幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第八十九話:古代兵器探究【後編】

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俺達は、古代兵器を探すべくガゼッタ王国大聖堂の地下にある大孔洞内を散策していた。

大孔洞に入ってから既に4時間余りが経過している。
目的地の場所まであと少しの所で、巨大竜と思われる残骸を目の当たりにしたのだ。

「コイツは死骸じゃない。油断するなよ」

極力戦闘は避けたかった為、中央にいた骨竜をやり過ごすべく部屋の隅っこを通ろうとしていたのだが、どうやらそんなにあまくは無かったようだ。

先程まで、地面に朽ち果てたように伏せていた骨竜が不意に起き上がる。

「流石に迫力がありますね・・」
「そんな流暢な・・」

伏せていた時はそのサイズは分からなかったが、今は有に50m程はあるだろうか。

今まで遭遇したドラゴンの中では、間違いなく最大サイズだろう。

気付かれてしまったからには、仕方がない。戦闘は避けられない。

「油断するなよ!それぞれが四方から一斉に攻撃だ!タイミングは任せる!俺は回復役に専念する」
「了解!お兄ちゃん!」
「分かった」
「本気を出します」
「久し振りの大物ね」

臆する事なく立ち向かっていく仲間達。実に頼もしい。怖くて逃げ出したいのは俺だけだろう。

それぞれが所定の配置に着いた時点で戦闘開始だ。

序盤から惜しげも無く4人が必殺技を繰り出していた。
短期決戦目的だったのだが、さっきから攻撃を浴びせているにも関わらず、一向に骨竜のHPが減る気配がない。

「おかしいな」

もしかしたら物理攻撃が効かないのか?

「ジラ!物理以外の魔術で攻撃してみてくれ!」
「分かりました!」

ジラは、得意のフレアを連続使用し、出現した3m級の火球が何発も骨竜へと向かって飛んでいく。

お、予想通りだ。
骨竜のHPが若干削れているのが確認出来た。

ダメージを負った事で焦ったのか、骨竜の攻撃が一層激しくなっていた。
四方に多彩なブレスをノータイムで撃ってくる。
かすっただけでもダメージを負いそうなものだが、4人の敏捷性が高い為、安心して見ていられる。
といっても徐々に皆がダメージを蓄積させていくので、こまめに治癒ヒールを回して常にHPが全快となるように心掛ける。
厄介なのは、時折不可避な広範囲石化ブレスを放ってくるので、範囲外にいる俺が石化解除役に徹した。
と言っても魔術でしか有効打を与えられないと分かった以上、俺も見ているだけという訳にはいかない。

3属性ボルトをタイミングを見計らい撃ち放ち、骨竜のHPを削っていく。

最初、捕縛を試したのだが全く通用しなかった。
属性魔術以外は全て無効化するみたいなチート性能でもあるのだろうか。

ユイ、クロ、リンも魔術エンチャントした武器で攻撃していた。
直接の斬撃分のダメージは入らない為、効率は悪そうだ。

時間は掛かったが、何とか骨竜を倒す事に成功した。
骨竜は、崩れ落ちるようにその場に朽ちていく。

最初に見た光景と余り変わらないのは気のせいだろうか?
また復活したりしないよな・・。

「お疲れ」

怪我とかはなさそうだったが、全員に治癒ヒール状態回復リフレッシュを施しておく。

「さてと、この地図が正しければ目的地はこの先の部屋なんだけど・・。取り敢えず、部屋の中には何の反応もなさそうだ」

ところで、今更ながら古代兵器って一体どんな代物なんだ?

「私の記憶にはないわね」

ノアが知らなければ、誰もわからないだろう。
もしかすると、核ミサイルとか、はたまた戦車とか・・・あるわけないか。

最奥の扉の前まで移動する。

「よし、開けるぞ・・・グッ・・なんて重たい扉なんだ・・・はぁ、はぁ・・開いたぞ」

この世界では、割とマッチョな俺がかなりの力を込めないと扉を開ける事が出来なかった。
別に鍵が掛かっていた訳ではない。
開いた扉を見て分かったのだが、単純に扉自体が重かったのだ、いや、分厚かったと言うべきだろうか。
厚さが2mはありそうだった。こんなの誰が開けれるんだよ!

さっきとは打って変わり部屋は割と狭かった。
部屋の中央に棺があるだけで、他には何も見当たらない。
恐らくこの棺が入り口の扉に書いてあったパンドラの箱だろう。

「あの箱の中かな?」

近付こうとするユイとクロ。

「まだ何か罠があるかも知れないから、気を付けろよ」

好奇心旺盛なんだから。

周りを確認するが、どうやらこの部屋には罠の類はないようだ。

「んー!開かないよー!」

ユイが強引に力で開けようとしていたが、ビクともしていない。
入口の扉同様に相応の力がいるのだろうか?
改めて近づいて棺を見ると、何やら古代文字のような物が彫ってある。
文字を見ようと棺に触れた時だった。

「なっ・・・」

棺に触れた途端、魔力を吸われてしまった。
しかも、俺の所持している魔力の殆どだった。
すぐに手を離したが、一瞬、フラッとよろめいた所をリンが後ろから支えてくれた。

「ご主人様!だ、大丈夫ですか!」

皆が慌てて駆け寄ってくる。
一瞬触れただけで、それだけの魔力を奪われるって・・もう少し触れてたら、死んでたのか?
この世界での魔力の枯渇はイコール死を意味する。

「あ、ああ、リンありがとう」

俺はおぼつかない手でストレージから、MPポーションを数本取り出し、すぐに飲み干した。
凄まじく苦い味がし、本来ならば一気に飲み干すなんて無理なのだが、苦味耐性をMAX振っている影響からか、何とか飲む事が出来ていた。

「棺に触れた途端、一瞬で魔力を吸われたみたいだ」
「お兄ちゃん!棺が光ってるよ!」

言われて気が付いたが、確かに先程とは違い、棺から青白い光が漏れていた。

「みんな!棺から離れるんだ!」

棺から光が溢れ出し、やがてユイが持ち上げてもビクともしなかった棺の蓋がひとりでにゆっくりと開いていく。

「あの棺にも魔力で駆動する術式が組み込まれていたみたいね」

ノアがそれだけ告げると、俺の背後に隠れる。

「いきなり、毒散布とかないよな・・」

ユイが、ゆっくりと棺に近付き、恐る恐る中を覗く。

一体、あの小さな棺の中にどんな兵器が眠ってるんだ?
もしかしたら銃火器系かもしれないと、適当な予想を立ててみるが、全くの正反対な結果を告げられる。

「お兄ちゃん!女の子が中で寝てる!」
「な、なんだって?」
「だから、女の子が中にいるよ」

俺も棺の中を覗き込む。
確かに、どこからどう見ても女の子だな。
見た目の年齢は、ユイと同じくらいだろうか。
しかし、これは一体どういう事だろうか。

「その子が兵器って事なんじゃない?」
「まさか、そんな・・」

取り敢えず、困ったな。どうしたものか。

「魔導ゴーレムの類と同じなのかな?」
「うーん、そんな単純な存在じゃないと思うけど・・」

取り敢えずこのまま放置も出来ないので、ストレージに入れて運ぼうと思ったが、何とストレージに入らなかったのだ。
という事は、生物判定しているという事になる。
呼吸らしきものをしているので、おかしいとは思ったが、古代兵器もとい魔導兵器と呼ばれた少女は、生きているのだ。

「ああ、もう、このまま連れて帰ろう。まさか暴走したりはしないだろう」

ポータルリングでガゼッタ王国の宿屋の裏手まで一瞬で戻って来た。
帰りくらいは楽したかった為、予めメモしておいた。
最大でメモしておける場所は4つ。
クラウさんの小屋を、このガゼッタ王国で上書きしていた。
この王国とプラーク王国、バステト村まで空艦でひとっ飛びなので、メモが無くても問題ないという判断からだ。

「これが話に聞いていた、集団次元転移ですか」
「そういえば、ジラは初めてだったね。日の回数制限があるけど、便利だよ」

取り敢えず、宿屋のベッドに寝かせたのはいいが、さてどうしたものだろうか。
同じ部屋は流石にあれなので、隣に別に部屋を借りる事になった。

こうやって、寝顔を見る限りでは、愛くるしい美少女にしか見えないのだが、これが魔導兵器というから驚きだ。
しかし、本当に魔導兵器なのだろうか?
当時の文献が残っている訳でもなく、当時を知る人が残存している訳でもない。

もしかしたら、大孔洞に迷い込んだ少女が何らかの原因で棺の中に入っていまい、以降1000年という永きの間眠り続けているとか・・・。ないか。

「彼女は、魔導兵器で間違いないと思うよ」

俺の中からノアが出てきた。

「でも見た目は、まんま人族だぞ?」
「ユウは居なかったから知らないと思うけど、この子に服を着せる時に、背中に魔導回路があったわ。ほんと、それ以外は見分けがつかなかったけどね。見る?」
「いや、いいよ」

寝てる少女の服を脱がすなんて同性ならともかく、他人である、しかも異性がしちゃだめだろう。いくら人型の兵器であっても。
兵器とは言っても俺には生きてるようにしか見えない。

「起動するキッカケは、普通だったら魔導回路に魔力を込めるだけなんだけど、ユウやってみる?」
「いやいや、仮にだよ、この子が記載してあった兵器だとして、起動させた途端に暴走するなんて事も考えられるんだよな?」
「その可能性はありますね、もう少し考えてから行動に移した方がいいと思いますよノア!」

心配してか、俺の中のもう一人の精霊であるセリアも出てきて、定位置となっている、俺の肩に座っている。

しかし、このまま眠ったままというのも困るんだよね。最悪は、元いた場所に連れ帰ればいいんだけどね。
俺は、いつ目覚めるとも分からない少女を眺めていた。

「ほんとに、ただ寝ているだけにしか見えないよな」

興味本位でほっぺに人差し指でツンツンしてみた。
凄く柔らかい。とても造り物の皮膚には見えない。

あれ?

いつの間にか、少女の目が開いている。

「あれ、起きちゃったぞ・・」

ノアがすぐに駆け寄る。

「おかしいね。普通は魔力を供給しないと動くはずがないんだけど・・」

目を覚ました彼女は、何故か一点だけを見つめて離さない。

そう、俺の顔だった。

試しに移動してみたが、やはり俺を目で追っている。

「えっと・・・俺の名前は、ユウ。君の名前は?」

魔導兵器に挨拶して名前まで尋ねてしまった。

「マスター*声*登録シ*シタ。ワ*シハヘイキ、ナマ*アリ*セ*」

カタコトだったが、普通に返事が帰って来た事にまず驚いた。
ところで、マスターって俺の事か?

「まだ魔力を注いでないですよね・・・あ、もしかしたら彼女の入っていた棺に触れた時に吸収された魔力が彼女を起動する為のものだったのかも知れませんね」
「ああ、俺の魔力の殆どを吸われたやつか」
「永*ニワ*ル眠リ*ヨル言*機能*回復*実*中・・」

騒ぎを聞きつけて、隣の部屋からみんながやって来た。

「目が覚めたんだね!」
「ああ、ちょっとまだ確認中だから、中には入るなよ」

暴走はしないだろうけど、もう少し様子見は必要だ。
部屋のドアの外から、こちらの様子を皆が伺っている。

「言語機能調整終了しました。魔族を確認。マスター、破壊許可を下さい」

え?
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