幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百六話:神の代行者の目的1

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俺の前に現れた二人の女性のうちの一人はミラ王女だった。

という事は、もう一人はこの国の王妃かな?
実際に会うのは初めてだが、反則級なくらい美人だった。美しいという言葉すら生温い。

「貴方がユウさんね。ミラから話は聞いているわ」

先程のジークさんと同様に感謝の気持ちを告げられた。是非お礼をさせて欲しいという。
さすがに王族の願いを無下に断るほど俺も馬鹿ではない。
相手が美人だからではない。断じて違う。

「是非、この子を貰ってやって下さい」

はい?

王妃のシャルミーザさんはミラ王女を前に押していた。

「ちょ、ちょっと、お母様っ!」

ミラ王女は赤面している。

いやいや王妃ならまだしも王女は10代の後半に差し掛かるかどうかの年齢だ。
悪いが俺の守備範囲外だ。
王妃もだめだ!たとえ美人でも人妻に手を出す事は出来ない。人妻じゃなければもちろん大歓迎だ。

丁重にお断りしようと思っていると俺の目の前にユイ&クロが両手を広げていた。

「お兄ちゃんは渡さないよ!」
「ユウはだめ」

その光景を微笑ましそうに眺めていると、

「あらあら、ごめんなさいね。冗談なのよ」

ウフフと笑っている王妃のシャルミーザさん。

「それにしても、ユウさんにこんなに若い奥様がいたなんてね、しかも二人も」

はい?
どうしてそうなる!
冗談はこれくらいにしておいて下さい。

「違います。妹達です!」

速攻に否定しておいた。

この人は何処までが冗談で何処までが本気なのかいまいち判断が難しい。

取り敢えずのこの国の危機は去ったのかな。

その後、本当にお礼がしたいというので俺達は夕食をご馳走になった。

皆思い思いに満喫してくれているようだ。
俺は禁酒をしているので、食べる専門だ。

さっきから、ジラが親衛隊の誰かにずっと頭を下げられている。
本当にあの時はすいませんでしたー!
とか何とか聞こえるが、詮索はしまい。

こうして久しぶりの賑やかな夜を過ごした。

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(黒ローブの男視点)

時は少し遡る。


黒ローブを羽織った男といかにも王子という格好で玉座に座っている男がいた。

「ハイル様、それでは行って参ります」
「ああ、貴重な種だ。それを作るのに数十年の歳月を要したのだ。絶対に成功させろ」
「かしこまりました」

黒ローブは、一礼して転移を使いその場を後にした。

この種を孵化させる為の手頃な場所はもう決めてある。
南の島国グラキール王国だ。
あそこならば、海路を封鎖してしまえば、隣国からの救援がくるまで十分に時間は稼げるだろう。
まずは、思い通りに動いてくれる手駒が必要だ。

私は、この海域を縄張りとしている海賊達を利用しようと考えている。
上手くいけば、後は全て勝手に事を運んでくれるだろう。

「な、なんだてめえは!どっから沸いて出やがった!」

私は海の民と名乗る海賊の棟梁である男の前に転移した。

「今日はお前に話があってきた」
「棟梁なんですかそいつは!殺しますか?」

私の姿を見るや否や部下達が殺気立っている。
本来ならば、そんな口を聞く連中は返り討ちにして皆殺しにするのだが、コイツらには働いてもらう必要がある。

「いや、話を聞いてからでも遅くはねえ」

私は、この男が海賊稼業を辞めたがっている事、何処かで平凡に暮らしたがっている事を事前に調べていた。
そこに付け入ろうと考えたのだ。

「グラキール王国の永住権だぁ?アンタにそんな権限あるのかよ」

食い付いてきたようだ。もう一押しだな。

「私は国王の密命でこの場に参ったのだ」
「こ、国王だと!」

1回目の接触はこんなものだろう。
次は10日後に今度は国王を連れて来る約束を交わした。

次は国王の番だな。

ある日の深夜に国王の寝室へと転移した。

国王は何も知らずと寝ているようだ。

「今からお前に暗示をかける・・・。お前にかける暗示は一つだ」

目を閉じ、そして呪文を唱え始める。

「私の命令は絶対だ!」

この強制暗示は常に微量ながら魔力を消費し続ける。
時間をかけて少しづつ慣らしていけば強制暗示の必要はないのだが、今回のような短期で暗示をかける場合は強引にでも強力な強制暗示が必要になる。

強力な暗示は、対象者を精神崩壊させてしまう恐れがある。
また、仕草が多少ぎこちなくもなる。
どのみち、この国にいる者は全員皆殺しになるのだから関係はなかった。

次の日、私はグラキール王国の城へと正面から訪れた。
もちろん堂々と第三者に姿を見せたのは、アリバイ作り以外のなにものでもない。
本来ならばそんな事をする必要はないのだが、念には念を入れている。

門番に約束の取り交わしがないからと門前払いされそうになっている所に国王が現れた。
国王に取り次いで貰い、堂々と中へと入る。

門番に止められる事は分かりきっていた為、昨晩国王に私が訪れる時間帯に門まで迎えに来るように暗示をかけていた。

不審がられないよう、国王との間柄は旧い知人という事にしてある。

応接間へと案内され、中から鍵を掛けた後すぐに国王と共に海賊達の2回目の会談へと赴いた。

「ほんとに国王が来やがったぜ、間違いない本物だぜ棟梁!」
「アンタの話が本当なのは分かったが、なぜ国王がグルなんだ?メリットがねぇじゃねか」
「それは、お前には関係のない事だ」

その後、作戦決行日と詳細の打ち合わせを行う。
グラキール王国親衛隊は、作戦決行日には支障をきたさぬように城からは退去させる。
一部の反抗勢力がいた場合は、そいつらは皆殺しするように海賊達に命じた。

作戦決行当日、ここまでは順調だ。

既に海賊達は予定通り、この国を占拠する事に成功していた。
気が付かれぬように邪魔者は何人か排除した。

この段階までくれば、もはや進行を妨げる事などありえないのだが、不測の事態に備え、姿を隠し国王の側にて待機する事にする。

「娘に会わせてくれないか」

暗示という名の洗脳が中途半端な為、時折こうして暗示に反してこちらの意図とは意味の無い行動を取ろうとする。

まぁ計画の支障になるわけでは無いので許可をする。
今の国王の状態は本人でさえ困惑している事だろう。

私の暗示により、この国を海賊達に占拠される事を自らが命じたと思っているからだ。
しかし、なぜそんな命令をしたのか。国王自体も分からない。

故に困惑しているはずだ。

国王と共に娘の寝室へと向かう。
何故だか、部屋の鍵が壊れている。
どうやら娘自体が壊したようだ。

しかも娘は国王が今回の首謀者だと勘付いていた。
面倒だな。私は国王に娘を殺すように命令する。
しかし国王は躊躇し、中々言う事を聞かない。
暗示の強度を上げ、ようやく私の命令通りに娘に手を掛けようとした時だった。

娘の王女がその場から忽然と姿を消したのだ。
国王がやったか?
いや、国王自体も驚いている。
それに今の状態の国王に私に逆らう術は持ち合わせていない。
故に答えは一つだ。
私と同じように、この場には姿を消していたネズミが潜伏していたのだ。
しかもその者は、私とは違い姿を消す能力を詠唱もなしで他人へと使用する事が出来る。

私以上の実力の魔術師か、魔導具という線も考えられる。
しかし、まだ若いな。見事な術を行使しようが術者が未熟では宝の持ち腐れだ。

このネズミは逃げる時に足音を立てていた。
これでは、せっかく姿を消している意味がない。

足音は、城の最下層を目指しているようだった。
籠城と決め込まれても面倒だ。

「国王、海賊達に指示をしろ。中庭にて王妃の殺害予告を告知せよとな」

これで籠城する訳にはいかなくなるだろう。
海賊達には弓矢を渡している。恐らく救出に駆けつける者達も、せいぜい10人そこらだろう。
対してこちらは、その8倍はあるだろう。地の利もある。
負けるはずはない。

港からの援軍の心配は?

それもないな。
凄腕の傭兵を雇い、港に配置している。
ここで消すには惜しい人材だが、任務遂行の為には致仕方ないだろう。

指示だけ与え、私はこの場を離れる。
我が主人に進捗報告の時間なのだ。

転移にて、グラキール王国から離れる。


「進捗の程は?」
「はい、つつがなく進行中です・・」

報告を終え、再びグラキール王国へと戻った時には、事態が一変していた。
全て計画通りに進行していたのだが、この短時間のうちに一体何が起こったというのだ。

海賊達は、その大半が捕縛されていた。
あの戦況化でひっくり返される要因があったというのか?
あるとすれば、数ではない。
恐らく勇者クラスの力を持った何者かの犯行だろう。

爆発騒ぎに乗じて私はすぐに要因となる者を探し出した。
他の奴等に邪魔をされても面倒な為、転移で二人だけ別の場所へと移動した。

「貴様は何者だ!」

一応問うてみるが、素直に答える気はないようだ。
相手の実力は未知数である以上、禁術で速攻勝負をつけてやる。

即死系禁術、死術デスを相手に浴びせる。
これは即効性があり、1分としない内に相手を殺す事が出来る。最初は目眩から始まり、筋肉が痙攣し、やがて心臓が止まる。

しかし、目の前の相手にはどういうわけか効かなかった。

死耐性など人族が有しているはずはない。他に考えられるのは、噂に聞いた事がある不死の属性を有しているのかもしれない。

この世界には魔導具という理不尽な力を持ったアイテムが存在している。
魔導具の性能一つで個々の強さなど跳ね除けてしまう程の規格外な物まで存在する。
目の前の者がそうでない事を願うばかりだ。

それにしても、コイツの強さは異常だ。
ノータイムで凄まじい程の威力の魔術を放ってくる。
ハイル様にお借りしている魔術ダメージ大幅軽減効果のあるこのローブがなければ、一撃で勝負は決まっていただろう。
私は戦いながら、ずっと隙を狙っていた。
既に魔力は底をつきかけており、魔力増加薬の効果も切れた。
体力の限界も近い。

そして、ついに待ちわびた隙が相手にうまれた。
私は、残った魔力を使い時空魔術の一つである物体を視界の届く任意の場所に転移させる術を発動した。
猛毒を塗った剣を相手の背後から突き刺した。

即効性の猛毒だ。すぐに解毒薬でも飲まない限りは勝負はついたはずだった。

しかし、何事もなかったかのように突き刺さった剣を抜き、相手は攻撃の姿勢を崩さない。
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