世界の理

医白影(いしかげ)

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2章

8下

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「ぐああああああああああああ」
 
 龍の咆哮は思う以上に破壊力が凄まじい。
 流石に龍相手は難しいな。今のままだと最終的に殺してしまう。でも手加減したら、殺されてしまう。
 ふとサーシャ様を見ると、その手についた血を見ている。
 これは・・・フラグ、ですか。

「いやああああああああああ」
 
案の定、叫んだサーシャ様は見る間に白い龍となった。
 フラグ回収の速さもいいところ。やるしかない。

「究極解放。」
 
 抑えきれないほどの力の流れが私を襲う。やっとの思いで力を抑え、飛びかかってきた2匹の龍と、闘いをはじめた。

「はああああ!」
 ぎゃん、がぎん、と金属音を響かせる。
 どれほどの時が経っているのだろう。私の服は引き裂かれ、血が滲み、相手にも裂傷が至る所に存在する。
 予想外だったのは、ミーシャ様である黒龍は、サーシャ様である白龍でさえも攻撃することだ。
 早く戦闘を終わらせなければ。お2人の身体が危ない。

「これで・・・最後。究極重力魔法展開!」
「ぐるるああああああああ!」
「吸力の鎖!特大の!いけえええええ!」

 私が放った鎖は2匹の龍を巻きつけ、締め上げる。

「がああああああああああああ!」

 ぱあん、と2匹の龍は人間の姿に戻った。
 やっと・・・終わった・・・。


 激しい痛みで目が覚めた。起き上がるのも辛い。
 必死に辺りを見回すと、血だらけで倒れているメイド長と、同じようなサーシャと、血に染まった部屋があった。自分自身を見ると、2人と同じように血だらけでだった。
「サーシャ・・・メイド長・・・。」
 声もガラガラだ。サーシャは動かず、メイド長はよろよろと起き上がった。
「・・・お気づきになられましたか。ミーシャ様。ご自身になにが起こったかはお分かりで?」
 ボクになにが起こったか・・・?
 鋭い頭痛と共に自分がやったことを思い出して、その恐ろしさに、ひっ、と悲鳴をもらす。
 この血塗られた部屋、倒れているサーシャ、血だらけのメイド長、ボクのせいだ。
「あ、・・・ごめんなさい、ごめんなさい、」
「思い出したのですね。」
 ボクの言葉を遮り、メイド長はゆっくりと近寄ってきて、僕を抱き締めて言う。
「ミーシャ様。全てあなたのせいじゃありません。むしろあなたは被害者です。自分を責める必要は全くないですよ。少しパニックになっただけ。誰だって同じ状況に置かれたら、パニックを起こしますわ。」
 いつの間にかサーシャも起きていて、メイド長はボクらをいっぺんに抱き締める。
 メイド長の優しい言葉と、サーシャの頬を伝う涙をみて、ボクは嗚咽をもらした。


 皇帝、皇后に毒を盛った犯人は、その後自殺した。国に個人的な恨みを持ち、10年かけた計画犯行だったと言う。
 2人の葬儀は国を挙げて行われ、多くのものが涙し、悔やんだ。
 次の皇帝には、亡き皇帝の長男で双子の兄の、ロイ・ローラン・ディアンが即位。神殿長には、元メイド長のアイが任命された。これには様々な理由があるが、1番は、亡き皇后の実の妹であるということが判明したからである。
  双子は重傷を負ったため、1年ほど療養生活を送っていた。怪我が治ると、今後の国の発展に貢献できるように見聞を広めたい、と周囲の反対を押し切って双子だけで旅に出た。
 双子の物語は、始まったばかりである。
 

 
 
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