幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
91 / 242

第九十二話: 魔界【前編】

しおりを挟む
そこは悲鳴と恐怖に包まれていた。

恐怖のあまり、気を失う者。果敢に悪へと挑み無惨にも床に横たわる者。

ここは、さっきまでいたガゼッタ王国ではない。

夕焼けを彷彿とさせる程に、世界が空が赤一色で覆われていた。
地面は、マグマが通り固まったような形状をしている。高低差のある岩肌がもろに露出している。

「刃向かう奴らは全員殺す。死にたくなければそこで大人しくしていろ」

声の主は、背中に真っ黒な羽を頭に2本の角生やした2m近い長身の人物だった。

そう、魔族である。

先程まで、ガゼッタ王国主催の3年に1回の周期で開催される、晩餐会とは名ばかりの各国の王女と未来の王子との交流会が催されていた。

何故このような局面に陥ったのだろうか・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3時間程前に遡る。


初の開催国という事もあり、いつもとは違い城内が慌ただしく活気付いていた。

「そろそろ各国の方々が来られるわ」

俺は参加者を迎えるべく、シャロンと共に城門で待機している。
シャロンは、華やかなドレスに身を包んでいた。
見慣れたいつもの姿ではない為、正直最初に見た時に、ドキッとしたのは内緒だ。

俺はというと、シャロンの手作りのタキシードを着ていた。
手作りと言っても、プロの仕立屋から取り寄せた物と遜色ない程の出来栄えだ。
シャロンは手先が非常に器用なのだ。
ジラと話が合いそうだな。

「なんだか緊張してきたよ・・」
「私のパートナーなんですから、シャキッとしてて下さいね」
「あまり人前に出るのは慣れてないんだよね」
「晩餐会自体の参加人数は私達含めて24人だから、そんなに多くはないわよ」
「うーん」

全員王族ってだけで、変に緊張感してしまう。
早く終わってくれ・・。

あくまでも今日の主役は王女達なので、基本的に会話をするのは、シャロンだ。
俺は話しかけられでもしない限りは適当に相槌を打つなり、シャロンの会話に合わせていればいいようだ。
得意のポーカーフェイスで今日1日は過ごすしかない。

そんな事を考えていると続々と本日の参加者達が会場入りしてきた。
皆、空艦でのご登場らしい。
王国の中には、自前の空艦を所有している所もあるだとか。
自家用ジェット機のようなニュアンスだろう。

俺の主観を交えた説明で、会場入りしてきた王女達を順番に紹介していこう。

未来の王子の紹介?興味がないから割愛する。

1.南の島国、グラキール王国
ミラ・グラキール
10代後半の茶髪のショートヘアー美少女だ。
人見知りが激しそうな内気な感じで、絶えずモジモジしていた。

2.グリニッジ三大王国の一つ、グラン王国
シャル・シュタット・リリー
最年長だろう、20前半の何処か妖艶な空気を醸し出している美女だ。
ドレスよりも鞭が似合いそうだと思うのは俺だけだろうか。

3.海の向こう側にある共和国、アルゴート共和国に属している交易国家ユラン
ミリオーネ・ササ
10代後半の眼鏡をかけた黒髪美少女だ。
交易国家という名前からか、とても理的な感じに見て取れる。

4.同じくアルゴート共和国、リーデルトン王国
メイ・スン
10代後半の美少女なのだが、頭にケモミミが見える。
恐らく飾りなのだろうが、リーデルトン王国で流行っているのだろうか。後で聞けるチャンスがあれば是非とも聞いてみたい。

5.水上都市アクアリウム
サナ・ユウグリッド
彼女も俺と同じ精霊の宿主をしている。元は一市民だったのを王様に気に入られ養子となり、王女となった経歴を持つ。数少ない友人だ。

6.グリニッジ三大王国の一つ、プラーク王国
ルルアーナ・リジー
アナライズで情報を見る時に、一瞬ノイズのようなものが走った気がしたが、気のせいだろうか?
年齢は・・・んっと、どうみても、10歳そこらにしか見えない。
小学生か!と一人ツッコミをかましてみた。
しかし驚いたのは、小学生のくせして魔術師のレベルが30もあったのだ。

前に王様に会いに王宮に行った時には会う事はなかったな。
隠し子か?

7.アルゴート共和国最大の都市、バーン帝国
ムー・フラム
10代後半の一言で例えるならば魔女だ。
というのも称号が水の魔女となっているからだ。
レベルに至っては43と他を抜いて圧倒的に高い。
魔女には近付かないに越したことはない。

そしてシャロンを入れて計8人の王女達だった。
当初は12人と聞いていたのだが、相次いで急遽出席をキャンセルしたようだ。

腹痛か?風邪か?
王女達は身体が弱いとかね。

それにしても予想はしていたが王女達のルックスの高さは、何処かのアイドルユニットを見ているようだ。デビューすれば、バカ売れ間違いなしだろう。
プロデューサーは俺がやってもいい。
目指せ世界制覇!勿論違う意味でだけどね。

一応、パートナーである将来の王子候補にも少し触れておく。
聞いていた通り、王女達は一人の付き人と一緒に来ていた。
同世代もいれば、あきらかな、年配の方も混じっている。
中にはどう見ても女性にしか見えない美形も混じっている。
性別偽ってないか?犯罪レベルだろうあれは・・
それと、年齢の割には全体的にレベルが高い。
俺とシャロンの設定のように、王子候補は騎士が多いようだ。

晩餐会が始まるまでは、挨拶以上の会話は特になかった。

一人を除いては。

「お久しぶりです、ユウさん」

聞き覚えのある声は、水上都市アクアリウムのサナだった。

「お、久しぶりサナ。じゃなかった、サナ様」
「あははっ、なんで言い直すんですか」

予め、シャロンに釘を刺されていたのだが、参加者全員には、様を付けなければならないようだ。
勿論、シャロンも含めて。
仮にも未来の王女達だしね。

サナは、シャロンと文通友達で仲が良かった。
今回俺がこの晩餐会に参加する事も既に話していたようだ。
勿論、恋人同士でない事も。
俺もサナのパートナーは気になっていたのだが、意外にも俺がよく知る人物だった。

そう、サナの使用人であるクラウゼルさんだったのだ。
年の差カップルにも程があるだろう。
でも、クラウゼルさんは執事の中の執事で、ダンディーなお爺様と言った感じだ。ないことはないかもしれない。
絶対に若い頃はイケメンだったろうし。

アウェイ感漂う中で見知った顔があるというのも、なんだかホッとする。

晩餐会会場は、城内の中庭だった。
本日に限っては、部外者は例え王族であろうと城内に入る事は許されない。そういう仕来りなのだが、
料理に関しては、宮廷料理人の数名のみが配置され、配膳を任されていた。
城内も関係者しかおらず、城門も堅く閉ざされていた。

そうして、次々と運び込まれる料理の豪華さに只々驚くばかりだった。
ユイに知られたらきっと悔しがるだろうな。

時折席を立ち、各国の王女達と会話していくスタイルらしい。

席順から、最初はリーデルトン王国のメイ王女だ。

「お久しぶりです。メイ王女」
「久しぶりだな、シャロン王女」

シャロンは、この晩餐会は2回目の参加なので、ほぼ面識があるそうだ。
やはりケモミミはやはり偽物らしい。
すれ違いざまに一瞬睨まれた気がしたんだけど、気のせいだよね。

リーデルトン王国では、獣人族と共存している国だという。
非常に興味があるので近くを通れば、是非行ってみたいものだ。

「ガゼッタ王国は初めて訪問したが、市民の活気もあり、豊かで平和な良い国だな」
「ありがとうございます。私も以前、リーデルトン王国を訪れた際に、まずその大きさと、要塞のような強固な風貌に驚きました」
「過去に一度、モンスターの軍勢に攻め滅ぼされた苦い経験があるからな。どの国よりも防衛には力を入れておるんよ」

こんな感じで、たわいもない会話をしていく。
それにしても、会話が固すぎて肩が凝りそうだ。
もう少し砕けて話ができないものだろうか。
まぁ、無理だろうけど。

そして、お次は一番近寄りがたいバーン帝国のムー王だった。

「ご機嫌麗しゅう、お初にお目にかかります。シャロン王女。妾はバーン帝国のムーです。今後とも宜しくお願いしますね」
「初めまして、ムー王女。こちらこそ、宜しくお願い致しますね」

二人は握手している。

少し談笑した後、シャロンが次の席に移動しようとした時だった。

「待つんじゃ」
「時に其方、不思議な魔力の流れを感じるの」

やば。
ムー王女は、俺の方を指差している。
直ぐにシャロンがフォローに入る。

「彼は我が王国の近衛隊隊長です。勿論私の大事な人でもあります」

嫌な感じだ。ただ見られているだけだというのに、なんだか全てを見透かされているような気になる。
魔女の称号は伊達ではないようだ。

「膨大な魔力じゃの。この国の騎士は、魔術の才もあるのか?」

どういう訳か、俺の中の潜在魔力がバレたらしいが、良い意味で誤解してくれたようだ。

「其方とは、また何処かで会うような気がするの」

俺は一礼してその場を離れた。

次は、プラーク王国のルルアーナ王女だ。
シャロンも会うのは初めてだと言う。

「初めまして、ガゼッタ王国のシャロンと言います。近隣諸国同士、これからもどうぞ宜しくお願いしますね」
「ヨロシク」
「その若さで王女なんて、何かと大変な事もありますでしょう?何か分からない事がありましたら、何でも聞いて下さいね」
「分からない事ナイ」

やけに口数が少なく、ぎこちない王女だな。
まだ年端もいかない為、緊張しているのだろうか?


一通り挨拶周りが終わると、再び席につき、ご馳走の続きを堪能する。


なんだ?

今一瞬、妙な胸騒ぎを感じた。

周りに特に変わった様子はない。
気のせいだったか?

!?

突如、足元全体に魔法陣が現れた。

「何これ!」

皆が慌てふためいている。
ただ事では無い。

その時、俺の範囲探索エリアサーチに赤い点の反応が現れた。
しかもかなり近い。どうやらこの広場の中のようだ。
目で探していると、ルルアーナがいた席に魔族が立っていた。
いつの間に現れたのか。
そしてルルアーナ王女の姿が無い。

俺が席を立つよりも、周りの人が悲鳴を上げるよりも早く、事は起こった。

”強制次元転移が発動しました”

視界の端にメッセージが流れた。
そして、一瞬のうちに景色が暗転する。


どうやらメッセージ通りの出来事が起こったようだ。

魔法陣内にいた人が次元転移に巻き込まれたようだ。
つまり、8つの国の王女とそのパートナーが飛ばされたようだ。

「一体、何が起きたのだ」
「ここはどこ!」
「キャー!!そこに魔族がいるわ」

俺達に混じって、魔族が紛れ込んでいた。
皆が怯える中、一人の勇敢な若者が魔族に向かい飛びかかっていた。
グラン王国のシャル王女のパートナーだった。

「あっ・・・」

しかし、大きな鎌を持った魔族に、呆気なく腹部をバッサリと切り裂かれてしまった。

名前「ベルーガ・ライ」
レベル:62
種族:魔族
弱点属性:なし
スキル:転移、擬態、サンダーレイLv3、レールガンLv3、魔球(まだん)Lv3

「刃向かうな人族。大人しくしていれば、今暫くは生かしておいてやる」

状況整理に時間が掛かり、俺は直ぐに動く事が出来なかった。
これ以上暴れようものなら、撃って出るつもりだったが、魔族はそのまま彼方へと飛び去ってしまった。

俺達は、一体どこに飛ばされてしまったのか・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...