6 / 59
六話 アニキ、孫と出会う
しおりを挟む
金色に染めたボーイッシュな頭髪に、ハート型のピアス。
劇薬と毒物を混ぜたような奇抜すぎる恰好は、時として時空を超える。
くわえて、すらとした細身のボディと長い手足。
スタイルが、なまじ良いせいか? お婆さんは実年齢よりも若く見えてしまう。
ただし、精神年齢は二十代で止まっていると思われる。
「事情ですか……な、なにを、どう話せばいいのか…………しゅ、しゅみませ……」
困った……お婆さんの気持ちは有難いけれど、実際に聞かれると答えるのが難しい。
まさか、悪の組織に拉致られて、怪しいガーターベルトをはかされて気づいたら女の子になっていました!
なんて……清々しく言えるわけがないじゃん。
言ったとしても誰も信じてはくれないだろうし、戦隊ヒーローを引退しても自分がイエローだったことは守秘義務で口外していけない。
あくまで普通の女子……。
何歳ぐらいのか? 分からない……とにかく、この姿なら家出ってことで済ませられるんだけど……本当にそれでいいのか? 迷っている自分がいる。
多分、ボクの悩みを聞いてくれるなんて人は、このお婆さん以外にいないんじゃないのか?
そう考えると、急に恐くなってきた。
このままでは、確実に野垂死んでしまう。
今のボクにはセコイヤと戦う力はないし、資金面でも問題があるのではないのか!?
この姿で、どこかバイト先でも見つけるか……いや、身分証もないんだから普通に無理ゲーだわ。
「おう、悩め悩め~悩むのは若者の特権だ。だがよ、このババアに嘘やお為ごかしは通用しないぜ! そこんとろろ、ヨロシクぅ~」
宜しくされても……小生の中身は三十手前なんですけどね。
人が良いのはわかるけれど、このお婆さんは、どうしてハードルを上げてくるんだよ。
本当のことを話さない限り、ここから出られないような気がしてきた。
「やめねぇか! チエコ。人様の諸事情を詮索するじゃねぇよ。それこそ野暮ってもんだろう。スマンな、嬢ちゃん。ウチの婆さんが変わりモンで」
「はぁ? んなの聞いてねぇし。ゲンジさんがどう思おうとも、私は自分の道を行くんで!」
申し訳なさそうにカウンター越しからお爺さんが声をかけてくれた。
そしてお婆さんがそれを一蹴する。
彼らのやり取りを見ていると、実家の両親を思い出してしまう。
二人とも、元気でやっているのだろうか? 戦隊ヒーローになってから、ずっと会えていないな。
「ところでよ。アンタ、悪者に狙わているんだろう?」
これが高齢者の勘という奴なのだろうか? 的を射る言葉に内心ドキッとした。
「そ、そんなにゃことは……」
思わず噛んでしまった……動揺し過ぎだろっ、ボク!
言葉がチグハグになり続かない。
肩まで伸びた髪の毛に指を絡めながら弄っている自分に狂気を感じる。
ダメだ、いくら考えを巡らせても上手いこと誤魔化せるような言い訳が浮かんでこない。
そもそも、浮かんだところで人の親切心を裏切るような嘘をつきたくもない。
「まぁ、言いにくいことなら無理に聞きゃしないよ。ただ、アンタの顔が必死だったから聞いたまでさ」
「あの……実はボク、追われていて…………く、詳しくは説明できないのですが」
「ソイツは悪い奴なのかい?」
「はい、反社的な意味では……」
そこまで気にして貰っていたのなら、黙秘していられるわけもなかった。
すべてではないが、ボクは話せることだけをかいつまんで老夫婦に打ち明けてみた。
誘拐された事。自分が文無しで、どこにいるのか分からないこと。
性別や本名についてはあえて触れなかった。
このガーターベルトもセコイヤが秘密裏に作成したモノなのだろう。
オーバーテクノロジーであるコイツの存在を知ってしまったら、セコイヤの連中はこのラーメン屋を襲ってくるかもしれない。
懸念が拭えない以上は、余計な事を話してはいけない。
ボクが話している少しの間、夫妻は親身になって聞いてくれた。
もっと細かいところまで追求させると構えていたけれど、思いのほかボクのプライベートな部分には触れてこない。
二人には気ばかり遣わせてしまい何だか、歯がゆくもある。
「お爺ちゃん、お婆ちゃ――ん! タケノコ持ってきたよぉ~。うんしょっと!」
一通りの説明を済ませたタイミングで、店のドアが開く。
そこから弾むような女の子の声が飛び込んできた。
「おおっ、よく来たね。リユちゃん、爺ちゃんのラーメンでも食うかい?」
「いいの? じゃあ、いただこうかな?」
店の中に彼女が入ってくると、それまで威厳があった、お爺さんの表情が急にだらしなくなった。
そわそわしながら駆け寄り荷を受け取ると、彼女をテーブル席へとつれてゆく。
「おっす! 元気にしてたか?」
お婆さんの方は至って平常運転だった。
カウンター前を通る彼女に軽く手を振っている。
女の子も目を細めながら「うん!」と元気よく返事した。
「あっ」彼女と目が合うと思わず声が出てしまった。
職業柄、小さな女の子を相手にする機会はあったが年頃の娘さんに対する免疫はない。
というより、どう接すれば正解なのか?
以前のボクなら話かけただけで、警察に通報されていた。
劇薬と毒物を混ぜたような奇抜すぎる恰好は、時として時空を超える。
くわえて、すらとした細身のボディと長い手足。
スタイルが、なまじ良いせいか? お婆さんは実年齢よりも若く見えてしまう。
ただし、精神年齢は二十代で止まっていると思われる。
「事情ですか……な、なにを、どう話せばいいのか…………しゅ、しゅみませ……」
困った……お婆さんの気持ちは有難いけれど、実際に聞かれると答えるのが難しい。
まさか、悪の組織に拉致られて、怪しいガーターベルトをはかされて気づいたら女の子になっていました!
なんて……清々しく言えるわけがないじゃん。
言ったとしても誰も信じてはくれないだろうし、戦隊ヒーローを引退しても自分がイエローだったことは守秘義務で口外していけない。
あくまで普通の女子……。
何歳ぐらいのか? 分からない……とにかく、この姿なら家出ってことで済ませられるんだけど……本当にそれでいいのか? 迷っている自分がいる。
多分、ボクの悩みを聞いてくれるなんて人は、このお婆さん以外にいないんじゃないのか?
そう考えると、急に恐くなってきた。
このままでは、確実に野垂死んでしまう。
今のボクにはセコイヤと戦う力はないし、資金面でも問題があるのではないのか!?
この姿で、どこかバイト先でも見つけるか……いや、身分証もないんだから普通に無理ゲーだわ。
「おう、悩め悩め~悩むのは若者の特権だ。だがよ、このババアに嘘やお為ごかしは通用しないぜ! そこんとろろ、ヨロシクぅ~」
宜しくされても……小生の中身は三十手前なんですけどね。
人が良いのはわかるけれど、このお婆さんは、どうしてハードルを上げてくるんだよ。
本当のことを話さない限り、ここから出られないような気がしてきた。
「やめねぇか! チエコ。人様の諸事情を詮索するじゃねぇよ。それこそ野暮ってもんだろう。スマンな、嬢ちゃん。ウチの婆さんが変わりモンで」
「はぁ? んなの聞いてねぇし。ゲンジさんがどう思おうとも、私は自分の道を行くんで!」
申し訳なさそうにカウンター越しからお爺さんが声をかけてくれた。
そしてお婆さんがそれを一蹴する。
彼らのやり取りを見ていると、実家の両親を思い出してしまう。
二人とも、元気でやっているのだろうか? 戦隊ヒーローになってから、ずっと会えていないな。
「ところでよ。アンタ、悪者に狙わているんだろう?」
これが高齢者の勘という奴なのだろうか? 的を射る言葉に内心ドキッとした。
「そ、そんなにゃことは……」
思わず噛んでしまった……動揺し過ぎだろっ、ボク!
言葉がチグハグになり続かない。
肩まで伸びた髪の毛に指を絡めながら弄っている自分に狂気を感じる。
ダメだ、いくら考えを巡らせても上手いこと誤魔化せるような言い訳が浮かんでこない。
そもそも、浮かんだところで人の親切心を裏切るような嘘をつきたくもない。
「まぁ、言いにくいことなら無理に聞きゃしないよ。ただ、アンタの顔が必死だったから聞いたまでさ」
「あの……実はボク、追われていて…………く、詳しくは説明できないのですが」
「ソイツは悪い奴なのかい?」
「はい、反社的な意味では……」
そこまで気にして貰っていたのなら、黙秘していられるわけもなかった。
すべてではないが、ボクは話せることだけをかいつまんで老夫婦に打ち明けてみた。
誘拐された事。自分が文無しで、どこにいるのか分からないこと。
性別や本名についてはあえて触れなかった。
このガーターベルトもセコイヤが秘密裏に作成したモノなのだろう。
オーバーテクノロジーであるコイツの存在を知ってしまったら、セコイヤの連中はこのラーメン屋を襲ってくるかもしれない。
懸念が拭えない以上は、余計な事を話してはいけない。
ボクが話している少しの間、夫妻は親身になって聞いてくれた。
もっと細かいところまで追求させると構えていたけれど、思いのほかボクのプライベートな部分には触れてこない。
二人には気ばかり遣わせてしまい何だか、歯がゆくもある。
「お爺ちゃん、お婆ちゃ――ん! タケノコ持ってきたよぉ~。うんしょっと!」
一通りの説明を済ませたタイミングで、店のドアが開く。
そこから弾むような女の子の声が飛び込んできた。
「おおっ、よく来たね。リユちゃん、爺ちゃんのラーメンでも食うかい?」
「いいの? じゃあ、いただこうかな?」
店の中に彼女が入ってくると、それまで威厳があった、お爺さんの表情が急にだらしなくなった。
そわそわしながら駆け寄り荷を受け取ると、彼女をテーブル席へとつれてゆく。
「おっす! 元気にしてたか?」
お婆さんの方は至って平常運転だった。
カウンター前を通る彼女に軽く手を振っている。
女の子も目を細めながら「うん!」と元気よく返事した。
「あっ」彼女と目が合うと思わず声が出てしまった。
職業柄、小さな女の子を相手にする機会はあったが年頃の娘さんに対する免疫はない。
というより、どう接すれば正解なのか?
以前のボクなら話かけただけで、警察に通報されていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる