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二十四話 アニキ、注目されてしまう
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世間を騒がす変体と呼ばれる怪人。
ボクが出会ったのは鳥と文房具の目玉クリップを合わせたような姿をしていた。
どうして体育教諭のカルタ先生がバケモノになってしまったのだろうか?
思うに、その性癖ゆえのストレスによって変化してしまったのかもしれない。
他者に言えない、打ち明けられないのは、とても心細く不安になる。
どれだけ自分の生き方を信じていても、疑問を抱く瞬間はあるはずだ。
真新しいローファーが足に馴染んできた今日この頃。
ボクのJKライフも大分、落ち着いてきた。
あれから、一度も変体と出くわしていないのが大きい。
シルフィードハーネスが、人知れずこっそりと活躍しているとしても世間は平穏そのものだった。
ボク的には、空き時間に魔法少女としての特訓をしたい所なんだけど……。
ドブさんが言うに『変体に対する危機感が君を強くするんだ。つまーり、敵が現れないと吾輩は頑張れないのさ、シュバッ!」とのこと。
夏休みの宿題とか終わり間近にならないと絶対に手をださないタイプだ、ドブさんは。
なんなら、何も手をつけないで宿題? 何ソレ美味しいの? ぐらいのレベルですらある。
何も起きないのならソレに越したことはないけど、博士がレッサーパンダのままだと……そろそろ本気で困る。
少しでも、フェアリーの変身能力について情報を得られれば良いのだけど、今のところ進展はない。
魔法少女の活動はイマイチ成果が得られなくとも、世界は知らぬ間に変化してゆく。
キュイという小さな世界にも、変化は少しずつ起き始めていた。
「新庄さん、おはよう」「キュイちゃん、昨日の特番見た?」「今度、一緒にカラオケしない?」「どーも、鴨川です。貴女の心の隙間につけ込みまぁ~す」
編入した時よりボクの周りの人口密度が増加したような気がする。
特に何かをしたわけでもないけど……自然とこうなってしまった。
今ではクラスメイトに留まらず、他所のクラスの生徒までボクのことを見に来ている。
休み時間になると特に騒がしくなる。
その度に前の席にいる田宮さんは無言で教室を出てゆく。
正直、申し訳なさすぎる。ちゃんと誤りたいけど、なかなか時間が取れない。
鴨川君が勝手に整理券を配っているし、何故かチェキで写真撮影までもするようになっている。
写真に写る小柄な女の子は、ほんのり紅く色づいた綿のような薄桜色の髪を二つ結びで編み込んでいる。
フィッシュボーンとかいう奴で、自分ではできないからリユちゃんにセットして貰った髪型だ。
あまりの破壊力に我ながら眩暈を覚える……これが自分だという事実に複雑な感情しか芽生えてこない。
さすが、バ美肉とし言いようがない。
人類が抱く美の理想を見事にカタチにしてきた。
「ボクの人気を利用して荒稼ぎをしている奴がいるって本当なの?」
「そやで、キュイちゃんも気をつけないと良いように遊ばれてしまうんよ」
茜音ちゃんから、その話を聞くまで鈍感なボクは、ちっとも気づかなかった。
今まで孤独が友達だったボクに周囲の異常など分かるはずもない。
ここで犯人捜しをしなければ、自体の収拾がつきそうにない上に、悪事を容認しているのと一緒だ。
こんなボクのことを皆、大事にしてくれているのだ……思いを踏みにじるようなことはしたくない。
いや、大事なのは本当のボクではなく、キュイというキャラクターか……。
いずれにしろ、このまま放っておくわけにはいかない。
「ねぇ、キュイちゃん。キュイちゃんがどんな状況にあっても私にとって、貴女はかけがえのない友達よ。それは変わらないことだから、そんなに思い詰めた顔をしないで……ね?」
「リユちゃん……」
例え、真実でなくとも彼女がそういってくれるだけで救われたような気持ちになれる。
すがるのは、良くないことかもしれない。
けれど、ボクにとってもリユちゃんは特別な存在なんだ。
彼女がいった通り、そこはいかなる場合であっても変わることは決してない。
決意を新たに教室に戻ろうとすると、突然声をかけられた。
彼女にしては珍しいとボクは少し驚いていた。
「……新庄さん。時間、大丈夫?」
「た、田宮さん? うん。丁度、教室に戻る途中……」
相変わらず、田宮さんとの距離がつかめずにいた。
近すぎれば敬遠され、遠すぎれば相手にされないイメージがボクの中で定着しつつある。
もちろん、彼女がそういう人でないと信じている。
けど、田宮さんは他の人たちと、どこかが決定的に異なる。
「ついて来て、見せたいものがあるから」
それを裏づけるかのように、案内された先には科学準備室と表記された札がかけられていた。
「ここって、危険な薬物が保管してあるから生徒は立ち入り禁止じゃないの?」
小首をかしげるボクの唇に田宮さんの人差し指が触れた。
突然の出来事に、心臓の鼓動がバクバクと高鳴る。
「静かに……今から、この学校の暗部を貴女に見せてあげる。新庄さんが抱いている疑問の答えもここにあるわ」
小声でそう告げると、彼女は音を立てないよう、ゆっくりと科学準備室のドアを開いた。
ボクが出会ったのは鳥と文房具の目玉クリップを合わせたような姿をしていた。
どうして体育教諭のカルタ先生がバケモノになってしまったのだろうか?
思うに、その性癖ゆえのストレスによって変化してしまったのかもしれない。
他者に言えない、打ち明けられないのは、とても心細く不安になる。
どれだけ自分の生き方を信じていても、疑問を抱く瞬間はあるはずだ。
真新しいローファーが足に馴染んできた今日この頃。
ボクのJKライフも大分、落ち着いてきた。
あれから、一度も変体と出くわしていないのが大きい。
シルフィードハーネスが、人知れずこっそりと活躍しているとしても世間は平穏そのものだった。
ボク的には、空き時間に魔法少女としての特訓をしたい所なんだけど……。
ドブさんが言うに『変体に対する危機感が君を強くするんだ。つまーり、敵が現れないと吾輩は頑張れないのさ、シュバッ!」とのこと。
夏休みの宿題とか終わり間近にならないと絶対に手をださないタイプだ、ドブさんは。
なんなら、何も手をつけないで宿題? 何ソレ美味しいの? ぐらいのレベルですらある。
何も起きないのならソレに越したことはないけど、博士がレッサーパンダのままだと……そろそろ本気で困る。
少しでも、フェアリーの変身能力について情報を得られれば良いのだけど、今のところ進展はない。
魔法少女の活動はイマイチ成果が得られなくとも、世界は知らぬ間に変化してゆく。
キュイという小さな世界にも、変化は少しずつ起き始めていた。
「新庄さん、おはよう」「キュイちゃん、昨日の特番見た?」「今度、一緒にカラオケしない?」「どーも、鴨川です。貴女の心の隙間につけ込みまぁ~す」
編入した時よりボクの周りの人口密度が増加したような気がする。
特に何かをしたわけでもないけど……自然とこうなってしまった。
今ではクラスメイトに留まらず、他所のクラスの生徒までボクのことを見に来ている。
休み時間になると特に騒がしくなる。
その度に前の席にいる田宮さんは無言で教室を出てゆく。
正直、申し訳なさすぎる。ちゃんと誤りたいけど、なかなか時間が取れない。
鴨川君が勝手に整理券を配っているし、何故かチェキで写真撮影までもするようになっている。
写真に写る小柄な女の子は、ほんのり紅く色づいた綿のような薄桜色の髪を二つ結びで編み込んでいる。
フィッシュボーンとかいう奴で、自分ではできないからリユちゃんにセットして貰った髪型だ。
あまりの破壊力に我ながら眩暈を覚える……これが自分だという事実に複雑な感情しか芽生えてこない。
さすが、バ美肉とし言いようがない。
人類が抱く美の理想を見事にカタチにしてきた。
「ボクの人気を利用して荒稼ぎをしている奴がいるって本当なの?」
「そやで、キュイちゃんも気をつけないと良いように遊ばれてしまうんよ」
茜音ちゃんから、その話を聞くまで鈍感なボクは、ちっとも気づかなかった。
今まで孤独が友達だったボクに周囲の異常など分かるはずもない。
ここで犯人捜しをしなければ、自体の収拾がつきそうにない上に、悪事を容認しているのと一緒だ。
こんなボクのことを皆、大事にしてくれているのだ……思いを踏みにじるようなことはしたくない。
いや、大事なのは本当のボクではなく、キュイというキャラクターか……。
いずれにしろ、このまま放っておくわけにはいかない。
「ねぇ、キュイちゃん。キュイちゃんがどんな状況にあっても私にとって、貴女はかけがえのない友達よ。それは変わらないことだから、そんなに思い詰めた顔をしないで……ね?」
「リユちゃん……」
例え、真実でなくとも彼女がそういってくれるだけで救われたような気持ちになれる。
すがるのは、良くないことかもしれない。
けれど、ボクにとってもリユちゃんは特別な存在なんだ。
彼女がいった通り、そこはいかなる場合であっても変わることは決してない。
決意を新たに教室に戻ろうとすると、突然声をかけられた。
彼女にしては珍しいとボクは少し驚いていた。
「……新庄さん。時間、大丈夫?」
「た、田宮さん? うん。丁度、教室に戻る途中……」
相変わらず、田宮さんとの距離がつかめずにいた。
近すぎれば敬遠され、遠すぎれば相手にされないイメージがボクの中で定着しつつある。
もちろん、彼女がそういう人でないと信じている。
けど、田宮さんは他の人たちと、どこかが決定的に異なる。
「ついて来て、見せたいものがあるから」
それを裏づけるかのように、案内された先には科学準備室と表記された札がかけられていた。
「ここって、危険な薬物が保管してあるから生徒は立ち入り禁止じゃないの?」
小首をかしげるボクの唇に田宮さんの人差し指が触れた。
突然の出来事に、心臓の鼓動がバクバクと高鳴る。
「静かに……今から、この学校の暗部を貴女に見せてあげる。新庄さんが抱いている疑問の答えもここにあるわ」
小声でそう告げると、彼女は音を立てないよう、ゆっくりと科学準備室のドアを開いた。
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