幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第九十三話:魔界【中編】

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各国の王女達と参加していた晩餐会の最中に突如として、何処かへ飛ばされてしまった。

ここは一体何処だ・・?

一言で例えるならば、地獄という言葉が一番しっくり来る気がする。

周りを見渡すと、自身の身に起こっている事態が飲み込めないのか、怯えている者半分、冷静に振舞っている者半分といった所だ。
普通ならば、怯えて当然だとは思うが、流石は国を代表する者達と言えるだろう。肝が据わっている。

「しっかりして!アレン!!お願い死なないで・・」

グラン王国のシャル王女だった。

シャル王女の前に倒れているのは、先程勇敢にも魔族に立ち向かい、やられてしまったシャル王女のパートナーだ。

おびただしい程の出血を流している。
処置しなければ間違いなく命を落とすレベルだろう。

俺はシャル王女とアレンの側へ行く。

「治療します」
「貴方聖職者なの⁉︎」

こんな状況になってしまっては大人しく見ている訳にもいかない。

治癒ヒールを施し、すぐに傷を塞ぐ。

「ありがとう・・本当にありがとう・・」

シャル王女は涙を零しながら、何度も何度も感謝してくれた。
彼女にとって彼は本当に大切な存在なのだろう。
最初に会った時に変なイメージをしてしまった事を心の中で謝っておく。

全員で集まり、もう一度今置かれている状況を皆で確認する運びとなった。

まず、俺達は元いたガゼッタ王国とは、全く違う場所に転移させられてしまったという事実。
誰かが、ここは魔界ではないかと言っていた。
勿論、魔界に来た事がある訳ではないので、何とも言えないそうだが。

俺はこっちに来てから遠距離通信でユイとコンタクトを試みるも反応が返ってこなかった。
説明には圏外となっていたので、あながち魔界という線もありうるのかもしれない。
ポータルリングも試みたが、案の定使用する事が出来なかった。

ルルアーナ王女とそのパートナーがいないのは、恐らくさっきの魔族に既にやられているか、ルルアーナ王女自体に化けていたかだろうという結論になった。
そもそもプラーク王国の王女であるルルアーナの事をここにいる誰一人、今まで見た事も聞いた事もなかった事から容易に推察出来た。
言動もぎこちなかったしね。

まず確認する必要があるのは、今ここにいるメンバーの戦力の把握だ。
相手が先程の魔族一人ならば、俺一人で十分だろう。しかし、ここが魔界で魔族達の本拠地ならば、 襲って来る人数は考えただけで恐ろしい。
そもそも俺達はなぜこんな場所に連れて来られたのか。仮に人質としてならば、充分過ぎる程の価値があるだろう。

少し脱線してしまったが、唯一王女達で戦えるのは、魔女の称号を有しているバーン帝国のムー王女だけだろう。
パートナーの男達は、一応全員剣の心得はあるようだが、レベル20~40の間だった。
それでも冒険者のレベルとしては、中級者から上級者レベルなので、それなりと言えばそれなりだが、俺の周りには強者が多いので、いまいち物足りなさを感じてしまう。

一番レベルの高かったアレンが40だったが、その彼があっさりやられてしまった為、彼の強さを知っている者は、まず挑んでも勝てないだろうと口には出さないが、皆思っていたに違いない。
俺も自分のレベルは伏せている。
治癒(ヒール)が使えるので、勝手に聖職者枠に入れられてしまったので、魔術師です。と訂正だけしている。

この場に留まるか、逃げ出すかで多少意見が別れたが、ここが何処だか分からない以上、迂闊に動くのは危険だという判断で収まった。

全員で話し合った結果、こんな大規模な方法で連れてきておいて、あっさり皆殺しなんてありえないだろう。何かしら、要求があるはずなので、まずは奴らの出方を伺おうというものだった。

皆、肝っ玉が据わっている。
俺は力で何とか出来るだろうと考えているから、まだ冷静でいられる。

シャロンは何故だか逆に明るかった。
わざと明るく振舞っているのかもしれない。

「皆さん、元気を出しましょう!諦めなければ、必ず帰れます!助けだって来るかもしれません」

皆の沈んでいる気持ちを奮い起こそうと、シャロンが頑張っている。
俺は心の中でエールを送っておく。

助けか・・
少しだけ期待していた。
仲間達にだ。
クロはともかく、ジラに至っては元魔族の幹部だ。当然ここが魔界ならば、来る方法、帰る方法は知っているだろう。
何とか皆と連絡が取れないものだろうか・・。

今の所、俺の範囲探索エリアサーチに反応はない。
少しだけ、周りの散策をしてみるか。

「ちょっとだけ、周りを見てくるよ」
「私も行きます」
「シャロン様はここにいて下さい。すぐに戻りますから」
「そうですか・・」

今のは悪い事をしたかな・・

俺は皆から見えない位置まで移動し、透明化のマントを羽織った。
そして、妖精の羽フェアリーウィングで上空から帰る為の糸口でも見つかればと辺りを散策する。

遠視も使うが何も見えない。360度同じような景色が延々と広がっているだけだった。
もう少し遠方も調査しておきたいが、何時奴らが戻って来るか分からない中、皆の場所から離れる訳にはいかない。

俺は何の情報も得ないまま皆の場所へと戻った。


それから暫く待っていると、先程の魔族が現れた。

「ほお、逃げずに待っているとは、流石は王女、未来の王子達という訳だな。賢明な判断だ」

さて、どう出るか。場合によっては一瞬で退場してもらうつもりだ。

「お前達をここへ連れてきたのは・・・。我らが主の贄となって貰う為だ」

な、なに?

「予言者は言った。人族の王女や王子の生き血を糧として我らが主、魔王様の復活が遂げられると」

という事は、皆殺しという最悪な結果が訪れるという事じゃないか。

「もうすぐ貴様達を運ぶ牢獄が届けられる。そのまま生贄の祭壇まで連れて行く。皆まで言わなくても分かるな?抵抗は無駄だ。貴様ら全員が刃向かった所で、我一人で捩伏せるのは容易いのだからな」

「グランド・デス」

⁉︎

後ろにいたムー王女が、杖を掲げ魔術を使っているではないか。
聞いた事がない魔術だったが、魔族は苦しんでいるので、どうやら効いているようだ。

「き、貴様っっ!!」

だがHPは減っていない。恐らく精神干渉系の魔術か何かだろうか。

仕返しとばかりに今度は魔族が動いた。
口から魔球まだんを放つ体制をとっていた。
このままでは、ムー王女がやられてしまう。

仕方ないか。

「エレメンタルボム!」

居ても立ってもいられず、俺は魔族に攻撃し、倒してしまった。

歓喜と驚愕の声が上がる。

「皆の者!何をしているか!早う逃げるぞ!」

確かに敵対してしまった以上、この場にいるのは危険だ。

全員でその場を後にする。
ムー王女は、自身のスキルに千里眼を持っているそうで、先程まで俺達のいた場所を移動しながら監視してくれるそうだ。

道中、俺の強さに関して色々と質問攻めにあったが、適当にはぐらかすとシャロンが当たり障りのない適当な言い訳で答えてくれた。

時折、休憩を挟みながらも丸一日は移動していた気がする。
どこまで行っても周りの風景が変わらない為、移動しているのかすら疑問に思えてくる。
もしかすれば、何らかの魔術で行ったり来たり実はその場から全く動いていないんじゃないかと考える者さえいた。

しかし、その考えはすぐに打ち砕かれた。

「待って!」

ムー王女だった。

「最初のあの場所に魔族と思われる影が3つ現れたわ」

仲間がやられている姿を目の当たりにして慌てふためいている様子だ。
姿のない俺達を捜すべく上空で散会したという。

つまり、魔族にとって俺達が逃げ出した事は想定外だという事だ。

「このまま宛もなく進み続けていていいのか?」

グラキール王国ミラ王女のパートナーであるギルバートの呟きだった。
一体何処まで歩けば良いのか、ゴールも見えないこの状態では精神的にも相当に応えるだろう。
その場に塞ぎ込んでしまった。

「僕はもう一歩たりとも歩けない!このまま見捨てて先に行ってくれ!」

ミラ王女が駆け寄る。

「ギルバート!情け無いわね、生きて帰るんでしょ!立ちなさい!」

その後数分の間、痴話喧嘩が始まった。

何とかギルバートを説得し、移動を再開する。

依然としてゴツゴツした岩肌が広がっていた中で、洞窟のような場所を見つけた。

こっちにきてから初めての人工構造物だ。
というのも、自然にできた感じではなく、明らかに人の手が加えられているのだ。

「罠でしょうか?」
「罠かもしれないが、俺は行くぞ」
「ちょっと、まず誰か中を確認してきた方が・・」
「全員で行って、罠だった場合は一網打尽にされるぞ」

暫く何も言わず耳を傾けていた。
俺には、この洞窟が途中で途切れている事、中には誰もいない事が分かっているからなのだが。

幅3m奥行き15m程の洞窟の為、取り敢えずは全員入っても割と余裕がありそうだ。

こちらに飛ばされてから、皆ろくに寝ていない為、肉体的にも精神的にもかなり衰弱していた。

交代で二人が見張りをし、他の者は取り敢えず休息をとる事になった。
作戦会議は、休息後に行おうという事になった。

さて、どうやって脱出したものか・・。

(セリアとノアは、魔界に来た事はないよな・・)
(ないですね・・魔界は本来魔族しか行き来する事は出来ません。魔族に聞くしかないですね・・)
(ユウ、魔族の知り合いいたじゃん。彼女を呼んでみたら?)
(もしかして、イスの事か?確かに知り合いと言えば知り合いだけど・・どうやって呼ぶんだよ)
(そこはまあ、呼んでみたら来るんじゃない?)

そんなヒーローみたいな事があるかよ・・。

順番に見張りをしていたが、俺は休息は必要ないからと、見張りに徹していた。

そして、サナと一緒になった。

「まさか、こんな事になっちゃうなんて思いませんでした」
「だな。魔界に来れるなんて事、二度とないだろうな」

サナは、クスクスと笑っている。

「やっぱりユウさんは面白いですね。本当は恐怖で如何にかなっちゃいそうなんですけど、ユウさんがいるから・・・」
「頼りにしてくれるのは嬉しいけど、さすがにこの状況は俺もどうしようもないぞ?」

暫くサナとの会話を楽しんだ後、少し調査がしたいので、申し訳ないがサナに見張りを頼んだ。

洞窟から少し離れた場所まで移動した。
駄目元で呼んでみる事にしたのだ。

「イス!いるか!」

ヒーローでもあるまいし、声が届く訳がないか。

その時、範囲探索エリアサーチに高速で近づく反応が一つ現れた。
ま、まさかね・・。
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