使い果たしたのかククに向かってそのまま倒れ込んだ。
ククは、砕け散って盾を手放して空いている左手で、倒れ込むユイを受け止める。
一瞬俺はヒヤッとしたが、それ以上ククが何もしないと直ぐに分かり、互いの名勝負に拍手で応えた。
あっちから呼んでおいて絶界の魔女に会う為には、条件を提示してきやがった。
腹立たしさこの上ないが、文句は直接会って言う事にする。
その条件とは、古城内に放たれた4人の刺客を倒すというものだった。
何処かで聞いたようなシュチュエーションだが、倒せと言われたら倒してやるよ。あー倒してやるとも。
俺には優秀な仲間達がいる!
さぁ、何処からでもかかって来いや!
優秀な仲間達が相手だ!
リン、クロの活躍により、既に2人の刺客を倒す事に成功していた。
「どうやら、各階層毎に1人の刺客がいるようだね」
「ご主人様、残りの刺客も、かなりの手練れと推測します」
「ああ、手は抜けない。絶対に油断するなよ」
「お兄ちゃん!次は、私がやるからね!」
「相手を見てからな」
2階にはこれといって何も無かった為、3階へと進んで行く。
階段を上がって早々、宙に浮いた水晶球の上に座っている妙齢の女性が視界に入ってきた。
何とも余裕そうな表情をしている。
どうやら、あれが3人目の刺客みたいだね。
魔女の姿をしている事から、一瞬彼女が絶界の魔女かと思ったが、違ったようだ。
絶界の魔女の本名を知っている訳では無かったが、鑑定で確認するに、称号の欄が爆炎の魔女見習いとなっていたからだ。
「どうやら相手は魔女のようですね、ユイちゃん、悪いですけど先に行かせて貰いますよ」
ジラは、ユイの肩をポンポンと軽くタップして刺客の前へと歩いて行く。
「あら、貴女が私の相手かしら?」
「ええ、そうよ。私では不足?」
爆炎の魔女見習いは、ジラを睨みつけている。
「どうやら貴女も魔術師のようね。まあ、いいわ、格の違いというものをみせてあげるわ」
ジラがこちらを振り返った。
「マスター。少々本気を出したいので、許可を頂けますか?」
ヤバい何か怖いぞ。
表情は笑顔なのだが、何処か怖い。
「き、許可する・・」
取り敢えず、顔色を変えずに堂々と?返事をしておく。
すぐに二人の勝負が始まった。
爆炎の魔女見習いは、先手必勝で巨大な火の球をジラに向かい落としてきた。しかも何発もだ。
着弾時の衝撃と爆風がジラだけではなく、観戦していた俺達をも襲った。
衝撃が届く前に障壁を展開し、遣り過す。
「あら?少し強くやりすぎちゃったかしら?」
爆炎の魔女見習いは、勝ち誇った気になっているようだ。
モクモクと立ち込める煙で、ジラの様子が伺えないのだろう。
勿論、俺は見えているんだけどね。
「この程度の熱気じゃ、濡れた髪も乾かせないわね」
「なっ!?」
ジラが衝撃波を放ち、辺り一面に立ち込めていた煙を吹き飛ばした。
ジラの平然とした姿を見た爆炎の魔女見習いは、余裕を見せていた表情から一転し、顔を赤くし、怒りの形相をしていた。
「私がお手本を見せてあげる」
ジラが杖をかざし、フレアを使用した。
その火球の大きさは、先程爆炎の魔女見習いが使用した火球の3倍くらいはあるだろう。
もはや、巨大というか、部屋の天井に到達しそうなサイズだった。
「ちょ、ちょっと・・そんなサイズ反則じゃない?」
ジラは火球をチラつかせながら、ゆっくりと相手に近付いていく。
まるで、相手を脅すように不敵な笑みを浮かべている。
ジラさん、怖いです・・
「ひ、ひぃ・・止め・・」
爆炎の魔女見習いは、水晶から飛び降り抵抗とばかりに火撃をジラに向かい連射する
かなりの速度で連射している。
威力も中々のものだ。
魔術を使用する度に水晶から光が爆炎の魔女見習いに向かい伸びている。
恐らく、水晶には魔力が込められており、無尽蔵かどうかは分からないが補給しているのだろう。
しかし、いくら連射してもジラは対魔術軽減結界を張っているようで、殆どダメージを負っていないようだ。
「なんで効かないのよ!」
ジラと相手との距離は5mもなかった。
相手は、フレアから伝わる熱に気圧されている。
「あつっ、ちょっと!こっちへ来ないでよっ!熱いでしょ!」
一応あんた爆炎の魔女見習いなんだろ・・・熱耐性くらい真っ先に取るだろ普通。師匠の顔が見てみたいな。
「さてと、そろそろ飽きたから、終わりにしましょうか」
ここからだと良く見えないが、爆炎の魔女見習いの顔がどんどん引き攣っていっている気がする。
ジラが直径5m程に膨れ上がったフレアを相手に向かい投げ放つ。
「や、やめ・・」
微かに聞こえたその声を最後に、爆炎の魔女は口から泡を吹いて気絶してしまった。
放たれたはずのフレアも一瞬のうちに消えていた。
どうやら、幻影の類だったようだ。
してやったりという顔でジラはこちらへと戻って来た。
取り敢えず、ハイタッチしておく。
爆炎の魔女見習いの哀れな姿が目に映る。
「ジラ、少しやり過ぎじゃないか・・」
「そうですか?」
やっぱりジラを怒らすのは、危険だな・・
ともあれ、これで3人の刺客を倒した事になる。
残りは1人だ。
隣を歩いていたユイが次は絶対私がやる!と物凄い闘志をみなぎらせていた。
4階へ上がる階段を見つけ、俺達が階段の前へ移動した時だった。
「まさか3人があっさり倒されるとはね」
何処からともなく声が聞こえてくる。
その声は、この城の中に入った時に聞こえてきた声と同じ、絶界の魔女本人だった。
「でも、最後の1人は、すんごく強いよ?」
なんだか子供っぽい発言に聞こえるが、気にせず進む。
4階は、一部屋しかないようだ。
上がったすぐ先に大扉があったが、既に開かれており、その中に人影が見える。
次第にその姿が露わになる。
頭の上に生えた青く凛々しい耳。フサフサの尻尾が軽快に動いている。
犬人(シエンヌ)か。
俺は鑑定で確認した内容に驚いた。
名前「クク・セイユーン」
レベル68
種族:獣人族(犬人)
職種:盗賊
スキル:????
驚いたのは、スキルが閲覧出来なかった事ではない。
レベルは確かに高いが、ジラ程ではない。
ユイには、少し厳しいかもしれないが、今はそんな事はどうでもいい。
俺には見覚えのある名前だった。
クク・セイユーン。
俺が初めてこの世界に降り立った時に初めて出会った犬人(シエンヌ)の少女。
彼女の名前は、ミリー・セイユーン。
ある時ミリーに聞いた話がある。
自分には、生き別れになった妹がいると・・
確か、歳はミリーの3つ下で、名前はククと言うそうだ。
同じ犬人(シエンヌ)の容姿に、同姓同名・・
姿も何処となく似ている気がしないでもない。
果たしてありえるのだろうか?
ミリーの生き別れた妹である可能性は高い。
俺が動きを止めて、物思いに耽っていた為、ユイが心配して下から顔を覗き込んできた。
「お兄ちゃん?」
「あ、ああ悪い。ちょっと考え事をね」
全員で部屋の中に入った。
「ユイ、気を付けろよ。相手はユイよりレベルが10は上だぞ」
「ふふーん、相手に取って不足はないよ!」
何やらカッコイイ事を言っている。
と言うのも、時々ふざけて俺のいた世界で使われている言葉を皆に教えている。
「へ~私の相手は、あなた?」
「そうだよ!」
「ふ~ん。まあ、楽しい勝負にしようね」
「うん!」
はたから見ると、子供同士の勝負にしか見えないだろうが、この二人の前では普通の大人では全く相手にすらならないだろう。
「じゃあね、この石が地面に落ちたら開始ね」
ユイが頷く。
ククが石を振り上げ、やがて地面へと落ちた。
落ちたのを見計らって先に動きを仕掛けたのはユイだった。
電光石火の如く真っ直ぐにククの元へと突進したユイだったが、急にその足が止まっていた。
ククが居ないのだ。
ユイが周りをキョロキョロと探している。
ユイは種族の特性もあり察知能力に凄く優れている。
気配を頼りに相手を探しているようだ。
「そこっ!」
ユイ得意の短剣の投擲だ。
キンッ!と高い音が鳴り響く。
ユイの投擲した短剣をククが弾いた音だった。
「私の隠を見破るなんて、やるじゃん!」
姿を見せたククに一瞬にして詰め寄るユイ。
ユイが二刀短剣で連撃を浴びせる。
対するククは、短剣と盾を持つスタイルだ。
華麗にユイの攻撃を盾でいなしている。
ユイも負けじとスキルを使い、重い攻撃を繰り出していた。
ここまでの戦況を見ていると、若干ククの方が余裕がありそうだ。
「予想より早いね」
ここへ来て防御一択だったククが攻撃に転じてきた。
速さこそは、ユイの方が上だが、盾を上手く使い、ユイの短剣を弾いた隙間を狙い攻撃を繰り出していく。
ククが繰り出したスキルでユイは後方へと飛ばされ、壁に激突する。
しかし、上手く受け身をとり、すぐに戦闘に復帰する。
その時一瞬見えたユイの表情は、笑顔だった。
クロもそうだったが、2人は本当にバトルが好きなようだ。
俺には、あんまし理解は出来ないんだけどね。
出来ることならば戦いたくない気持ちは今でも変わらない。
対するククの表情も緩んでいた。
当初こそは、ククは喋る余裕を見せていたが、今は真剣に勝負をしているように見える。
余裕がなくなった訳ではなさそうだが、なんと言うか楽しんでいる感じにさえ見える。
2人が出し惜しみもなく、奥義級の派手なスキルを使用する。
斬撃の余波が、観戦しているこっちまで及んで来る為、常時障壁を展開していないと、ダメージを負いかねない。
爆音と共に地面には大穴が空き、壁には剣撃の跡が走り、外の光が差し込んでいた。
ユイが、圧倒的な手数でククを追い込んでいる。
しかし、ことごとく盾に阻まれてククには届かない。
その時だった。
ククの盾からミシッと言う鈍い音がしたのをユイは聞き逃さなかった。
「無双連撃!」
ユイの最も威力のあるスキルだった。
最終放たれた連撃の数は24にも昇る。
その高速で放たれる剣撃全てを受け切ったククも見事だ。
そうして最後の一撃を盾が受け切ったその時・・・
パキンッ
何かが砕け散る音が聞こえた。
ククの盾だ。
ユイは、これを狙っていたのだろう。
しかし、最後の一撃を放った瞬間、ユイは全ての力を使い果たしたのかククに向かってそのまま倒れ込んだ。
ククは、砕け散って盾を手放して空いている左手で、倒れ込むユイを受け止める。
一瞬俺はヒヤッとしたが、それ以上ククが何もしないと直ぐに分かり、互いの名勝負に拍手で応えた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる