明日の君は俺を知らない。

マジ卍

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番外編(悠人side)

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——蓮へ

もしこの手紙を読むときが来たなら、
俺はもう君の隣にはいないのかもしれない。

だけど、それでも、君に伝えておきたいことがある。



俺が再発を知ったのは、君とケンカした数週間前だった。
最初はただの倦怠感だと思ってた。だけど病院で検査を受けたら、「数値が良くない」って、淡々と医者が言った。

その瞬間、頭の中が真っ白になった。
君の顔が真っ先に浮かんだ。

——言わなきゃ。
そう思った。でも次の瞬間、怖くなった。

君の泣き顔が見たくなかった。
君に、「俺のために時間を使ってほしくない」なんて、勝手なことを思った。

でも本当は——
ただ、弱っていく自分を見せたくなかったんだ。

君の隣にいると、どうしても“強くいたい”と思ってしまう。
それが俺の、愚かなプライドだった。



君が見つけた診察票を手に俺に詰め寄ったとき、
俺はすごく嬉しかったんだ。
怒ってくれたことも、泣いてくれたことも。

——あぁ、俺はちゃんと愛されてたんだなって。

だけどあの時、俺は素直になれなかった。
“蓮を傷つけたくない”なんて言い訳をして、
「一緒にいる」っていう選択肢を、自分の中から消してしまっていた。

勝手だった。
ほんと、全部が。



そして……ある夜、病室で夢を見たんだ。

蓮、お前と一緒に屋上にいる夢。
風が吹いてて、銀杏の葉がふたりの間を通り過ぎていった。

俺はお前に「もう一回、恋してもいい?」って言った。
お前は笑って、「もちろん」って言ってくれた。

——それで、目が覚めた。

でもその夢が、不思議とあったかくて。
目が覚めた瞬間、涙が出てた。



それから、ある日突然、心臓が止まるような痛みが来て——
気づいたら、真っ白な天井の中だった。

でも、不思議なことが起きた。

俺はなぜか目を覚ました。
病室じゃない、施設のベッドだった。
事故に遭ったことになってて、記憶がところどころ飛んでた。

……だけど、蓮の名前だけは残ってた。

顔も、声も思い出せないのに、
「蓮」っていう名前だけが、頭の奥にしみついていた。



時間が経つにつれて、医者が言った。

「失った記憶が戻ることは保証できません。けれど、感情は、記憶とは別の場所に残っていることがあるんです」

——たぶん、それが俺の中の「蓮」だったんだと思う。



ある日、公園のベンチで見た風景の中に、お前の姿があった。

ほんとは……見つけた瞬間、心臓が爆発するかと思った。

記憶がないのに、涙が出たんだ。
体のどこかが、「この人を知ってる」って叫んでた。

俺の中で、忘れていたはずの何かが蘇って、
気づけば——お前の名前を、口にしていた。



まだ、思い出せないこともある。
でも、今ならはっきり言える。

蓮、俺はもう一度、お前に恋をした。
そして、これからは“忘れた時間”を、ふたりでゆっくり取り戻していきたい。

失ったものは多いけど、
そのぶん、もう一度全部を大事にするって決めた。



ありがとう、蓮。
どんなに遠くにいても、どんなに忘れても、
お前は、俺の心のいちばん近くにいた。

そしてこれからも、ずっと。

——悠人より
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