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二十五話 アニキ、田宮さんと語る
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管理責任者以外は無断で開けてはならない禁断の扉。
使用されていない時には、ちゃんと鍵がかかっているはずなのに、ドアは簡単に動いた。
閉じるか閉じないかの合間から、二人してこっそりと中を覗く。
変な背徳感を感じるが、田宮さんの言う見せたい物の正体が気になる。
真っ暗な室内で一部だけ煌々と灯りが漏れていた。
その前には、うごめく人影がある。
微かに漂うヤニの臭いには覚えがある。
まさかとは思うけど、自由にこの場所に出入りできる人間は限られている。
あの人なら、それを難なくやってのけるはずだ。
「ああああ――――! ムシャクシャする。どうして、上手くいかねぇんだよ!!」
ブツブツと悪態をつく声とともにドン! と物を叩きつける音が聞こえた。
その人影は、壁ならぬ机を拳で殴り続けていた。
何やらカンシャクを起こしているようだけど、振動で揺れているモニターが暗闇の合間からチラリと顔を見せていた。
光源の正体は、おそらくパソコンだ。しかも一台だけではない複数の起動音がする。
最低でも三台はあるんだけど、オンラインゲームでもしているのかな……?
「新庄キュイ……何者なのよ、アイツ。許さないわ!」
その言葉で呼吸が止まりそうになった。
思わず、後退しボクはその場から逃げ出した。
今の声は、間違いなく國木田先生だ……理由は知らないけど、ボクは先生から酷く恨みをかってしまっているみたいだ。
ボクを嫌っているのは薄々と感じてはいたけど、ここまでキモがられるとは……。
ぶっちゃけショックが大きい。
ボクは美少女になったからと調子に乗り過ぎたのだ。
ムサイの戦士だったくせに、オシャレすることに覚醒した時点でヒサカズの部分をバッサリ切り捨てようとしていた。
下半身で動く男の眼は誤魔化せても、美を追求することに敏感な女の感性は騙しきれないというのかぁぁあ。
本当に自分が情けない。一時でも男であることを忘れてしまうなんて……。
「新庄さん、ごめんなさいね。ツライ物を見せてしまったわ」
両膝に手を置きながら息を切らせているとボクを気遣い田宮さん追いかけてきてくれた。
じきに午後の授業が始まるからだろう。
すでに中庭には他の生徒の姿はみえない。
ボクと田宮さんだけがそこに居て、彼女はベンチに座り隣を手で叩いてみせる。
ここに座りなさいということらしい。
白いニーソを被る両脚をフラつかせながら、田宮さんの横に身体を並べた。
ボクの方が一回り小さいせいで、なんかバランスが悪い。
「のんびりとしていて大丈夫? その……次の授業が」
「新庄さんって生真面目よね。私はパス……気分が悪いって言って早退するわ。実際にそうだし、貴女もそうすれば?」
「ええっ! そうはいかないよ。ボクは学校に通わせてもらっている身だから……わざわざボクの為に学費を払ってくれているんだ、その人たちの想いを裏切れないよ」
「そういえば、貴女は小橘さんの遠縁だったわね。こんな事を聞くのも失礼かもしれないけど、どうして親元を離れたの? やっぱ、自由になりたいから?」
「それは……」田宮さんの質問に言葉を詰まらせた。
田舎から上京して、戦隊ヒーローやってましたなんて、とてもじゃないが言えない。
両親とは別に仲が悪いわけでもなく、上京したのも都会への憧れがあったからだ。
きっと、彼女はボクを同類だと勘違いしている……親とソリが合わず、親族の家に身を寄せているキュイという虚像を自分と重ねようしているんだ。
真実を話せばいいのだろうか? 嘘は良くないが、時には必要な気もする。
迷いもするが、はやり嘘をつける度胸など僕にはないらしい。
相手を傷つけるのは心苦しいけど、答えないのはもっと卑怯だ!
「ボクは両親が大事だよ。ここに来たのは成り行きだけど、この街に残ると決めたのは自分の意志なんだ。田宮さんの家庭の事情は、よく分からないけど……田宮さんのお父さんは立派な人だと思うよ。少なくとも、お店で会う時はいつも会社の人たちと一緒に笑顔をみせてくれるんだ」
「そんなの、外面がいいだけよ……ゴメンね、変な事を聞いちゃって。それじゃあ、私は帰るから」
「待って!!」顔色を悪くしながら、去ろうとする田宮さんの手をつかんだ。
このままでは、いけない。理屈ではなく直感的な胸騒ぎがした。
「離して、貴女には私のことなんて関係ないでしょ!?」
「関係なくないよ! 君のお父さんはボクにこう頼んだんだ! 娘と会ったら友達になってくれって」
「余計なお世話よ!! あの人が家族を気にしたことは一度もないわ。そのせいでママは―――――」
彼女が抱く、心の闇が垣間見えた。
父親との確執、それが重荷となってしまっていた。
今し方、感じた嫌な気配はコレだ……この状態が悪化すれば田宮さんが変体化してしまう。
それを防ぐべく、ボクの魔法少女としての力が警鐘を鳴らしていたんだ。
『キュイちゃん、彼女から離れるんだ! どうやら、間に合わなかったようだ……』
全身からパキパキとラップ音を鳴らし、田宮さんが凍ってゆく……。
ドブさんの呼びかけで咄嗟に手を引くと、一気に氷が肥大化し氷柱となった。
使用されていない時には、ちゃんと鍵がかかっているはずなのに、ドアは簡単に動いた。
閉じるか閉じないかの合間から、二人してこっそりと中を覗く。
変な背徳感を感じるが、田宮さんの言う見せたい物の正体が気になる。
真っ暗な室内で一部だけ煌々と灯りが漏れていた。
その前には、うごめく人影がある。
微かに漂うヤニの臭いには覚えがある。
まさかとは思うけど、自由にこの場所に出入りできる人間は限られている。
あの人なら、それを難なくやってのけるはずだ。
「ああああ――――! ムシャクシャする。どうして、上手くいかねぇんだよ!!」
ブツブツと悪態をつく声とともにドン! と物を叩きつける音が聞こえた。
その人影は、壁ならぬ机を拳で殴り続けていた。
何やらカンシャクを起こしているようだけど、振動で揺れているモニターが暗闇の合間からチラリと顔を見せていた。
光源の正体は、おそらくパソコンだ。しかも一台だけではない複数の起動音がする。
最低でも三台はあるんだけど、オンラインゲームでもしているのかな……?
「新庄キュイ……何者なのよ、アイツ。許さないわ!」
その言葉で呼吸が止まりそうになった。
思わず、後退しボクはその場から逃げ出した。
今の声は、間違いなく國木田先生だ……理由は知らないけど、ボクは先生から酷く恨みをかってしまっているみたいだ。
ボクを嫌っているのは薄々と感じてはいたけど、ここまでキモがられるとは……。
ぶっちゃけショックが大きい。
ボクは美少女になったからと調子に乗り過ぎたのだ。
ムサイの戦士だったくせに、オシャレすることに覚醒した時点でヒサカズの部分をバッサリ切り捨てようとしていた。
下半身で動く男の眼は誤魔化せても、美を追求することに敏感な女の感性は騙しきれないというのかぁぁあ。
本当に自分が情けない。一時でも男であることを忘れてしまうなんて……。
「新庄さん、ごめんなさいね。ツライ物を見せてしまったわ」
両膝に手を置きながら息を切らせているとボクを気遣い田宮さん追いかけてきてくれた。
じきに午後の授業が始まるからだろう。
すでに中庭には他の生徒の姿はみえない。
ボクと田宮さんだけがそこに居て、彼女はベンチに座り隣を手で叩いてみせる。
ここに座りなさいということらしい。
白いニーソを被る両脚をフラつかせながら、田宮さんの横に身体を並べた。
ボクの方が一回り小さいせいで、なんかバランスが悪い。
「のんびりとしていて大丈夫? その……次の授業が」
「新庄さんって生真面目よね。私はパス……気分が悪いって言って早退するわ。実際にそうだし、貴女もそうすれば?」
「ええっ! そうはいかないよ。ボクは学校に通わせてもらっている身だから……わざわざボクの為に学費を払ってくれているんだ、その人たちの想いを裏切れないよ」
「そういえば、貴女は小橘さんの遠縁だったわね。こんな事を聞くのも失礼かもしれないけど、どうして親元を離れたの? やっぱ、自由になりたいから?」
「それは……」田宮さんの質問に言葉を詰まらせた。
田舎から上京して、戦隊ヒーローやってましたなんて、とてもじゃないが言えない。
両親とは別に仲が悪いわけでもなく、上京したのも都会への憧れがあったからだ。
きっと、彼女はボクを同類だと勘違いしている……親とソリが合わず、親族の家に身を寄せているキュイという虚像を自分と重ねようしているんだ。
真実を話せばいいのだろうか? 嘘は良くないが、時には必要な気もする。
迷いもするが、はやり嘘をつける度胸など僕にはないらしい。
相手を傷つけるのは心苦しいけど、答えないのはもっと卑怯だ!
「ボクは両親が大事だよ。ここに来たのは成り行きだけど、この街に残ると決めたのは自分の意志なんだ。田宮さんの家庭の事情は、よく分からないけど……田宮さんのお父さんは立派な人だと思うよ。少なくとも、お店で会う時はいつも会社の人たちと一緒に笑顔をみせてくれるんだ」
「そんなの、外面がいいだけよ……ゴメンね、変な事を聞いちゃって。それじゃあ、私は帰るから」
「待って!!」顔色を悪くしながら、去ろうとする田宮さんの手をつかんだ。
このままでは、いけない。理屈ではなく直感的な胸騒ぎがした。
「離して、貴女には私のことなんて関係ないでしょ!?」
「関係なくないよ! 君のお父さんはボクにこう頼んだんだ! 娘と会ったら友達になってくれって」
「余計なお世話よ!! あの人が家族を気にしたことは一度もないわ。そのせいでママは―――――」
彼女が抱く、心の闇が垣間見えた。
父親との確執、それが重荷となってしまっていた。
今し方、感じた嫌な気配はコレだ……この状態が悪化すれば田宮さんが変体化してしまう。
それを防ぐべく、ボクの魔法少女としての力が警鐘を鳴らしていたんだ。
『キュイちゃん、彼女から離れるんだ! どうやら、間に合わなかったようだ……』
全身からパキパキとラップ音を鳴らし、田宮さんが凍ってゆく……。
ドブさんの呼びかけで咄嗟に手を引くと、一気に氷が肥大化し氷柱となった。
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